昨日は斜角筋症候群治療中に、斜角筋に対するアプローチに関してフッとアイデアが頭に浮かんで試してみたところこれが大当たり。患者さんのペインレベルは、治療前と比較して大幅に改善した。
ずっと基本に忠実に治療しつつ工夫を重ねていく中で、ふとGreat Idea が舞い降りる感じ…その瞬間的な興奮は職人業の人にしかわからない感覚かもしれないが、アドレナリンが分泌されてるのがわかるくらいの快感だし、本当にカイロプラクターという職業を選んで良かったと思う瞬間でもある。
そして、”カイロプラクティック”という治療法もまだまだ進化の途中・過渡期で、この治療法の限界はまだ引き伸ばすことができることも実感する。
面白い。
さて、今回のブログはビタミンDと免疫の関連性がテーマ。
ビタミンD摂取の重要性は、内分泌機能や小児のくる病、成人では骨・カルシウムホメオスタシスの観点から過去のブログで何度も紹介してきた。
ポピュラーな栄養素ゆえビタミンDに関する知識が豊富な方も多いと思う。
しかし免疫との関連性を説くデータは多くないので、専門用語が多く読みづらいかもしれないが、より知識を深化させるためにここでまとめてみたい。
まず、日光のUV-B成分を素肌に十分にさらすことができない現代のライフスタイルは、ビタミンD欠乏症と関連している。UV-Bは皮膚で7-デヒドロコレステロールからビタミンD3を内因的に産生するのに不可欠。ビタミンD3は肝臓でCYP(チトクロームP450)2R1およびCYP27A1という酵素によって25-ヒドロキシビタミンD3(25(OH)D3)に変換され、さらに腎臓でCYP27B1という酵素によって1,25(OH)2D3に変換されるとホルモンとして作用するようになる。
興味深いことに、単球、マクロファージ、樹状細胞などの自然免疫細胞や皮膚細胞、骨細胞はCYP27B1遺伝子を発現しており、1,25(OH)2D3を産生することができる。
エストロゲン受容体(ESR)やグルココルチコイド受容体(GR)のような核内受容体スーパーファミリーメンバーと同様にビタミンD受容体(VDR)は転写因子として機能し、何百ものビタミンD標的遺伝子の発現を制御しており、1,25(OH)2D3は、エストロゲンやコルチゾールに匹敵するヒト生理機能に影響を与える内分泌化合物である。
ビタミンDの免疫調節作用に関する最初のヒントは、ビタミンD3補給が、実験的に作られたくる病を予防することが判明したのとほぼ同じ時期に生まれている。
ビタミンD3を多く含むタラ肝油とUV-B照射は、結核、すなわち細胞内細菌による感染症予防と治療に用いられてきた。さらに、多発性硬化症などの自己免疫疾患リスクは十分なビタミンDの状態によって減少することが判明している。
もう一つ興味深い点として、人々はそれぞれビタミンDに対して高応答者、中応答者、低応答者であること、すなわちビタミンDに対する分子応答効率に違いがあることが判明している。
このビタミンD反応指標はゲノムとエピゲノムの変動に基づいており、ビタミンD状態とは対照的に、季節、食事、サプリメント摂取によって変化することはない。
人口の約25%を占める低ビタミンD応答者は、病気、特に多発性硬化症のような免疫系の低下に関連する病気にかかりやすいと考えられている。
リンクのレビューは、ビタミンDに対する個人特異的応答性が造血期および末梢におけるVDRとそのリガンド1,25(OH)2D3のエピジェネティックなプログラミング機能を介したヒト免疫力との関連性を論じたもの。
ビタミンDが一般的な主要疾患から身を守り、並行して健康的な老化を促進するメカニズムを説明できる可能性がある。
【レビューの結論】
・生物学的に最も活性型ビタミンDである1,25(OH)2D3は、in vitroおよびin vivoで免疫細胞のエピゲノムを調節する内分泌分子。
・ビタミンDが免疫細胞、特に単球とその派生細胞のエピジェネティック・プログラミングにどのように影響を及ぼすかについてのメカニズムと、ビタミンDが充足している人は充足していない人よりも免疫力が高いはずであることを提示した。
・多くの観察研究によってビタミンD欠乏と多くの疾患リスクの増加および老化の促進との関連が報告されており、これらの報告に共通するのは調査対象者の免疫力が低下していることである。したがって、例えばビタミンDの状態を充足状態に移行させるなどして対象者の免疫力を高めることが重要である。
・免疫力が低下している人のビタミンD充足度を評価する際には、ビタミンD反応指数も考慮すべきである。
・ビタミンD反応指標を決定することは、ビタミンD状態を測定するよりも複雑で高価であるため、予防措置として、すべての人に低ビタミンD反応者として、すなわち1日1μg(40IU)/kg体重のビタミンD3を補充することを提案する。この量は、多くの国の推奨量より多いが、それでも高カルシウム血症のような副作用を引き起こす可能性のある量をはるかに下回っている。
Vitamin D and Aging: Central Role of Immunocompetence
ビタミンDと自然免疫系のエピジェネティックプログラミング
免疫細胞
・幹細胞や前駆細胞は、胚発生や成体組織における細胞分化の過程でそのエピゲノムに大きな変化を起こす。これらの細胞のエピジェネティック・ランドスケープは、系統特異的遺伝子が顕著に発現する一方で、他の細胞系統の遺伝子が抑制されるように再形成される。このエピジェネティック・プログラミング・プロセスは、特定の転写因子とクロマチン修飾酵素のセットによって駆動され、分岐点で細胞がどの方向に分化していくかを決定する。
・骨髄に存在する造血幹細胞(HSC)は、造血の過程で赤血球や血小板、B細胞やT細胞、単球、NK細胞、ILC、好中球などの免疫系を構成する100種類以上の細胞に分化する。興味深いことに、1,25(OH)2D3は胚性造血幹細胞の数を調節することが示されている。
・VDR、PU.1、CEBPαは骨髄前駆細胞から単球や顆粒球、すなわち自然免疫の主要細胞への分化に重要な転写因子である。このことは、ビタミンDが単球のエピジェネティック・プログラミングに直接作用していることを示唆している。これは、これらの自然免疫細胞がビタミンDに最も反応する理由を説明する可能性がある。
・ビタミンDは単球の樹状細胞やマクロファージへの分化にも影響を及ぼす。例えば、ビタミンDの標的遺伝子TNFSF11は単球から骨を吸収する破骨細胞への分化を制御している。
分化細胞のエピジェネティックなプログラミングは、ほとんどの場合、不可逆的なプロセスで、多くの内在的・外在的因子によって調節される。これによって、特に自然免疫系のようなターンオーバーの速い細胞は、微生物感染、炎症、がん、糖尿病、神経変性といった非伝染性疾患の発症といった環境条件の変化に適応することができる。
・ある実験では、ビタミンD欠乏マウスの胎児造血幹細胞が糖尿病を誘発することが示された。
このマウスモデルでは、ビタミンD欠乏が造血幹細胞をエピジェネティックに初期化した。
重要なことは、同様の過程がビタミンD欠乏ヒト単球でも見られたことである。
・造血における骨髄系の分化でのVDRと1,25(OH)2D3の影響をさらに示すものとして、VDR遺伝子の高発現がAML(急性骨髄性白血病)の予後の良さと関連し、合成VDRリガンドが有望な疾患修飾薬であるという観察がある。
・HLA(ヒト白血球抗原)遺伝子のクラスターには、免疫学的に重要な遺伝子が多数含まれており、その多くがビタミンDの標的となっている。HLA遺伝子クラスターはヒトゲノムの中で最も変異の多い領域であるだけでなく、免疫系に対するビタミンD作用の「ホットスポット」でもある。
・ビタミンDの状態にもビタミンD反応指数にも個人差があることから、造血中の単球とその由来細胞のエピジェネティックなプログラミングにも個人差がある。従って、最適なビタミンD3補給は骨髄での造血を通して免疫細胞の適切なエピジェネティック・プログラミングをサポートすると同時に、抗原との遭遇に応答する組織での分化もサポートする可能性がある。
ビタミンDが免疫系に及ぼす主な影響は、末梢だけでなく中枢免疫器官におけるエピジェネティックなプログラミングであることが示唆される。
加齢による免疫能の低下
・老化とは分子や細胞のダメージが蓄積し、細胞、組織、臓器全体の機能に欠陥が生じ、人体全体が弱っていく自然で避けられないプロセス。マクロオートファジーの障害、幹細胞の疲弊、慢性炎症、ディスバイオーシスといった老化の特徴のいくつか免疫能の低下に影響する。
・免疫系能力は出生後に急激に高まり、10歳でピークに達する。胸腺は一次リンパ臓器で免疫担当T細胞が産生されるが、若くしてすでに胸腺の細胞量、構造、構造は退縮し、産生されるナイーブT細胞の数も減少する。胸腺の萎縮に加え、免疫系は加齢に伴い多くの点で劣化する。
中でも造血幹細胞の分裂率の低下と、炎症老化と呼ばれる慢性炎症の増加が最も重要。このような免疫老化は高齢者において、がん、糖尿病、自己免疫疾患のような非伝染性疾患だけでなく、多種多様な感染症に対する感受性を高め、発症率を上昇させる。
・加齢に伴う全体的な免疫能の低下に伴って有能な免疫細胞の相対数は減少するが個人差があり、年代が上がるにつれて免疫細胞の割合が平均より高い人もいれば低い人もいる。
したがって、同じ年齢コーホート内でも免疫回復力の高い人と低い人が存在する。免疫回復力の高いグループでは老化速度が遅く、病気の発生率も低く、低いグループでは老化が加速し、病気の発生率も高くなると考えられる。
・免疫能が低下すると、細胞傷害性T細胞による腫瘍細胞の検出や破壊といった免疫監視機能が低下する。その結果、免疫能の低い人のがんリスクは免疫能の高い人に比べて有意に高くなる。従って、十分なビタミンDを摂取することによるがん予防効果は、主に人の免疫力を高いレベルに保つ能力に関係している可能性が示唆される。
この理屈に従えば、反応指標に適応したビタミンDの充足は、(1)免疫回復力を安定させ、(2)他の多くの疾患から身を守り、(3)老化速度を低く保つはずである。
ビタミンDの充足は骨や骨格筋を良好な状態に保つためだけでなく、免疫系の恒常性維持、健康的な加齢にとって重要な要素といえるだろう。
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