脂肪肝の発症には、脂質の多い不健康な食生活が関与していることが長年語られてきた。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、脂肪性肝疾患(FLD)の中でも一般的な疾患で、世界的な有病率は24%と推定され深刻な公衆衛生問題となっている。
過去の研究では、肥満、座りがちなライフスタイル、不健康な食事パターンが、青年や若年成人における脂肪肝の発症に影響することが報告されている。
Raine Studyでは、ファストフード、加工肉、フライドポテトといった高脂肪の「西洋食パターン」と青年期のNAFLDとの間に関連が見いだされている一方で、青年および若年成人集団における食事性脂肪の摂取と脂肪肝の発生および発症との関係を調べた縦断的研究は存在しない。
リンクの研究は、食事性脂質の高摂取が、青年および若年成人における脂肪肝と前向きに関連するという仮説を検証することを目的とし、思春期初期におけるベースラインの食事性脂肪酸摂取量と、思春期から若年成人期にかけての脂肪肝指数(FLI)との関連性を検討したもの。
思春期早期に脂肪肝高リスク群は、オメガ6脂肪酸の高摂取と、オメガ6/オメガ3脂肪酸高比率が脂肪肝のリスク上昇と関連していた。
・ベースライン時のn-3 LCPUFA、n-6およびn6:n3の摂取は、8年間のフォローアップにおけるFLIトラジェクトリーに有意に関連していた。
・この研究は、若い集団における脂肪肝の発生が経時的に特定の軌道をたどることを示す。
今回のFLIトラジェクトリーデータでは、青年から若年成人まで同様の脂肪肝疾患の傾向を示した。
・肝臓の脂肪蓄積の慢性化と重症化は、その後の2型糖尿病や肝硬変のリスクと関連する。
・慢性肝疾患と心代謝系リスクの影響を軽減するための健康介入は青年期から若年成人期への移行期が重要である
・14歳の時点でn-6系脂肪酸の多い食事、あるいはN6:N3比が高い食事は、思春期から青年期にかけてのFLDのリスク上昇と関連する。食事パターンや食事中の炭水化物やタンパク質摂取量の影響も否定できないが、n-6系脂肪酸がFLDの発症における潜在的な危険因子であることを示唆。
・ナッツ類や種子類はn-6を豊富に含み、パーム油やひまわり油などの精製植物油やこれらの植物油を使って調理した食品に大量のn-6が含まれる。植物油は、加工スナック、ファーストフード、ケーキ、生肉などに広く使われている脂肪酸で、これらもn-6を豊富に含み、N6:N3の割合が高い。
・LH群では、飽和脂肪酸から総炭水化物と総タンパク質に等エネルギーで置き換えると,FLDのリスクは減少した。
・興味深い発見は、n-3LCPUFAと肝脂肪の間に正の相関がある可能性が示唆されたこと。しかしこのデータは、n-3 LCPUFAが脂肪肝に効果があることを示唆する他の臨床試験やメタアナリシスと一致しない。
・BMIはFLIトラジェクトリーの主要ドライバーの1つであり、脂肪酸およびその食物源とBMIとの潜在的な正の相関はFLD発症リスクに影響を与える可能性がある。
・赤身肉消費とNAFLDリスクとの関連性が報告されている。1995年のオーストラリアの国民栄養調査では、LCPUFA摂取量の43%近くが肉、鶏肉、狩猟肉製品および料理からで、オーストラリアの10代ではその割合はさらに増え、49%と魚介類を上回った。
・思春期初期に脂肪肝リスクが高い人に対しては、食事中の脂肪酸バランスを改善するために、N6:N3脂肪酸の低い食事を取り入れ、N6を多く含む食品を減らすことで潜在的利益がある可能性があると結論。
・この観察研究のデータを食事アドバイスに外挿する際には多くの制約があるため、十分な注意が必要。