高脂肪食(HFD)と肥満は、乳がんの危険因子であることが示唆されているが、食事と乳がんの進行との関連性は十分に定義されていない。
脂肪の摂取は乳がん発症のリスクを高め、乳がん発症率の増加と高脂肪の欧米型食生活とを関連付ける研究がいくつか存在する。
さらに、肥満は腫瘍の大きさや予後の悪さとも関連している。
しかし特定の脂肪源とそれらに含まれる脂肪酸(飽和脂肪酸(SFA)、一価不飽和脂肪酸(MUFA)、多価不飽和脂肪酸(PUFA))が乳がんリスクの増加にどのように寄与するかは、明らかになってない。
今回ご紹介するのは、高脂肪食と乳がんの関連を解析した研究。
乳がんの乳腺ポリマウイルスミドルT抗原モデルマウス(MMTV-PyMT)に
・等カロリーのコントロール食(CD)
・オリーブオイル(OOBD、オレイン酸が多く、MDに含まれる不飽和脂肪酸)または乳脂肪ベースの食事(MFBD、パルミチン酸とミリスチン酸が多く、欧米の食生活に含まれる飽和脂肪酸)を強化した2つのHFD
を与え、乳がんの転移などを観察した研究。
A Milk-Fat Based Diet Increases Metastasis in the MMTV-PyMT Mouse Model of Breast Cancer
・この研究ではMFBD、OOBD、CDのいずれにおいても、腫瘍の成長や進行に違いは見られなかった。
OOBDを摂取したマウスの肺転移を分析したところ、CDおよびMFBDに比べて肺転移の平均面積が有意に減少し、2つのHFDを比較すると、OOBDはMFBDに比べて表面のリンパ節の数が減少した。
・この研究は、MMTV-PyMTマウスの乳癌の進行に対してOOBDという特定の種類のHFDが、肺転移の面積を減少させることでプラスの効果をもたらすことを報告した初めての研究である。
・MFBDまたはOOBDがMMTV-PyMTマウスの肺転移を変化させるかどうかを調べるために、16週目に肺を採取し転移の有無を評価した結果、表面の結節の数は、MFBDを与えたマウスの方が、OOBDを与えたマウスよりも有意に多かった。さらに、CDマウスやMFBDマウスと比較して、OOBDでは肺転移の面積は有意に小さかった。また、大きなサイズの腫瘍は、CDマウスとMFDマウスの23%に見られたが、OOBDマウスでは10%しか見られず、OOBDを摂取したマウスは転移が小さいことがわかった。これらの結果は、MMTV-PyMTモデルにおいて、MFBDは原発性腫瘍の成長を増加させないが肺転移を増加させることを示唆している。
・MMTV-PyMTマウスにおいて大豆油由来の高脂肪食(HFD)を摂取すると、原発性乳腺腫瘍だけでなく肺転移も増加することが明らかになっている。
・雌のMMTV-PyMTマウスに8週齢からMFBD、OOBD、またはCDを与えた。2週間ごとに体重と腫瘍の測定値を収集した結果、0週目から16週目までの体重は、CDを含むすべての飼料で同程度。CDを与えたマウスでは、標準的な普通食を与えたMMTV-PyMTマウスと同様の腫瘍成長を示したことが観察された。MMTV-PyMTモデルにおいて、MFBDやOOBD、原発腫瘍のサイズや腫瘍の重量を変化させることを示唆している。
・肥満がない場合、高脂肪食だけでは原発性腫瘍の成長は変化しないことが示唆された。
・OOBDマウスやCDマウスと比較してMFBDマウスの一次腫瘍組織ではTNFαの発現レベルが高く、そのことが転移の違いに関与している可能性がある。TNFαの増加は、HFDを摂取したMMTV-PyMTマウスの乳腺腫瘍で報告されている。TNFαは、乳癌細胞株において上皮間葉転換を誘導することが示されており、ヒト乳癌の進行の予後マーカーとして示唆されている。
・HFDは高インスリン血症を引き起こすことが示されている。インスリンは、細胞の成長に影響を与え、乳がん細胞の浸潤性を変化させる可能性があり、インスリン抵抗性は乳がんリスクの増加と関連することが示されている。
・過去20年間の研究では、オリーブオイルの摂取に代表される地中海食(MD)が、ヒトの乳がん発生率の低下と関連していることが明らかになっている。
・他の研究では、エキストラバージンオリーブオイルを使用したMDを摂取した女性は、ナッツ類を使用したMDや低脂肪の対照食を勧められた場合と比較して、乳がんリスクの低下の関連性が明らかになった。
*オリーブオイル購入の際は、本当に良質のオリーブオイルかどうか品質の精査を。