新年1発目の乳癌(BC)に関するKメモです。今年もBCに関するデータはまめにご紹介絵dきればと思ってますのでどうぞお付き合いください。
BC症例では約50%の患者さんが術後放射線療法を必要とし、放射線療法の結果生じる放射線誘発性皮膚障害が問題になることがしばしばある。
放射線誘発性皮膚障害には、乾性または湿性落屑および皮膚潰瘍を含む急性皮膚毒性(AST)と、皮膚線維症および中等度の毛細血管拡張を含む慢性皮膚毒性の二種類がある。
15,623人のBC患者から成る38研究の系統的レビューとメタ解析では、放射線治療後にグレード(G)2以上のASTを示した患者の割合は10%から76%で、平均34.3%、中央値28.4%と報告されている。
近年、食事がBC予防と管理に大きく影響する修正可能な危険因子として確立されており、精製穀物、菓子類、高脂肪乳製品を多く含む欧米食や不健康な食事パターンは高BCリスクと関連している。
また、食事性大栄養素組成に関する複数の観察研究では、炭水化物と脂肪の摂取量が多いほどBCリスクが高いことが示唆されている。
しかし、放射線療法を受けているBC患者とそれに関連するASTなどの副作用に対する食事性大栄養素組成の影響に関する疫学的証拠は乏しく、臨床現場においてASTに対するエビデンスに基づいた食事アドバイスを提供することは困難なままとなっている。
リンクの研究は、放射線治療後のBC患者161人を対象に食事性大栄養素摂取量(炭水化物、蛋白質、脂肪およびそれらの副成分である糖類、脂肪酸、蛋白質の種類)と、グレード(G)2以上(中等度/重度)のASTリスクとの関連を調査したもの。
【結果】
放射線療法後の≧G2 ASTは43例(27%)で確認された。
食事性炭水化物摂取量が多いことは放射線療法後の≧G2ASTのオッズが30%高いことと正の相関があった。
食事性タンパク質摂取量が多いほど、放射線療法後の≧G2ASTのオッズが76%低下した。
食事性脂肪との相関はみられなかった。
多量栄養素サブコンポーネントモデルでは、動物性タンパク質のみが放射線療法後の≧G2ASTのオッズを51%低下させた。
【結論】
食事性炭水化物は、BC女性における放射線誘発性ASTの高リスクと関連していたが、食事性蛋白質、特に動物性蛋白質は低リスクと関連していた。
これらの所見は、放射線療法を受けたBC患者において習慣的な食事による多量栄養素摂取が急性皮膚毒性に異なる影響を与える可能性を示唆している。
・放射線療法を受けたBC女性における食事、特に大栄養素組成と皮膚毒性(≧G2 AST)との関係を評価した初の前向き研究。全体的な知見として食事性大栄養素の摂取が、BC女性における放射線療法後のASTリスクに異なる影響を与える可能性があることが示された。
・ある研究では放射線治療後のBC女性における皮膚毒性に対するワイン摂取(グラス1~2杯/日)の放射線防護効果が示唆された。またあるRCTでは、高繊維食が骨盤放射線療法における消化管毒性を低下させる可能性が示唆された。
・タンパク質は細胞再生、組織成長、創傷治癒の修復を担っている。またDNAとRNAの形成、炎症の軽減、免疫機能、コラーゲンとエラスチンの形成、表皮の成長、創傷部位の角化などに寄与している。適切な量と種類のタンパク質を選択することで、乳房の放射線照射部位における圧痛または明瞭な紅斑、斑状の湿潤性落屑/中程度の浮腫、潰瘍形成、出血、壊死を含む≧G2 ASTを低下させるリモデリング期に役立つことを示唆している。とはいえ、赤身肉や加工肉はBCの高リスクと関連していることから動物性タンパク質の量や選択には注意が必要。
・放射線照射中は炭水化物の量をコントロールすることが≧G2 ASTを低下させるのに有効である可能性が示されたが、理想的な炭水化物の%Eを評価するためには、さらなる十分にデザインされた研究が必要。
・炭水化物摂取量コントロールが有益な影響を及ぼすメカニズム
1. 炭水化物をコントロールすることでがん細胞が代謝的飢餓状態になるか、あるいは解糖やグリコーゲン分解の代わりに酸化的リン酸化を利用せざるを得なくなる可能性。
2. ワールブルグ効果によって説明できる可能性=がん細胞は酸化的リン酸化よりも解糖系を利用し、活性酸素種による酸化的損傷を防ぐ可能性がある。
3. がん細胞で酸化ストレスが増加すると正常細胞よりも化学療法や放射線療法に敏感になるため、治療に必要な投与量が減少し、結果として治療関連の毒性が軽減される可能性がある。
・・・昨年末に出た最新データです。研究デザインなどからエビデンスを確証するもではありませんが、しかし、乳がん治療中の女性のQOLを維持する上で示唆に富むデータなのではと思います。
では具体的にどの食物からどの程度の量のタンパク質を摂取して、他のどの栄養素と組み合わせて摂取すれば良いのか?
具体的な栄養戦略をお探しの方は、当院の栄養マニュアルのご利用を是非ご検討ください。
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