コロナ禍におけるライフスタイルの変化で、ビタミンD欠乏症とそれに関連するメタボリックシンドローム(MetS)をはじめとするさまざまな疾患の増加が予測される。
ご紹介するデータはビタミンD欠乏症とMetSの関連について。
血漿中のビタミンD濃度とMetSの特徴であるグルコース、総コレステロール、低比重リポタンパク質、トリグリセリド、グリコシル化ヘモグロビン、高肥満度との間には逆相関があることが報告されているという。
要点を簡単にまとめてみたのでご参考までに。
Role of Vitamin D in the Metabolic Syndrome
・MetSの有病率はここ数年で増加しており、高齢化だけでなく不健康な食習慣や身体活動レベルの低下などのライフスタイルの変化に伴う肥満率の増加に起因していると言われている。
・ビタミンDは脂溶性のプロホルモンで、カルシウムとリンの代謝や骨格の恒常性維持、骨のミネラル代謝に不可欠な役割を果たしている。ビタミンDの主な供給源はコレカルシフェロールまたはビタミンD3で、太陽光を浴びることでコレステロールを前駆体とする7-デヒドロコレステロールから合成される。
・ビタミンDには、抗炎症作用、抗アポトーシス作用、抗線維化作用、心血管疾患や腎疾患、糖尿病や癌に対する予防作用など、様々な作用機序による多面的な機能がある。
・ビタミンDが欠乏すると、ある種の自己免疫疾患のリスクが高くなることがわかってきました。ビタミンD受容体と1α-水酸化酵素が異なる組織(腎臓、膵臓、前立腺、免疫系)で発現しているという事実は、このビタミンがこれらの組織に作用する可能性を示している。
・ビタミンD受容体は、膵臓のβ細胞、筋骨格や脂肪組織などの末梢組織に発現しており、ビタミンDの欠乏がβ細胞のプロインスリンをインスリンに変換する能力を低下させる可能性がある。
・ビタミンDの血清濃度は地域によって大きく異なる。これはビタミンDの主要な供給源である日光浴の違いに大きく起因している。赤道から遠く離れた地域に住む集団では、低ビタミン血症の頻度が高く、糖尿病やMetSを発症する潜在的なリスクが高くなる。
・糖尿病ではない若年者を対象とした研究では、ビタミンD濃度とMetSの有無との間に逆相関が認められ、肥満とIRの複合的な影響によるものとされている。MetSのリスクが高いと述べている。
・Barbalhoらは、循環器科病棟の患者の80%がビタミンD欠乏症であり、ビタミンD欠乏症の患者の全員がMetSを発症していることを明らかにした。ビタミンD欠乏症の患者では、ビタミンD濃度が十分な患者と比較して、血糖値、グリコシル化ヘモグロビン、総コレステロール、LDL、トリグリセリド、アテローム性指標が有意に高く、肥満度も上昇していることが観察さた。
・Vimaleswaranらは、血漿中の25(OH)D濃度の上昇が、高血圧のリスクを低減する可能性があると指摘しています。
・脂質プロファイル、インスリン抵抗性と高血糖、肥満、高血圧などのMetS関連疾患の治療に有益な効果を発揮するのは、動脈硬化の改善、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系活性、副甲状腺ホルモン濃度、炎症性サイトカインの減少、リポタンパク質リパーゼ活性の増加、リン脂質代謝およびミトコンドリア酸化の改善など、さまざまな生理学的パラメータに対するビタミンDの作用機序に基づくものと考えられる。
・Lemieuxらの研究では、1日5000IUのビタミンDを6ヶ月間補充することで、インスリン感受性と膵臓β細胞の活性が向上することが示された。他の研究では、2型糖尿病患者にビタミンDを50,000 IU/週、8週間補給することで、グリコシル化ヘモグロビンが減少し、膵臓β細胞によるインスリン分泌の増加に関係すると思われるサーチュイン1が増加するという効果が確認された。
・一方でビタミンDの欠乏とMetSに関連する成分との関連性を疑問視する研究者もいる。Mehriらは、長期の追跡調査が行われていないためビタミンD濃度の不足とMetSとの間の因果関係が決定的には確立されていないと指摘している。
・様々な研究者が適切なビタミンDレベルを維持し、それによってMetSと関連疾患のリスクを低減するためには、サプリメントを利用することの必要性を強調している。
私はサプリメントよりも日光浴の重要性を強調したい。
太陽光アレルギーなど皮膚疾患で外出ができない方は積極的にサプリを活用してみてはどうだろう。