産後うつ(PPD)に対処するための非薬物療法の選択肢の一つにエクササイズが挙げられる。
当院のパーソナルトレーニングにお越しの方でも、トレーニング群と非トレーニング群の患者様では出産後の心身のコンディションの差が観察される。
産後うつ(PPD)は、妊娠中または産後12ヶ月までに発生する軽症および大うつ病を指しす。
妊娠中や産褥期の不快症状と類似しているため、PPDはしばしば見逃される。
PPDの症状には、悲観や憂鬱、生まれたばかりの赤ちゃんに興味がない、赤ちゃんを傷つけることへの恐怖などがある。
子供への影響は、短期的には認知や運動機能の発達、長期的には思春期の心理的転帰に表れる可能性がある。
母親にとっては、出産後に自傷行為を考えたと報告した人はその後7年間のうちに病的状態に陥るリスクが高まることが知られているように、影響は長期にわたることもある。
さらに、PPDの女性はしばしば不安障害も経験する。
PPDは、心理療法、薬物療法、ライフスタイルの変更、支援的環境、またはこれらの組み合わせで管理する 。しかし、薬物療法は多くの女性は授乳を続けることによる制約がある。
エクササイズはPPDに対処するのに役立つ可能性のある代替手段となりえる。
エクササイズは、軽度のうつ病の初期段階では予防や治療として、また大うつ病性障害の治療計画のオプションとして使用することができる 。
妊娠中や産後のエクササイズは心理的健康を改善し、体力 、体重増加の抑制、筋骨格系の不快感や痛みの予防・軽減に効果がある。そのため米国産婦人科学会は、妊娠中および産後の女性がほぼ毎日、1日30分程度の中強度の身体活動を行うことを推奨している。
いくつかのメタアナリシスで、PPD症状の予防または軽減における運動介入の有効性が検討された 。
したがって、既存のシステマティックレビューを概観することは、介入の有効性に関する利用可能な最善の証拠を収集し要約する効率的な方法となる。
リンクのシステマティックレビューとメタアナリシスは、
(1)PPDに対する運動の効果に関する過去のメタアナリシスを評価
(2)健康政策と研究指針となる過去のメタアナリシス結果を統合
を目的としたもの。
PubMed、Web of Science、Scopusで無作為化対照試験の過去のメタアナリシスを検索。
スクリーニングされた52件のレコードのうち、5件が該当した。
結果
産褥期の女性の抑うつ症状に対する運動の有意な中程度の効果が明らかになった。
5つのメタアナリシスのプール効果により、運動は抑うつ症状に対して有意で小さな効果を持つことが立証された。
研究は、運動がPPD症状の軽減に有効であることを示している。
従来のコントロールアプローチ(心理社会的介入、心理的介入)と比較して、運動はPPD症状に対して優れた効果を持つようだ、と結論。
Effects of Exercise during Pregnancy on Postpartum Depression: A Systematic Review of Meta-Analyses
・PPD症状に対する運動の効果を取り上げた過去のメタアナリシスのシステマティックレビュー。
このシステマティックレビューの被験者は合計2419人。
運動はPPD症状を有意に中程度減少させることがわかった。
うつ病関連のアウトカムでプールされた効果量が0.3未満である従来のアプローチと比較すると、運動は実行可能な代替手段であると思われる。
・さらに、運動は産後の女性にとって有益であることが認識されている(体重減少や骨盤底筋強化) 。
・運動後の重篤な有害事象が報告されていないことから、運動はこの対象集団にとって安全な介入と考えられる。しかし、運動の用量反応については更なる研究が必要。
・この研究の強みは、最高レベルのエビデンス(RCTのメタアナリシス)のみを含む包括的な検索を行ったことである。我々の結果は、産後女性の抑うつ症状を軽減する効果的な方法として運動を考えている地域の臨床医や研究者にとって、高い関心を呼ぶものである。今後の研究では、最も効果的な運動特性(例:運動の頻度、強度、時間、種類)を理解することが重要。