久しぶりにカイロプラクティックに関連するデータをまとめてみたい。
複合性局所疼痛症候群、線維筋痛症、頸部〜腰部などの慢性疼痛を有する患者では姿勢バランスが損なわれている可能性が高い。
姿勢バランスが損なわれる説明の一つとして、痛みの体験に関わる中枢神経系に起因している可能性が挙げられる。慢性腰痛患者における姿勢バランスの変化は、運動皮質の組織変性と関連している可能性が示されている。
いくつかの研究では、運動制御の変化が慢性疼痛の発生と持続に影響を与える可能性があると報告されている。
急性痛から慢性痛への移行は、数ある痛みの特性や個人特性によって決定される。
例えば、うつ病は痛みの慢性化の主な危険因子の一つと考えられいる。
うつ病は筋・骨格系障害の痛みの持続を予測することができること、慢性疼痛への移行に寄与すること、脳卒中やパーキンソン病などの神経疾患や高齢者における姿勢の不安定性と関連することが報告されている。
慢性疼痛における姿勢バランス障害は、転倒リスクや日常生活における機能制限と関連するため臨床的に非常に重要。
リンクのデータは、急性・慢性腰痛患者における疼痛期間、疼痛感受性、うつ病に関連する姿勢バランスの潜在的障害を特定することを目的としたもの。
慢性疼痛患者では急性疼痛患者や健常対照者と比較して姿勢バランスが損なわれており、姿勢バランスの欠損はうつ病によって調節されると仮定し、急性または慢性腰痛患者の疼痛部位と非疼痛部位における圧痛感受性、うつ病の自己申告、および静的ボディスウェイのいパラメータを健常者と比較。
Edward Francis Small Hospital(ガンビア、バンジュール)の慢性腰痛患者20名と急性腰痛患者20名、および年齢を合わせた健常対照者20名が対象。
結果、慢性腰痛患者は急性腰痛患者や健常対照者と比較して、前後軸と縦軸のボディスウェイが大きく、またスウェイ速度も速かった。
うつ病を共変量として導入すると群間差は消失し、疼痛患者の姿勢バランス障害にはうつ病が大きく関与していることが示唆された。
姿勢バランスとうつ病の評価は、疼痛障害におけるテーラーメードの介入をデザインするために、臨床ルーチンに導入されるべきである。
・慢性腰痛患者は急性腰痛患者よりも姿勢バランスが悪く(変動が大きく、スウェイ速度が速い)、抑うつ状態が増強されること、急性腰痛患者は姿勢バランスにおいて健常対照者と同様であることが明らかになった。
・急性腰痛患者群、慢性腰痛症患者群ともに痛みに対する感受性が健常対照群よりも高いことが観察された。
・姿勢バランスの障害は痛みに対する感受性ではなく、抑うつ状態が占めていることが明らかになった。
・今回の結果は、慢性疼痛患者は健常者よりも姿勢バランスに障害があり、そのため転倒リスクが高いとする過去の文献と一致する。
実際、慢性腰痛患者ではスウェイ面積の拡大、重心変位の増大、筋電図活性の増加など、姿勢制御に関する変化が報告されており、痛みの慢性化に伴う中枢神経系の何らかの再編成プロセスが示唆されている。
・姿勢バランス障害と抑うつスコアの増加との間に有意な関係があることは、疼痛感受性の増強を超えた中枢性感作により誘発される何らかの神経適応の証拠になるかもしれない。
・腰痛患者群では健常対照群に比べ、痛みを感じる部位と感じない部位で痛みの感受性が亢進していることが確認された。
慢性腰痛は、体性感覚の広範囲な変化(痛みを感じる部位とは異なる場所での痛み感受性の増強など)と関連しており、脳の可塑性と中枢神経の感作が重要であることが指摘されている。
急性腰痛患者でも、痛みを感じる部位と感じない部位で痛み感受性の増強が見られたことから、急性腰痛のように数日間痛みを維持すると、痛みに対する脳処理に変化が生じる可能性が示唆された。
・本研究では、姿勢バランスに影響を与える要因として痛みの感受性ではなく、うつ病が挙げられた。
慢性疼痛患者では、急性疼痛患者や健常対照者と比較してより高いレベルのうつ病が観察された。
うつ病と痛みは非常に併存しやすく、うつ病レベルが高いほど痛みへの感受性が高くなり、機能障害につながることが知られている。
これまでの研究で、うつ病は視覚や固有感覚統合の障害と関係があり、運動課題の遂行や転倒予防の効果に影響を与える可能性があること、脳卒中やパーキンソン病などの神経疾患ではバランス能力の悪化と関係することが示されている。
今回の研究で観察されたバランスパラメータとうつ病との強い関連性は、姿勢制御のための重要な要素としての精神の役割をさらに確認し、運動器痛患者の身体的介入を適応させるために、臨床ルーチンでうつ病を評価することを支持するもの。
・うつ病と慢性疼痛の関係は双方向に作用し、慢性疼痛の重症度と持続性を悪化させる併存疾患であることが示されている。
結論
慢性腰痛患者は急性腰痛患者に比べ、姿勢バランスが悪く、抑うつ状態が亢進している。
急性腰痛と慢性腰痛の患者では、疼痛感受性が同程度に亢進している。
姿勢バランス障害は疼痛感受性の亢進ではなく、抑うつが重要な役割を占める。