今回のブログは、食事性イソフラボン摂取量と更年期における頭痛症状との関連を示した最初の研究(日本発)をご紹介したい。
栄養学の重要性を頑なに認めない医療従事者が多い中で、このような研究が日本国内で進むことは非常に歓迎すべきことだろう。
頭痛の発症率は男性よりも女性に多く、更年期障害の代表的な症状の一つ。
中年女性の52.8%が少なくとも週に一度は頭痛を訴えると報告されている。
過去の研究では、低カロリー食、炭水化物制限食、肥満患者の減量食など、特定の食事が頭痛を改善することが示されている。
また、182名の患者を対象とした無作為化比較試験において、高n-3脂肪酸食は対照食と比較して、頭痛の頻度と重症度を改善したことが報告されている。
エストロゲンに関連した変動性頭痛に対する食事効果の研究では、ビタミンEの摂取が月経性片頭痛を改善することが報告されている。
しかし、更年期に移行する女性における食事や栄養素と頭痛の関係についてはほとんど報告がない。
リンクの研究は、中高年女性を対象に頭痛と各種栄養素の食事摂取量との関係を調査したもの。
40-59歳の女性405人を対象に、Menopausal Health-Related Quality of Life Questionnaireを使用して評価。多重ロジスティック回帰分析を用いて、頻発する頭痛と独立して関連する栄養素を同定。
頻発する頭痛に関連する背景因子(血管運動、不眠、不安、うつ症状)を調整した結果、イソフラボン摂取量は、閉経前群では頭痛頻度と有意な相関がなかったが、閉経移行期群では有意に相関していた。
閉経移行期及び閉経後の女性の頭痛は、イソフラボンの食事摂取量と逆相関していた。
イソフラボンを多く含む食事は、中高年女性の頭痛を改善する可能性があると結論。
The Inverse Correlation of Isoflavone Dietary Intake and Headache in Peri- and Post-Menopausal Women
・中年日本人女性において、イソフラボンの食事摂取量は頭痛の頻度と逆相関していた。
・頭痛のある人とない人のイソフラボン摂取量に、閉経移行期群では有意差が認められたが、閉経前群では認められなかった。
・イソフラボンの受容体への結合活性はエストラジオールに比べてはるかに弱いが、大豆食品摂取者の血清イソフラボン濃度はエストロゲンの生理的濃度より数段高く、イソフラボンは比較的低い受容体親和性ながらも一定の生理作用を持つ。
・女性23名を対象とした無作為化比較試験(RCT)では、イソフラボンを含む分離大豆たんぱく(68mg/日)の摂取で、月経前頭痛が有意に軽減された。
・今回の研究結果は、イソフラボンの食事による摂取が中高年女性の頭痛を改善する可能性を示唆している。
・大豆イソフラボンがVMS、特にほてりを緩和することは確立されている。
・中高年女性を対象としたRCTでは、イソフラボンの低用量(25mg/日)投与により、うつ症状とともに不眠症状も改善された。頭痛と不眠は双方向の関係にあることはよく知られている。
また、イソフラボン摂取が閉経前後の女性の抑うつ症状を緩和することが示されている。
・イソフラボンが直接的に頭痛を緩和するメカニズムとして、抗酸化作用とエストロゲン作用の両方が候補となる。
閉経移行期群では頭痛のある人とない人でイソフラボンの推定摂取量に差があったが、閉経前群では差がなかったことから、イソフラボンが頭痛を軽減するメカニズムとしては抗酸化作用よりもエストロゲン作用が有力と考えられる。
・循環器系や中枢神経系ではERβが優位で、イソフラボンはこれに対して高い親和性を有していることから、イソフラボンはエストロゲン作用により中高年女性の頭痛を改善する可能性が示唆された。
結論
閉経移行期または閉経後の女性における頭痛はイソフラボンの食事摂取量と逆相関しており、イソフラボンを多く含む食事は中高年女性の頭痛を改善する可能性がある。