少し前までは遠い未来の問題だった人口危機が、コロナによる出産率低下によって予想より早く到来している。
2100年には我が国の人口は6000万人を割り、深刻な人口危機と経済難に陥っていると予想される。ちなみに中国も2100年頃に人口は半減し、一方で米国は倍増するとの予測になっている。
高齢化社会に対応するための新たな政策によって若い世代が背負う負担は増え続けるため、日本を捨てて海外に移住する人が増えるのも、人口減に拍車をかけるだろう。
医学の進歩によって、高齢者はより長生きするがストレスフルな生活を強いられる若者たちの健康は害され、もしくは自殺率が増加することで人口危機はさらに顕著になり、我が国は存亡の危機を迎えるかもしれない。
出生率が下がり人口危機目前の状況における更なる問題には、我が国におけるSGA児の出生率が2000年代初頭から増加し、近年では約9%で高止まりしていることも挙げられる。
他の先進国では5%くらいが平均値であるため、他国に比べて非常に高いと言える。
誕生後の新生児のQOLの観点からも、SGAリスクの回避戦略は大きなテーマだと言えるだろう。
修正可能なSGA危険因子の一つに、妊娠中の母親の栄養状態を指摘する声がある。
ビタミンB群は多数の異化および同化酵素反応における補酵素として作用するが、葉酸(ビタミンB9)以外のビタミンB群と不利な出生時転帰との関連は依然として不明。
最近の研究では、単一の栄養素へのフォーカスから食事全体や異なる栄養素の相互作用または相乗効果に焦点が移行している。
リンクの研究は、妊娠中のビタミンB群の変動を説明する母親の食事パターンを導き出し、食事パターンと出生転帰との関連性を調べることを目的としたもの。
1年未満の新生児を出産した合計7347人を対象とし、6種類のビタミンB群を応答変数として妊娠中の食事パターンを導き出した。
食事パターンスコアと出生時体重、出産時妊娠年齢、出生時体重Zスコア、低出生体重、早産、妊娠時年齢未満(SGA)との関連を一般化線形混合モデルで推定。
結果は動物性食品、野菜、菌類、藻類、豆類の摂取量が多く、油と穀類の摂取量が少ないことを特徴とする高ビタミン食パターンが確認された。このパターンスコアの高い女性は、低い女性に比べて出生時体重が44.5g高く、出生時体重Zスコアが0.101高く、SGAのリスクが27.2%低かった。
妊娠中の高ビタミン食パターンの遵守は、より高い出生時体重とより低いSGAのリスクと関連することが示唆された。
Associations of B Vitamin-Related Dietary Pattern during Pregnancy with Birth Outcomes: A Population-Based Study in Northwest China
・動物性食品、野菜、菌類・藻類、豆類の摂取量が多く、油と穀類の摂取量が少ないことを特徴とする高ビタミン食パターンのスコアが高いほど、出生時体重とZスコアが高く、SGAのリスクも低いことが示された。
・フランスの母子コホートでは妊娠24週以前の妊婦1638人が募集され、妊娠前の1年間の食生活をレトロスペクティブに報告。研究者はリボフラビン、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ベタイン、コリン、メチオニンを反応変数とみなした。彼らは、低脂肪乳、肉、レバー、魚、卵、穀類、混合野菜、チコリ、ネギとキャベツ、ブロッコリーで正の負荷がかかり、スナック菓子や菓子類、砂糖入り飲料で負の負荷がかかるビタミンB群が豊富な食事パターンを導き出した。
彼らの研究の食事パターンと今回の研究における食事パターンの類似点は、食品群が多様でバランスが取れていることだった。相違点は、今回のパターンは穀類の摂取量が少ないことだった。
神経管欠損に対する葉酸の保護効果を考慮し、多くの国が工業的に粉砕された穀物に葉酸を強化することを義務付ける法律を制定している。
・2つの研究では、焦点となる時期が異なっていた。子宮内発育の観点からは妊娠前の栄養よりも妊娠中の母親の栄養状態の役割がはるかに顕著であった。
・今回の研究では、マルチビタミンを摂取していない妊婦においてのみ、高ビタミン食パターンがSGAに対して保護効果を発揮しているように思われた。マルチビタミンが胎児の成長に必要な十分なビタミンB群を提供していると考えられる。
また、他の研究でビタミンB群の推奨量を満たしている場合、葉酸のみと比較して、出生体重を44g増加させ、妊娠週数を0.19週増加させたと報告されている。
・ビタミンB群は炭素代謝とその関連経路に関与している。葉酸は炭素1単位の主要な輸送体で、リボフラビン、ビタミンB6、およびビタミンB12は重要な酵素の補因子または前駆体として働く。
炭素代謝は、生合成、アミノ酸のホメオスタシス、エピジェネティックな制御、レドックス防御などの細胞プロセスにおいて重要な役割を担っている。
・今回の結果は、タンパク質、ビタミンA、ビタミンC、カルシウム、亜鉛などの他の栄養素の最高摂取量を伴っていたことも注目に値する。これらの栄養素が出生時体重に影響を及ぼす可能性を排除することはできない。
個々の栄養素を特定するよりも、複数の栄養素または食品群の相乗効果を調べる方がより現実的である。
出産時の有害な結果を防ぐために、妊娠中はビタミンB群の状態に注意を払い、動物性食品、野菜、菌類・藻類、豆類の割合を食事で増やすよう助言することが必要である。