片頭痛は、子どもや青年によく見られる神経疾患で、その発作の強さと再発の多さから患者のQOLを著しく損なう可能性がある。
片頭痛の病因は多因子性で、遺伝的、神経的、血管的なメカニズムが関与しており、さらに、小児片頭痛の誘発因子として一部の栄養素が役割を果たしていると思われる。
しかし、食事制限を行う前に厳密な因果関係を確認する必要がある。
このレビューは小児の片頭痛における栄養素の役割に焦点を当て、栄養素と片頭痛の発症や重症度との関連性の可能性について分析している。
肥満を防ぐ食生活が片頭痛と関連していることを示唆するデータが存在するなど、いくつかの栄養素は治療的な役割を果たす。
ケトジェニックダイエットは、成人の偏頭痛では有望な結果が得られているが、小児ではまだデータが無い。
小児の片頭痛に対する有効性を示す確かな証拠はないが、栄養補助食品は若年層の患者や、副作用を恐れて従来の医薬品の使用を拒否する患者への使用を検討することができると結論。
Truths and Myths in Pediatric Migraine and Nutrition
・不健康な食事は片頭痛の発症を促し、片頭痛のより深刻な表現型と関連している可能性がある。これは特に、肥満で炎症を起こしている患者さんに当てはまる。
・小児および成人を対象としたいくつかの研究によると、片頭痛患者が片頭痛発作の誘因として特定の飲食物を報告する割合は7%から44%と高く、多くの被験者が複数の食事誘因を報告していることがわかった。120人の子どもの片頭痛患者を対象とした調査では、38%の症例で発作の引き金となる食事要因が示された(チョコレート:17%、チーズ:16%、柑橘類:5%)。
・最近の研究では、片頭痛を持つ子どもと青年の32.3%が、食事が引き金となる要因を報告しています(チョコレート:11.8%、コーラ:8.8%、ソフトドリンク: 3.9%、柑橘類 3.9%、チーズ:3.9%)。
・チョコレート、コーヒー、ナッツ類、サラミ、アルコール飲料(特に赤ワインやビール)、牛乳、柑橘類、チーズなど、いくつかの食べ物や飲み物が片頭痛発作の引き金になると考えられている。片頭痛を助長すると主張されている成分としては、カフェイン、グルタミン酸ナトリウム、人工甘味料、亜硝酸塩、グルテン、生体アミン(卵、ヒスタミン、チラミン、フェニルエチルアミン)などが多い。
・チョコレートは成人の片頭痛患者の2〜22%において、頭痛の前兆となることが報告されている。頭痛を抱える子どものコホートにおいて、子どもの22%でチョコレートが誘因となっていることがわかった。チョコレートに含まれるフラバノールは内皮の一酸化窒素(NO)合成酵素の活性を刺激し、血管拡張や血圧低下の原因となるNOの生成量を増加させる可能性がある。またチョコレートには、血管収縮作用のあるフェニルアラニンが含まれており、脳血流の変化や交感神経細胞からのノルエピネフリンの放出によって頭痛を引き起こす可能性がある。
・チョコレートが頭痛を誘発するもうひとつのメカニズムは、セロトニンレベルの上昇である。
・カフェインは、お茶、コーヒー、チョコレート、ソフトドリンク、エナジードリンクなどのダイエット製品に含まれている。カフェインと片頭痛の相関関係は、成人集団では広く研究されているが子どもや青年ではデータが不足している。カフェインは、効果的な治療法として、あるいは引き金として長年にわたって片頭痛と関連している。頭痛患者は、カフェインを含む薬剤を単独またはアスピリンやアセトアミノフェンなどの他の鎮痛治療と組み合わせて使用すると効果があるとされている。
・カフェインが頭痛の引き金になる可能性は2つある。
(1)コーヒーなどのカフェイン入り飲料を飲んで片頭痛の発作が始まる場合
(2)慢性的にカフェインを摂取した後にカフェインを断つ場合。
頭痛を含む離脱症状は、カフェインを断ってから早ければ12〜24時間後に始まり、20〜51時間後にピークを迎え、2〜9日間続くことがある。
・最近の報告によると、米国で消費されるアルコールの25%は12歳から17歳の子供と青年が占めており、ビールやスピリッツに加えてワインも含まれている。
片頭痛患者の29〜36%が、アルコールによって片頭痛発作が促進されると自己申告していることを考えると、小児の年齢であっても、アルコールは片頭痛を促進する可能性のある食事要因のひとつに含まれるべきである。
・アスパルテームは多くの食品や飲料に添加されている人工甘味料で、影響を受けやすい人に頭痛を引き起こす可能性がある。アスパルテームはフェニルアラニン(50%)、アスパラギン酸(40%)、メタノール(10%)から構成されている。これらの物質は神経生理学的活動の調節因子として知られる神経伝達物質(ドーパミン,セロトニン,ノルエピネフリン)の合成や放出を変化させる可能性がある。アスパルテームは、血漿コルチゾールレベルを上昇させ、過剰なフリーラジカルの生成を引き起こすことで、化学的ストレス要因として作用し、脳の酸化ストレスに対する脆弱性を増大させる可能性がある。
・アスパルテームの摂取は、頭痛(45%)、めまい(39%)、錯乱/記憶喪失(29%)、不眠症(14%)などの神経学的および行動的障害を引き起こす可能性があると報告されている。
・グルタミン酸ナトリウム(MSG)は、風味増強剤として世界中で使用されており、冷凍食品や缶詰、スープ、スナック菓子、サラダドレッシング、調味料、ケチャップ、バーベキューソースなどさまざまな加工食品に使用されている。1968年、Kwokは、中華料理を食べた後に出現し、頭痛、紅潮、知覚異常、発汗、動悸、全身脱力感などの一過性の症状を含む、いわゆる中華料理店症候群(CRS)を報告した。
・亜硝酸塩は、ベーコン、ソーセージ、ハム、ランチミートなどの肉類の保存料として使用されることが多い。ある研究では、片頭痛患者の5%が亜硝酸塩を摂取した後に発作を起こしやすいことがわかった。最近の研究では、硝酸塩による片頭痛発作には、NOが重要な役割を果たしていることが示唆されている。NOは血管内皮に作用して血管拡張をもたらし片頭痛発作を誘発する可能性がある。
・近年成人期と小児期の両方において、片頭痛と肥満/過体重との関連および併存の背景にあるメカニズムを検討した文献が増えてきている。多くの研究が、小児における過体重/肥満と頭痛との関連性を支持しているが、この関連性を確認していない研究者もいる 。最近の研究では、過体重または肥満の青年では正常体重の青年に比べて、頭痛のリスクが高いことが示された。特に、片頭痛を持つリスクは、太りすぎや肥満の青年では60%も高いことがわかっている。
・肥満の女性患者では、男性よりも片頭痛の頻度が高いようである。研究では、男性と比較して、過体重の女性の片頭痛リスクが5倍高いことが示されている。これまでの研究では、体重過多が有病率だけでなく、頭痛の重症度、特に発作の強さと頻度にも影響することが検討されている。肥満の子供は、正常体重の子供だけでなく、過体重の子供と比較しても、1ヵ月あたりの頭痛発作の回数が多いことがわかった。
・体重過多の集団では、慢性連日性頭痛(CDH)の有病率が高いことが記述されている。CDHを持つ子供のうち、過体重または肥満の子供の有病率は正常体重の子供の約2倍である可能性がある。
・成人と小児の両方において、体重の減少が頭痛の発生率と重症度の低下につながる可能性があるというエビデンスがある。
2013年に、片頭痛を持つ肥満の青年(14~18歳)を対象に実施された研究では、12カ月間の介入プログラム(身体運動、食育、行動療法を含む)が頭痛の転帰に及ぼす影響が検討されました。その結果、体重の減少は、頭痛の頻度および強度の減少と有意に関連することが示された。
・片頭痛と過体重との関係については、心理的な側面も考慮する必要がある。両疾患は不安や抑うつと関連している可能性がある。小児期における不安症状は片頭痛発作の頻度だけでなく、体重と片頭痛の重症度との関係にも影響を与える脆弱因子である可能性が示された。
・座りがちなライフスタイルは、頭痛と体重過多との関連性に寄与するもうひとつの危険因子である。身体活動の不足は、成人の片頭痛患者における発作のリスク増加、青年の片頭痛のリスク増加と関連している。肥満の片頭痛患者は、片頭痛のない肥満の人よりも身体活動が少ない。
・肥満と片頭痛との間の病因的関連は、おそらく多因子性であると考えられる。セロトニン、カルシトニン遺伝子関連タンパク質(CGRP)、オレキシン、レプチン、アディポネクチンなど、エネルギーホメオスタシスを調節する視床下部の活性化、生理活性神経伝達物質、神経ペプチドの変化は、片頭痛と栄養の両方に役割を果たしている。片頭痛発作時の視床下部の病的な活性化は、摂食亢進と体重増加を引き起こす可能性がある。
・体重が片頭痛の転帰に影響を及ぼす可能性があることを考えると、子どもや青年の体重やライフスタイルに特別な注意を払うべきである。
・ニュートラシューティカルとは、nutrition(栄養)とpharmaceutical(医薬品)を組み合わせた言葉で、「病気の予防や治療など、薬効や健康効果をもたらす食品や食品の一部」と表現される。
小児の片頭痛予防のために栄養補助食品を使用することは、従来の薬物療法と比較して、これらの分子の忍容性と副作用のリスクが低いことが強みである。
・コエンザイムQ10は、ミトコンドリアレベルでエネルギーバスターとして作用します。その使用は、片頭痛患者のミトコンドリア機能が欠損しているという証拠によって正当化される。62名の小児患者を対象に、コエンザイムQ10(100mg/日、4ヶ月間)の片頭痛の発作頻度の減少効果を無作為化比較試験で比較しました。この試験では、CoQ10群とプラセボ群の両方で、統計的に有意ではないが、発作の強さと頻度の減少が観察された。重大な有害事象は報告されなかった。
・リボフラビンは、ビタミンB群(B2)に属するビタミンで、成人の片頭痛の管理に有効な選択肢であると考えられている。しかし、成人以外の研究では、そのようなエビデンスはないようである。