肥満は二型糖尿病、高血糖、脂質異常症、高血圧などの慢性代謝性疾患との関連が指摘され、コロナ重症化の危険因子である。
肥満対策とその合併症の予防は、感染症予防と同時に非常に重要なテーマである。
ご紹介するテーマは、レモンをLactobacillus OPC1で発酵させたレモン発酵物(LFP)の肥満予防効果をラットを対象に調べたもの。
試験の結果、LFPは細胞増殖を抑制し、脂肪細胞の脂質蓄積を抑制することが確認された。さらに、ラットの体重および脂肪組織重量を減少させ、血清TG、遊離脂肪酸、グルコース、ケトン体を減少させ、血清HDL-Cおよびリパーゼ活性を増加させた。
またLFPは、脂質代謝に関連する遺伝子(PPARγ、C/EBPα、SREBP-1c、HSL、ATGL、FAS、AMPK)のmRNA発現を調節することで、体重と脂質の蓄積を減少させる。これは、発酵後にリモネンと総ポリフェノールの含有量が増加することに起因すると推定される。
これらの知見は、LFPの肥満や関連疾患の予防への応用の可能性を示唆していると結論。
The Anti-Obesity Effects of Lemon Fermented Products in 3T3-L1 Preadipocytes and in a Rat Model with High-Calorie Diet-Induced Obesity
・ 柑橘類の中でも、レモン(Citrus limon)の生産量は世界で年間約2,200万トンと推定され、年々増加し続けている。ビタミンC、フラボノイド、フェノール化合物、クエン酸などの栄養分が豊富に含まれ、抗酸化、抗がん、免疫機能の調整、血中脂質と血圧の調整、創傷治癒を促進する能力など有益な特性がある。
・ある研究では、フローズドライした柑橘類の果汁がラットのトリグリセリド(TG)と低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)のレベルを低下させ、高密度リポタンパク質-コレステロール(HDL-C)のレベルを向上させることができた。レモンの果汁は高コレステロール血症に対する保護作用があることが確認されている。
・Lactobacillusによる発酵は長距離輸送の果物や野菜の腐敗を防ぎ、賞味期限を延長、抗酸化力や抗菌力の向上、抗肥満、抗がん、高脂血症など、果物や野菜の生理機能を高めることができる。
・Lactobacillus plantarum LS5で発酵させたレモン果汁にSalmonella typhimuriumとEscherichia coli O157: H7に対する抗菌性が認められている。
さらに、発酵レモンジュース(FLJ)は、血漿中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性(AST)およびアラニントランスフェラーゼ活性(ALT)を低下させることにより、肝脂質過酸化、脾腫、肝水を低下させ、肝障害を予防した。
・Lactobacillus OPC1で発酵させたレモン発酵製品(LFP)はグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx),スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD),カタラーゼ(CAT)などの抗酸化酵素の活性を示し,Clone-9細胞の活性酸素種(ROS)含量を減少させることを明らかにした。さらに,ミトコンドリアの膜電位を上昇させることで,ミトコンドリアの完全性を維持し,酸化ストレスによる損傷を軽減することができた。
・レモンフラボノイド粉末(LFP)にはポリフェノール、ビタミンC、フラボノイド、リモネンなどの優れた生理活性物質が含まれている。これまでの研究では、ポリフェノール、フラボノイド、リモネンには抗肥満作用があることが明らかになっている。
・肥満は脂肪細胞の数を減らし、その脂質含有量を低下させることで防ぐことができる。この研究では、LFPが3T3-L1脂肪細胞の細胞増殖を抑制し,脂質の蓄積を低下させることがわかった。過去の研究で、発酵させた大豆外皮、Monascus pilosus発酵黒大豆抽出物、Lactobacillus paracasei subsp.paracasei NTU101発酵茶は、3T3-L1細胞の増殖を抑制し、3T3-L1細胞における脂質の蓄積を抑制することが確認された。
・この研究では、LFPが血清グルコース、脂質レベルを低下させ、電解質バランスを調整することができることが示された。
過去の研究によると、植物を発酵させることで、血清中のグルコースとコレステロールのレベルを下げることができる。
・発酵した植物は、脂質代謝関連遺伝子、特にPPARγ、C/EBPα、SREBP-1c、FAS、AMPK、ATGL、HSLの発現を調節することで、脂質の蓄積を抑えることができることが確固の研究でわかっていたが、今回の研究では、LFPが脂質代謝に関連する遺伝子遺伝子(PPARγ、C/EBPα、SREBP-1c、HSL、ATGL、FAS、AMPK)のmRNA発現を調節することが判明した。
・「発酵」は食品の栄養価や有用性を向上させると同時に,化合物の生物学的活性を高めることができる。過去の研究では、乳酸菌やアスペルギルスの発酵によって果物や果実に含まれるポリフェノール、フラボノイド含有量が増加し、抗酸化活性を高めることが示されている。Lactobacillus plantarum LS5で発酵させたレモンジュースはアスコルビン酸と総フェノールの含有量を増加させ、抗菌・抗酸化作用を高めることができる。柑橘類の残渣をAspergillusで発酵させると、ナリンゲニンとヘスペリジンの含有量が発酵後に増加することが分かりました。柑橘類の残渣には、発酵後に3T3-L1脂肪細胞の脂質蓄積を抑制する効果があることもわかった。
・レモン果汁中のリモネンの含有量は6.13%。発酵後のLFPのリモネン含有量は10.55%。リモネン含有量は乳酸菌で発酵させた後、4.42%増加させることができる。他の研究者は、リモネンがHSL、FAS、AMPKのmRNAやタンパク質の発現を増加させることで、3T3-L1細胞の脂質蓄積を抑制することを発見している。
また、リモネンがマウスの血清HDL-C含量を増加させ、血清TGを減少させ、SREBP-1cのmRNA発現を減少させることや、D-リモネンを補充が脂質の変化と過酸化脂質が減少することを発見した研究もある。
発酵によってリモネンの含有量が増加することで、LFPには肥満を予防する能力があると推測できる。