世界的な肥満罹患率の増加から、精製糖質に代わる低カロリーの代替品への関心が高まっている。
人工甘味料(AS)は強い甘味を持ち、カロリー負荷がないか極めて小さい。
アメリカの大規模研究では、参加した成人の41.4%がASを摂取していると報告されている。また、ASsの摂取頻度は肥満度によって増加することもわかっている。
糖尿病患者では、糖尿病でない人より摂取頻度が有意に多いことが報告されている。
ASは製品のカロリーを最小限に抑えるが、ASの使用が健康上のリスクをもたらすかどうかについては議論が分かれている。
過去のASsの潜在的な悪影響に関する調査ではいくつかの提案がなされている。
中でも、ASsに多く暴露されると、体重増加、満腹感の調整による食物摂取量の増加、甘い食べ物への嗜好性の増加、耐糖能異常、インスリン感受性低下、有益な細菌の抑制や皮下脂肪組織における炎症性サイトカイン経路のアップレギュレーションによる腸内細菌叢の変化が引き起こされる可能性があるとする文脈は興味深い。
さらに、2件の研究では妊娠中の母親のASs摂取と、1歳および7歳時点での子供の肥満リスクとの関係が示唆された。
過去の知見を総合すると、ASsを摂取している人は体重増加リスクが高く、妊娠中のASs摂取後の子孫の健康状態に懸念が生じる。
一方で、糖尿病や肥満のある妊婦には、妊娠中の体重増加や妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病の予防のために砂糖の代わりにASを摂取するよう、保健所や一般医が推奨することもある。
そのためASは妊婦に人気があり、デンマークの妊婦59,334人を対象とした研究では3分の1以上が妊娠中に人工甘味料を含む飲料を摂取している。
最近の研究では、ASのヒトへの経胎盤伝播の証拠が示されている。
ヒトと動物の両方で母乳中にASsが検出されているが、母乳中のASsメカニズムに関する情報は不足している。
リンクの研究は、授乳期の母親49名に異なる種類のAS(acesulfame-potassium(ace-k)、saccharin、cyclamate、scralose)を経口投与した際の血漿および母乳中の薬物動態を調査したもの。
ASの体重および代謝状態(正常体重、過体重、糖尿病女性)への依存性の可能性も検討している。
血漿から母乳へのASsの累積移行量と標準的な1日摂取許容量(ADI)勧告との関連性も検討。
結果、Ace-k,サッカリン,シクラメート,スクラロースはいずれも血漿および母乳中に移行し、経口摂取後数時間で検出された。
濃度がピークに達する時間は,血漿中では30-120分,母乳中では240-300分だった。
母子ともに1日最大摂取量(ADI)に達するには非常に多量の摂取が必要だった。
また、ASの薬物動態は摂取する母親の体重や代謝状態には依存しなかった。
母乳中のAUC比は,ace-kで88.9%,サッカリンで38.9%,シクラミンで1.9%と,甘味料によって大きく異なることが明らかとなった。
Artificial Sweeteners in Breast Milk: A Clinical Investigation with a Kinetic Perspective
・研究の結果、授乳中の女性において、ace-k、サッカリン、シクラメート、スクラロースを経口摂取するといずれも血漿に移行し、さらに母乳に移行することが明らかとなった。
・シクラミン酸が母乳に移行する可能性があることも実証した(移行量はわずか)。
・甘味料間で非常に異なるAUC比を見出した。血漿から母乳に移行する甘味料の量が甘味料間で大きく異なることを意味する。
・ADI以下のASの摂取が母親や授乳中の子供にとって健康的である、あるいは望ましいという結論を出していないことに注目。
・人気のある甘味料であるアスパルテームは6000以上の製品に使用されており、他の甘味料が示唆するような健康問題も同様に議論されている。。
・ASsは食品だけでなく、チューインガム、医薬品、衛生用品などにも含まれている。
広範にわたる使用が、ベースライン時に血漿や母乳から甘味料が検出された異常値のいくつかを説明する可能性がある。
・糖尿病の人は糖尿病でない人に比べてASを多量に使用する傾向がある。