「ベジタリアン食にしてから胃腸の調子が良い」というのは単なる思い込みかもしれない。
今回のブログは、アメリカにおける自称ベジタリアンは世界的には食物繊維摂取量が少なく、ベジタリアンと腸の健康との間に関連がなかったとする驚きのデータをまとめてみます。
あなたがベジタリアン食で参考にしているメンターの野菜摂取量が、実は野菜の恩恵を得られるまでに達していなかったとしたら?
日本人の平均的な食事量だとやっぱり足りないんじゃないかな?
信じるものは救われるのか・・・
40年前、アイルランドの外科チームが、食物繊維は大腸疾患の予防に重要な役割を果たすことを発見した。
一方、精製食品など食物繊維不足の食事は便秘と大腸癌に関連していた。
現在、高所得国の食物繊維摂取量は約15g/日で、チームが提唱する食物繊維量(50g/日以上)を大きく下回っている。
腸の手術後や消化管を損傷する治療(放射線治療など)後に推奨される食物繊維の少ない食事は、豆類、ナッツ類、エンドウ豆、レンズ豆、玄米、全粒穀物、および種子類が避けられ、よく調理された赤肉、魚、鶏肉、卵および特定の乳製品が重視される。
このような食事を摂取した多くの患者では、食物繊維の制限により便のサイズと頻度が減少する。
対照的に、植物ベースの食事(ベジタリアンおよびビーガン食を含む)は、果物、豆類および緑葉野菜などの繊維密度の高い食品を豊富に含んでいるため、腸管運動とヒトの腸内細菌叢の構成に影響を与える。
研究数は少ないものの、いくつかの試験ではベジタリアンと非ベジタリアンの排便および便のパターンの違いが示唆されている。
ベジタリアン食は、排便の頻度が高く、表面的な亀裂が少ない柔らかい便と相関している。
そのため、ベジタリアンは筋骨格系障害、アレルギー、慢性炎症性腸疾患と同程度にQOLに悪影響を及ぼす可能性のある(無症候性)便秘の影響を受ける頻度が低い。
複数の研究者が、ベジタリアン集団は腸の習慣や排便パターンが雑食の集団とは異なることを強調しているが、これらの関連性を調査した研究の数は限られており、現在のベジタリアン集団における最新の試験も不足している。
また、世界中のベジタリアン集団間で実際の食事パターンが大きく異なるという事実も考慮する必要がある。
リンクのデータは、米国のベジタリアンサンプルにおける便秘の有病率を調査することおよび、この特定のコホートにおける排便機能についてのさらなる洞察を得ることを目的に、全米健康・栄養調査(NHANES)のデータを用いて横断的調査を実施したもの。
9531人の非ベジタリアンと212人のベジタリアンを対象とした。
ベジタリアンの有無と腸の健康に関するすべての項目(BM頻度、BSS、FISI)との間に関連は認められなかった。
ベジタリアンは雑食者よりも有意に多くの食物繊維を摂取していたが、水分摂取量は少なかった。
ベジタリアンと腸の健康との間に関連がないことは驚くべきことであるとしている。
Bowel Health in U.S. Vegetarians: A 4-Year Data Report from the National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES)
・NHANES(2007-2010)のベジタリアン集団における腸の健康状態と便秘の有病率を調査することを目的とした。過去の研究ではベジタリアンと非ベジタリアンの間で、形状や便の硬さ、排便回数や便秘の有病率に関して有意差があることが明らかにされているが、意外なことにこの研究では前述の知見を確認することはできなかった。
・ベジタリアンの有無と、便の硬さ、排便回数、便秘の有病率など、調査したすべての腸の健康項目との間に関連性がないことが明らかになった。これはとは驚くべきことで、両群の栄養摂取量を詳しく調べるとともにさらなる考察が必要。
・Plant-basedの食事は、非菜食主義者の食事よりも多量の食物繊維を含んでいる。1986年に行われた腸の機能測定調査では、51人(雑食、ベジタリアン、ビーガンの食事を習慣的に摂取している女性10人、男性7人)が調査された。ヴィーガンの食物繊維摂取量が最も多く(47 g)、次いでベジタリアン(37 g)、雑食性食を摂取している人(23 g)であった。
平均腸管通過時間は3群間で同等であったが、ヴィーガンはより頻繁に、より軟らかい便を排出していた。
・European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition, Oxford cohort(EPIC-Oxford)のデータを用いた英国における別の横断的解析でも、同等の傾向が示された。
22~97歳の男女20,630人の排便頻度を分析。
肉を定期的に食べている参加者と比較して、平均排便頻度はベジタリアン、特にビーガンで高かった。
ここでも、研究者らは便通頻度と食物繊維の摂取量との間に有意な正の関連を観察した。
毎日の排便オッズも男女ともに食物繊維の摂取量の増加とともに増加した。
ここでも、今回の研究とは異なり、植物性食品を食べる人と雑食の人の間で、グループ間の有意な差が見られた。
・前述の研究の著者は、ベジタリアンと非ベジタリアンの間に有意なグループ間差異があることを発見したが、意外にも今回の研究ではこれを確認することができなかった。
この理由については議論が必要であるが、まず、NHANESのベジタリアンにおける食物繊維の摂取量がかなり低い(約21g/日)ことが注目される。
また、自認するNHANESベジタリアンは、米国の一般集団よりも植物ベースの食事を摂取していたが、肉や魚も時々摂取するという点で、他の「古典的」ベジタリアン集団とは異なっていた。
・今回のコホートにおけるベジタリアンは、食物繊維の摂取に関するInstitute of Medicineの推奨(適切な摂取量:1日あたり14g/1000kcal)を満たしていなかった。
食物繊維はほとんどの人(特に便秘の人)において明らかに便の回数を増やすので、これは今回の結果を議論する際に重要な要因となりうる。
・さらに、今回のコホートにおけるベジタリアンは1日当たりの水分消費量が少なかった。これには、飲料として消費される水道水やボトル入りの水を含む、食物および飲料に含まれるすべての水分が含まれている。便の回数調節における食物繊維の効果を高めるには、十分な水分の摂取が必要である。
ベジタリアンが非ベジタリアンよりも有意に少ない水分を摂取していたという事実も、グループ間の有意差が観察されなかった理由を説明しているのかもしれない。
・最近のNCHSガイドラインによれば、今回の推定値のいくつかは「信頼できない」と見なされなければならず、この研究の疑問すべてに確実に答えることができなかった。
しかし、この研究の長所として、採用した方法とツール(BSFSとFISIを含む)は過去の研究でかなりの妥当性と信頼性を実証していることが挙げられる。これは異なる集団を比較する場合に重要である。
次に、おそらく最も重要なことだが、本研究はすべてのPlant-basedの食事が同じように作られているわけではなく、ベジタリアンの集団は世界中で大きく形態が異なるという事実である。
自称ベジタリアンであることは、それ自体が「イコール十分な食物繊維摂取量」とはならないことを示す。
・NHANESのベジタリアンのコホート(2007-2010年)において、腸の健康状態を特に調査した最初の研究であった。ベジタリアンの状態と腸の健康項目との関連性が意外に低かったのは、ベジタリアン群では食物繊維の摂取量が比較的少ない(そして水分摂取量も少ない)ためと考えられる。
このサンプルのベジタリアンコホートが、医学研究所の推奨する1日の食物繊維摂取量を満たしていないという事実はアメリカの悲惨な食物繊維ギャップを実証している。
他のベジタリアンのコホートと比較すると、アメリカのベジタリアンは食物繊維の摂取量がかなり少なかった。