全国のニンニク愛好家の皆様、ニンニク農家、黒ニンニク加工業者の皆様お待たせしました。
お待たせしすぎたかも知れません。
一週間前のブログに引き続き、本日も黒ニンニクの健康効果を検証した試験をご紹介。盛り沢山の内容となっております。
多くの臨床試験により、様々な疾患の治療における黒ニンニク(BG)の有効性を裏付ける証拠が得られている。熟成ニンニクエキスは最も研究されており、効果的な薬理作用を示している。
このレビューではBGの治療効果は主に、抗酸化作用、免疫調節作用、抗炎症作用、抗癌作用、抗糖尿病作用、抗肥満作用、消化器系保護作用、肝保護作用、心血管保護作用、神経保護作用、腎保護作用に起因することが示唆された。
Black Garlic and Its Bioactive Compounds on Human Health Diseases: A Review
・最近の科学論文では、食用植物が持つ様々な健康上の利点や可能な治療法を利用するための医薬・栄養学研究が盛んに行われている。栄養学的研究の基本的な目的は健康を最適化し、病気の発生を予防または遅らせるための科学的知識を提供することである。食生活の改善、特に植物性食品を多く摂取することで身体の重要な生理機能を保護し、加齢に伴う慢性疾患を予防・遅延させることができるという科学的データが増加。
・植物性食品やその派生物である抽出物の多くは様々な微量栄養素(ミネラルやビタミン)、繊維、生物活性化合物を含んでいる。注目すべきは、植物由来食品は、がん、心血管、神経変性疾患などの慢性疾患の発症率を低下させ、腸内細菌叢の組成と機能を調整し、人間の健康にプラスの影響を与えること。
・中でもニンニクは健康効果だけでなく、世界中の伝統的な薬としても最も重要な栄養源の1つとなっている。にんにくの健康上の利点にもかかわらず、世界的ににんにくの消費量は減少している。市販されている様々なニンニク加工品の中でも、黒ニンニク(BG)は急成長している健康食品としてよく知られており、最も研究されている。BGの熟成プロセスは、BGの持つ栄養素や特性を変化させ、生理活性を向上させる。
・BGの生物活性成分は人体において様々な生理機能を示すため、様々な疾患の治療につながる可能性がある。例えば抗酸化、抗炎症、抗肥満、肝保護、高脂血症、抗癌、抗アレルギー、免疫調節、心血管予防、神経変性保護など。
・BGの抗糖尿病作用についていくつかの研究が行われており、従来の糖尿病マーカーに対するBGの様々な効果が報告されている。熟成黒ニンニクエキスは糖尿病ラットにおいて、血糖値、糖化ヘモグロビンを有意に低下させ、血清インスリンを顕著に増加させることで、糖代謝バイオマーカーを改善した。さらに,熟成ニンニクエキスは,血清トリグリセリドと総コレステロールの上昇を有意に抑制し,肝臓と腎臓の組織における脂質過酸化を低下させた。同様の結果は、複数の研究で報告されており、熟成ニンニクエキスは動物実験において酸化ストレスマーカーを減少させ、インスリン感受性、脂質異常症、その他の糖尿病の合併症を改善した。BG粉末はグルタミンオキサロ酢酸トランスアミナーゼ、グルタミンピルビン酸トランスアミナーゼ、γ-GTPの活性を高めることで、血糖値を下げ、肝臓のグリコーゲンを防ぎ、脂質代謝を改善することもわかった。さらに糖尿病マウスにおいて、熟成ニンニクエキスがチオバルビツール酸反応性物質レベルを有意に低下させ、SOD、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)、カタラーゼ(CAT)の活性を上昇させることが確認されている。
・妊娠中の女性にBGを40週間補給することで、血漿中のマロンジアルデヒド、SOD、GSH-Px、総抗酸化力のレベルが低下することが示された。また、Lactobacillus bulgaricusが妊娠糖尿病の予防においてBGの抗酸化力を向上させたことも報告されている。
・BGの抽出物は高脂肪食誘発性肥満マウスにおいて、体重、脂肪組織量、血清トリグリセリド、総コレステロール、低密度リポタンパク質、血漿マロンジアルデヒドを減少させる活性が報告されている。ニンニクを乳酸菌で発酵させると,db/db C57BL/6Jマウスの体重が18%減少し、精巣上体脂肪組織量(36%),後腹膜脂肪組織量(44%),腸間膜脂肪組織量(63%)がそれぞれ低下することで食事誘発性肥満が改善された。
・乳酸菌による発酵ニンニクエキスはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPARγ)、CCAAT-エンハンサー結合タンパク質、およびステロール調節要素結合転写因子1(SREBP-1C)、脂肪酸合成酵素(FAS)、ステアロイル不飽和酵素1(SCD-1)など脂肪生成タンパク質のmRNAタンパク質発現を低下させた。
・健康な成人51名を対象に行った6週間の臨床試験では、成人肥満の慢性炎症と免疫機能に対する熟成ニンニクエキスの効果が調査された。3.6gの熟成ニンニクエキスを1日1回投与することで、成人肥満の血清腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン6(IL-6)の増加を防ぎ、血中低密度リポタンパク質のレベルを低下させた。
・BGは様々な泌尿器系疾患を緩和する興味深い能力を示している。熟成ニンニクエキスは、酸化ストレスを減少させ、マンガンスーパーオキサイドディスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)、グルタチオンレダクターゼ(GR)の活性を維持することで、ゲンタマイシン誘発腎毒性を予防することがわかった。糖尿病性腎症疾患の場合熟成ニンニクエキスは、糖尿病ラットの尿中アルブミン濃度、血中尿素窒素量を有意に減少させ、尿中尿素窒素量を増加させた。糖尿病性腎症に対する熟成ニンニクエキスの保護効果は、その抗糖化作用と低脂血症作用によるものと考えられる。他の慢性腎臓病に対する熟成黒エキスの効果を研究では、熟成ニンニクエキスが核因子赤血球2関連因子2の活性化と炎症およびアポトーシス反応の抑制を通じてエテホン誘発腎障害を救済することを発見した。行ったラットの急性腎障害を対象とした研究では、熟成黒にんにくエキスで処理した場合、非常に有望な結果が得られた。熟成黒ニンニクエキスを投与することで、クレアチニンや血中尿素窒素などの標準化されたバイオマーカーでモニターした腎機能の悪化を防ぐことができた。
・BGの肝保護作用は広く研究されている。肝障害のラットにおいて、BG抽出物の投与は酸化的損傷からの肝保護効果を示すことが判明した。BG抽出物の投与によって脂質過酸化と炎症を抑制すされ、肝損傷を抑制する。
・多くのin vitroの研究で、BGが敗血症、子宮内膜症、関節リウマチ、炎症性腸疾患などの炎症に関連する様々な疾患の治療に大きな可能性を持つことが示されている。熟成ニンニクエキスの抗炎症作用は、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)の発現を抑制する可能性が高いと考えられる。
・BGは胃腸系を調整し、消化を促進する。BGの多糖類は胃腸の健康効果を促進する大きな可能性を持つことが報告されている。in vitroで、BG抽出物が小腸大きな影響を及ぼすことがわった。胃腸の蠕動運動を刺激し、消化管の空洞化を促進した。BG飲料がマウスの腸内フローラを改善したことを実証した研究もある。BGが逆流性食道炎を含む炎症性胃食道逆流症の治療に使用できることも報告されている。食道炎の発症、胃潰瘍の治療にも有効で、熟成ニンニクエキス(200 mg/kg)を10日間連続でマウスに投与したところ,酸化ストレス,プロスタグランジンE2,GSH,NOの胃内濃度が顕著に低下したことが報告されている。
・熟成ニンニクエキスの胃保護作用のメカニズムは、BGの抗炎症作用と抗酸化作用(マロンジアルデヒドレベルとミエロペルオキシダーゼ活性を放出し,総グルタチオン,SOD,CAT活性を増加させる)が考えられる。熟成ニンニクエキスは抗腫瘍剤メトトレキサートによって誘発されたラットの腸管障害を軽減した。
・血小板の活性化は心筋梗塞や脳卒中など多くの生理学的および病理学的プロセスに関与している。血小板は損傷した血管壁に露出したコラーゲン、ラミニンなどに結合し、これを血小板の活性化と呼ぶ。活性化された血小板は、その形状を変え、他の血小板に付着することで血小板凝集プロセスが開始される。いくつかの研究で、BGが血小板凝集を抑制する大きな可能性が示されている。ラットに熟成ニンニク抽出物を投与すると、血小板の凝集能力が大幅に阻害され、この効果は14日目に認められました。発酵ニンニクは高コレステロール血症や血小板凝集の抑制に有効である。
・レニン・アンジオテンシン系(RAS)は、血圧、心血管、腎臓の機能を制御するホルモン。RASの調節不全が、動脈性高血圧、心血管疾患、腎臓疾患に関連している可能性がある。レニンは基質であるアンジオテンシノーゲンを切断して不活性ペプチドであるアンジオテンシンIを生成し、これが内皮のアンジオテンシン変換酵素(ACE)によってアンジオテンシンIIに変換される。ACEによるアンジオテンシンIIの活性化が最も広範囲に行われるのは肺である。アンジオテンシンIIは、血管収縮剤として作用し、副腎からのアルドステロンの産生を刺激し、ナトリウムの貯留と血圧の上昇を引き起こす。数多くの研究で、BGが動脈性高血圧を減少させ、ACEを阻害する効果があることが示された。
コントロールされていない動脈性高血圧症患者88名を対象にした臨床試験では、12週間の熟成ニンニクエキス摂取は、動脈硬化、平均動脈圧、中心血圧、中心脈圧、脈波伝播速度、増大圧力とともに、平均血圧を有意に低下させた。また、コントロールされていない動脈性高血圧の49人を対象に熟成ニンニクエキスを12週間投与した試験では、血圧の低下がみられ、炎症、動脈硬化、腸内細菌プロファイルの強化を改善する可能性があることがわかった。
しかし、高血圧患者の治療にBGを標準的な治療法として提案するには、まだ十分なデータはない。明確な結論を出すためには、より適切にデザインされ、分析された試験が必要である。
・動脈硬化の予防・治療にBGが有効であることは、多くの臨床試験で実証・確認されている。マウスを用いた研究では、熟成ニンニクエキスがマウスの動脈硬化の進展を12週間の試験で22%抑制した。総コレステロール,トリグリセリド(TG)の血清濃度の上昇を有意に抑制し,CD11b+細胞の相対的な存在感を低下させた。
心血管イベントのリスクが高い104人を対象に熟成ニンニクエキスを1日2400mg、1年間摂取させた研究では、冠動脈石灰化(CAC)の進行が有意に抑制され、IL-6グルコースのレベル、血圧が低下した。さらに他の研究では、熟成ニンニクエキスをサプリメントで摂取することで、12ヶ月の投与後に心外膜脂肪組織、心膜脂肪組織、大動脈周囲脂肪組織、皮下脂肪組織のレベルが低下したことが示された。このように、サプリメントによる熟成ニンニクエキスは、脂肪組織量の増加速度を抑制することで、メタボリックリスクと冠動脈石灰化の重症度を低減した。
・神経変性疾患の発生率が驚くほど増加している。アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病の疾患の病態生理はまだ完全には解明されていない。熟成した黒ニンニクとS-アリルシステイン(SAC)は、神経変性から脳を保護する可能性のある薬剤として多くの研究が記録されている。
・脳卒中を含む虚血性脳疾患の研究では、モデルのラットにおいてSACが酸化的損傷を軽減し,神経学的欠損を改善することが示された。SACを投与すると虚血病巣の体積が有意に減少し、神経細胞の減少が抑制され、グリア線維酸性タンパク質および誘導性一酸化窒素の発現が抑制された。別の研究では、熟成ニンニクエキスとSACの両方が、活性酸素を制御することで神経保護を誘導する能力を示した。
・癌治療における天然物質の利用は、急速に成長している研究分野。BGは抗酸化、抗炎症、アポトーシス誘導、抗増殖、抗血管新生など、様々な健康効果や薬理効果があるため、抗がん作用を調べるために多くの臨床研究が行われている。In vitroの研究では、BGが複数のがん細胞株において、がん細胞の成長や増殖を抑制する能力が非常に高いことが示された。例えば、熟成黒にんにくエキスがP13KAkt経路を阻害することで、大腸がん細胞(HT29)の成長を抑制し、アポトーシスを促進することが示された。さらに、in vitroの研究では、熟成黒ニンニクエキスで処理した胃がん細胞株SGC-7901の用量依存性アポトーシスが明らかになる一方、in vivoの実験ではマウスの腫瘍成長を抑制するなど熟成黒ニンニクエキスの抗がん作用が示された。BG抽出物とその化合物であるSAMCの阻害作用は、それぞれ肺癌Lewis細胞と甲状腺癌細胞株(HPACC-8305C)で報告されている。大腸がんや胃がんに対する細胞増殖の抑制を通じたBGの抗腫瘍効果は、数多くの研究で証明されている。また熟成ニンニクエキスは、ヒト乳がん細胞(MCF-7)におけるドキソルビシン(DOX)の増感効果を持つことが報告されている。
さらにSAMCの抗がん作用は前立腺がん、肝臓がん、膀胱がん、卵巣がんで実証されている。
・生ニンニクの主な成分は炭水化物(36%)、脂肪(0.5%)、タンパク質(6%)である。炭水化物は、フルクタン(23.2~27.8g/100g)、スクロース(0.6~0.7g/100g)、フルクトース(0.1g/100g)、グルコース(0.04~0.05g/100g)。
・新鮮なニンニクの糖質プロファイルは、BGに変換されると劇的に変化する。新鮮なニンニクと比較したBGの炭水化物含有量は1〜2倍に増加し、続いてスクロース、フルクトース、グルコースの場合はそれぞれ1.3〜1.6倍、6〜108倍、2〜13倍に増加した。BGは生ニンニクのプロセスに応じて20〜70倍の還元糖含量を持つ可能性があり、これがBGの独特の甘味の要因となっている。
・新鮮なニンニクには遊離アミノ酸が豊富に含まれており、アスパラギン、グルタミン酸、バリン、リジン、トリプトファンが最も主要な遊離アミノ酸。他の研究者は、18種類の遊離アミノ酸の全体量が2000 mg/100 g fresh matter から1400 mg/100 g に減少し、ロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、システイン、アラニン、アスパラギン酸の量が増加したことを発見した。別の研究では、70℃、90%の相対湿度で保存した生ニンニクと比較して、BGではロイシン(60-70mg/100g)やイソロイシン(58-50mg/100g)などの分岐アミノ酸の含有量が増加することが示されている。
・ニンニクは人間が摂取する野菜の中で最も多くのフェノール化合物を含んでいる。新鮮なニンニクを60℃で90%の相対湿度で45日間加工すると、ポリフェノールレベルが2.8%向上し、抗酸化活性(6.7%)も向上した。フェノール様物質は生ニンニクやBGに比べて3〜4倍に増加し、フラボノイド様物質は2〜8倍、抗酸化物質は3〜7倍に増加した。一般的に、BGのポリフェノール含有量は、生ニンニクの球根と比較して、BGの球根全体で3倍、皮をむいたBGのクローブでは6倍になる。その結果、BGは生のニンニクよりも大きな抗酸化物質を示す。
・生ニンニクを高温で長時間処理すると生成・放出されたばかりのポリフェノールが失われ、特定のフェノール物質が低下する可能性がある。
・近年、S-アリルシステイン(SAC)が注目されている。SACはBGが持つ抗酸化物質で、生ニンニクとBGの両方に見られる生物学的活性と健康に有益な化合物。生ニンニク中のSACは21〜23μg/g FMと報告されていますが、熱処理によっては生ニンニクの3〜6倍とかなり高くなる可能性がる。研究ではBGの方がSAC含量が高いことが報告されている
・ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)はBGの主要な抗酸化成分の一つ。す。BGの黒い色の形成はHMFの形成と関連している。他の研究者らは、BG中のHMF含量が冷凍処理によって25%まで増加することを確認している。
・有機酸の中で最も豊富なクエン酸は、ニンニクに大量に含まれている。他の研究者は、発酵過程の後BGの抽出物が新たに多量のギ酸と酢酸を生成することを見出した。有機酸の含有量が多いと甘酸っぱい風味が得られるだけでなく、タンパク質や多糖類の分解が促進され、BGサンプルの微生物学的安定性が高まるという意味から有機酸の変化は重要である。
・スーパーオキサイド・ディスムターゼ(SOD)は、おそらくニンニクにのみ含まれる酵素の一種。成長中の微生物において重要なフリーラジカルのスカベンジャーであるだけでなく、重要な生物学的機能を果たしている。日本の研究者は、生のニンニクにSOD様活性があることを明らかにした。また、60〜70°C、相対湿度85〜95%で40日間発酵させたニンニクの80%エタノール抽出物はSOD様活性が13倍に増加した。
・生ニンニクには複数の水溶性ビタミンや微量元素も含まれている。生ニンニクを温度と湿度を変えて処理した場合、水溶性ビタミンの総量は1.15〜1.92倍に増加した。
・ニンニクはミネラルも含有している。ニンニクを65 °Cおよび50%の相対湿度で192時間製造すると、ナトリウム、鉄、カルシウムとともにセレンの含有量が増加することがわかっている。
・BGに含まれる9つの芳香化合物は酢酸(サワー)、フラネオール(キャラメル)、アリルメチルトリスルフィド(調理済みニンニク)、(E,Z)-2,6-ノナジエン1-オール(キュウリ)、ジアリルジスルフィド(ニンニク ジアリルトリスルフィド(硫黄)、5-ヘプチルジヒドロ-2(3H)-フラノン(アプリコット)、3-メチルブタン酸(汗)、ジアリルスルフィド(ニンニク)。