メタボリックシンドローム(MetS)の世界的な有病率は現在も増加傾向にある。
パンデミック下の生活様式で増加傾向にはさらに拍車がかかるだろう。
MetSの病因はまだ十分に解明されていないが、食事要因がMetSに大きく関与していることは疑いようがない。
亜鉛は、DNAの複製と転写、タンパク質合成、細胞分裂と分化に関連し、慢性炎症、酸化ストレス、インスリン抵抗性の改善に役立っている。それらはMetSの病因と密接に関連している。
過去の疫学データでは、食事性亜鉛摂取量とMetS関連(例えば、糖尿病)の間に負の相関があることが示されている。
多くの観察研究で食事性亜鉛の摂取量とMetSの関連性が検討されているが、それらの結果には矛盾も多い。
リンクのメタアナリシスは、こ食事性亜鉛の摂取量とMetSの関連性をさらに調査するために行われたもの。
2021年11月までのPubMed、Web of Science、Embaseの電子データベースを用いて、包括的な文献検索。
13件の観察研究(18,073人)が同定。
食事性亜鉛摂取がMetSと逆相関することが示された。
食事性亜鉛摂取量がMetSと負の相関があることが示唆されたが、エビデンスの限界のためにより良くデザインされたプロスペクティブコホート研究が依然として必要と結論。
Association Between Dietary Zinc Intake and Metabolic Syndrome. A Meta-Analysis of Observational Studies
・13件の観察研究を同定しメタアナリシスを行った結果、食事性亜鉛の摂取量はMetSと逆相関することが示された。MetS患者の食事性亜鉛摂取量は対照群よりも低いことが示された。
・酸化ストレスと炎症がMetSの病態生理に関与しているが、亜鉛の抗酸化・抗炎症作用が食事性亜鉛摂取量とMetSの負の関係を説明するものと思われる。
過去の無作為化比較試験でも一貫して、亜鉛の補給はMetS被験者のインスリン抵抗性、酸化ストレス、炎症を改善することが明らかにされている。
・亜鉛の補給はTNF-α結合単球のレベル上昇にもつながり、免疫反応系に利益をもたらす可能性もある。
・食事性亜鉛の摂取とMetSの関係には年齢による影響があることが示唆された。
・いくつかの類似のメタアナリシス研究では、亜鉛補給がグルコース濃度とHbA1cを減少させ、MetS患者における高血糖の管理に寄与する可能性があることが報告されている。
さらに、亜鉛の補給が血糖値指数と脂質プロファイルに有益な効果をもたらし、動脈硬化のリスク低減に寄与する可能性を示す研究や、30mg/日の亜鉛を6週間補給することで、妊娠糖尿病被験者の代謝プロファイルに有益な効果があることを実証した研究もある。
これらのエビデンスは、亜鉛の補給がMetSに有益な効果をもたらす可能性を強く示唆し、今回の結果の重要な補足となっている。
・重要なことは、MetS発症は慢性炎症と酸化ストレスに関連し、これが血清亜鉛レベルの低下を招いていること。
また、亜鉛は炎症性サイトカインの産生と酸化ストレスを軽減する。その結果、MetSの病態下では血清亜鉛レベルがダイナミックに変化している可能性がある。
・亜鉛の過剰摂取の毒性も無視できない。亜鉛の過剰摂取は、主に酸化ストレスを介して腎機能の悪化と全身血圧の上昇をもたらす。さらに亜鉛の過剰摂取は、腸の上皮シグナル伝達経路、バリア機能、管腔生態系に悪影響を及ぼし、腸の健康に長期的な影響を与える可能性がある。