今日は診療の合間を縫って、防衛研究所の「安全保障国際シンポジウム「技術革新と安全保障ー東アジアの戦略環境に及ぼす影響ー」をウェビナーを拝聴している。
ブライアン・クラーク博士の発表を拝聴して、私が普段ネットから得ている軍事情報、そしてそれを元に思い描く現代戦の形はすでに前時代的なものと認識。
宇宙・サイバー領域の最先端技術を駆使した戦争を米国が全力で行えば、大国相手でも24時間以内に決着がつくのではないかとの印象を受けた。
しかも人的被害は驚くほど少ないのではないか。
最先端の戦闘機だと思っていたF-22や日本に配備されているF35も既に1990年代初期から開発されていたのにも驚いた。本当に戦場に投入されているスマート兵器は他にあって、メディア発表でそれらの「最先端とされる」兵器が活躍しているように情報操作されているに過ぎないのだろう。
日本が勝てるのは宇宙開発の分野だけだろうか。
気がついたら、資本・技術力ともに米中にだいぶ差をつけられてしまった印象。
さて、前置きはこのくらいにして、本日のブログではアスタキサンチンが糖尿病予防に有効であるとする日本の研究をまとめてみたい。
世界における糖尿病および耐糖能異常の有病率はここ数十年で増加の一途を辿っている。
多くの国や地域で急速な都市化と座りがちな生活習慣よって有病率が増加していたところに、コロナパンデミックの生活様式が加わりさらに有病率は上がるだろう。
2型糖尿病予防にはインスリン抵抗性の改善が不可欠。
インスリン抵抗性の重要なメカニズムの一つに酸化ストレスが挙げられる。
体内の酸化ストレスの状態とインスリン抵抗性には強い相関関係があり、抗酸化物質による治療効果が期待されている。
アスタキサンチン(ASTX)は最も強力な抗酸化化合物の一つで、米国FDAで栄養補助食品として承認されている。
ASTXはサケ、エビ、甲殻類、Haematococcus pluvialisなどの微細藻類、鳥類などの数種に含まれる脂溶性の赤色色素である。
動物性カロテノイドの活性酸素、一重項酸素、ヒドロキシラジカル、有機フリーラジカルに対するアスタキサンチンの消去作用は、他のカロテノイド(ゼアキサンチン、ルテイン、ツナキサンチン、カンタキサンチン、β-カロテン)の約10倍、α-トコフェロールの約100倍であると報告する研究もある。
in vitroの研究では、ASTXはビタミンEよりも100〜500倍強く脂質過酸化を抑制し、ビタミンEやβ-カロテンよりも数倍大きなフリーラジカル抗酸化力を持つことが示された。
また、ASTXが健康な人や抗酸化特性を高めた心血管疾患の患者のコレステロールや脂質の代謝を正常に変化させ、これらの効果は抗酸化防御機構を介していることを報告した研究もある。
リンクの研究は、体内組織の酸化ストレスや炎症が亢進している糖尿病予備軍などの高リスク被験者を対象にASTXの補給による糖尿病予防に関するヒト試験の報告がまだ存在しないことから、アスタキサンチンの12週間の補給が糖代謝、血糖コントロール、インスリン感受性、脂質プロファイル、体格指標に及ぼす影響を無作為化プラセボ対照試験で検討したもの。
53名を対象にアスタキサンチン12mgまたはプラセボを1日1回、12週間投与。
その後、被験者のHbA1c値、脂質プロファイル、生化学的パラメータを測定。
75gの経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)、血管内皮機能検査、内臓脂肪面積の測定を行った。
結果
アスタキサンチンを12週間補給したところ、75gのOGTTにおける120分後のグルコース濃度は補給前に比べて有意に低下。
さらに、HbA1c、アポE、マロンジアルデヒド修飾低密度リポ蛋白も減少したが、総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)、高密度リポタンパク質C(HDL-C)の値は変化しなかった。
またインスリン抵抗性の指標の一つであるMatuda指数は、ASTX群では補給前に比べ改善された。
ASTXは健常者および糖尿病患者のHbA1c値を低下させ、これはASTXが血糖コントロールに関与している可能性を示唆しており、糖尿病の有無にかかわらず2型糖尿病の予防に臨床的に有益であると考えられる。ASTXが副作用なしに糖尿病や糖尿病性合併症に影響を与える可能性のある新しい補完的治療法であることを示していると結論。
・ASTXの抗糖尿病作用については、複数の研究で報告されている。
糖尿病のdb/dbマウスにおけるASTX補給が高血糖によって誘発される血糖値と酸化ストレスのレベルを低下させることで膵臓のβ細胞をグルコース毒性から保護することを報告した研究がある。
ヒトの研究では糖尿病患者にASTX(8mg/日)のサプリメントを8週間投与したところ、フルクトサミン濃度が低下し空腹時血糖値がわずかに低下したと報告されている。
・脂質プロファイルについてのASTXの肯定的な効果はまだ不明。
血漿脂質プロファイルおよび、血清TC、TG、LDL-C、HDL-C、アポリポプロテインレベルに有意な変化はなく、LDLの酸化にも差が見られなかったと報告した研究がそれぞれあるが、一方でこの研究では、ASTX投与群ではアポEとMDA-LDLのレベルが対照群に比べて顕著に低下していることが確認され、ASTXが糖尿病予備軍や糖尿病患者の動脈硬化予防に有益な効果を持つ可能性が示唆された。一方、TC、TG、LDL-C、HDL-Cには有意な変化は見られなかった。
・血圧については、2型糖尿病のASTX投与患者においても血圧の低下が報告されている。
しかし今回の結果では、ASTX群、プラセボ群ともに血圧の低下が認められなかったが、これは健常者と高血圧患者の違いによるものと考えられる。
この研究結果は、2型糖尿病患者の様々な症状を調整する上でのASTXの役割について新たな知見を提供している。