先日、製薬会社の方と薬剤開発におけるプロセスについて、非常に有意義なディスカッションをさせていただいた。
研究者の方々の努力もさることながら、AIを駆使して過去の成分データを統合できる大きな製薬会社がさらに大きくなるものの、その一方で、目を見張るような「新しい何か」の発見は減るかもしれない。
人類にとってはどちらも大切な利益だが、今のご時世に手だけで筋骨格系にアプローチしているアナログ人間にとって、全てがAIでデータ統合ができれば・・・というのも少し寂しいような気もする。
さて、今回のブログはタイトルの通り妊娠中のセレン摂取の重要度についてのデータをまとめてみたい。重要ポイントをピックするので、さほど長文にはならないはず・・・ぜひ最後までお付き合いのほど。
妊娠中女性の身体が適切に機するためには、マクロおよびミクロ栄養素を十分に摂取することが重要であり、不十分な栄養状態は、妊娠の経過、胎児の発育、子供と妊婦双方の健康に大きく影響する。
セレンは、グルタチオンペルオキシダーゼ、セレノプロテインP、チオレドキシン還元酵素といった様々なセレン酵素の合成と機能に不可欠で、これらの酵素は抗酸化防御や酸化ダメージの軽減に重要な役割を果たしている。酸化ストレスは妊娠パラメータに大きく影響し、子宮内発育遅延や異常な組織発達を引き起こし内分泌代謝の不均衡につながる。
また、発がん物質の活性化を抑制し、DNA損傷と脂質過酸化の蓄積を防ぎ、炎症性サイトカインの誘導を抑制する作用も持つ。
過去の研究で、発育中の胎児の赤血球量増加に伴って、血漿中セレン濃度とグルタチオンペルオキシダーゼ活性が妊娠中に低下することが示されている。
最適なセレン濃度は、流産、甲状腺機能障害、子癇前症、早産、妊娠糖尿病など、妊婦と胎児の合併症リスクを低減する可能性がある。
一方で、妊婦のセレン欠乏は発育中胎児の神経系機能障害につながる可能性がある。セレン摂取量が少ないと低出生体重児や妊娠月齢に比して小柄な乳児を出産するリスクも高まる。
リンクの研究は、妊娠各期における食事性セレンの摂取量、血清濃度、グルタチオンペルオキシダーゼ活性が、新生児の出生状態に影響を及ぼすかどうかを明らかにすることを目的としたもの。
ポーランドの平均年齢29.6±4.8歳の妊婦27人が参加し、研究グループの55%が妊娠合併症を経験した。
ポーランド人妊婦の妊娠第1期のセレン摂取量と血清セレン濃度の中央値は、それぞれ56.30μg/日と43.89μg/Lだった。この数値は第2期では58.31μg/日と41.97μg/Lに、第3期では55.60μg/日と41.90μg/Lに変化した。
サブグループでは、妊娠第1期においてSe摂取量と新生児の体長および出生体重との間に弱い正の相関が観察された。
妊娠第2期では、1分時と5分時のAPGARスコアと正の相関が認められ、第3期では1分時のAPGARスコアと正の相関が認められた。
グルタチオンペルオキシダーゼ活性は、第2期では1分時のAPGARスコアと、第3期では新生児の出生体重と強い正の相関を示した。
合併症のある妊婦のサブグループでは、妊娠第2期のSe摂取量と妊娠月齢との間に強い負の相関が認められた。
妊娠第3期では、血清中Se濃度と頭囲の間に正の相関が認められた。
【結論】
上記の結果から、食事摂取量、血清中濃度、グルタチオンペルオキシダーゼ活性を含む妊娠中の母親のセレン状態は、出生体重、体長、APGARスコア、頭位など新生児の身体測定パラメータと相関することがわかった。
この相関は過去に妊娠プロセスを経験した女性で特に顕著で、合併症のない妊娠において、最適なセレン濃度が胎児の健全な発育を促進する上で重要な役割を果たしていることを示唆している。妊娠合併症が発生した場合、上記の相関関係が失われるか、予測価値が失われることも示唆された。
・ポーランドにおける妊婦のセレン推奨摂取量は50μg/日。研究対象の妊婦は、各妊娠期において推奨摂取量を満たしていた。中国の妊婦の摂取量は30μg/日と推定されている。
セレン摂取量は土壌のセレン含有量に大きく左右され、食品中濃度に影響する。中国は土壌のセレン濃度が特に低い。
・血清中セレン濃度とGPX活性の両方が食事からの摂取量に有意に関連する。
WHOの示す成人に最適な平均血清セレン濃度は39.5~194.5 µg/Lだが、グルタチオンペルオキシダーゼ活性を最大にするための最適セレン濃度は70~90μg/L。ただし、これらの値は一般成人集団のもので、妊婦のものではないことに注意が必要。GPX活性を最大にするための、妊婦に最適な血清Se濃度を決定するような研究はない。
・血中セレン濃度は妊娠後期にな向けて著しく低下する。この研究の参加者では、Se濃度の減少は妊娠第1期の43.98μg/Lから、妊娠第3期の41.90μg/Lまで観察された。
・妊娠合併症を患っている妊婦は、非妊娠合併症妊娠と比較して血清セレン濃度が有意に低かった。これは、妊娠合併症に伴う酸化還元過程の亢進に対する反応の可能性があるす。
・ノルウェー人妊婦の大規模集団(72,025人)を対象とした研究では、妊娠前半期のSe摂取は早産リスクの低下と有意に相関し、妊娠期間にも影響することが示された。
・妊娠第1期のセレン摂取量と新生児の体重および身長の間に有意な関係があることが明らかになった。また、生理的な妊娠過程をたどった妊婦群では、セレン摂取量と新生児の体重、胸囲、妊娠月齢との間に有意な相関が認められた。
・セレンは酸化バランスの維持だけでなく、免疫反応、炎症プロセス、細胞アポトーシスの調節においても極めて重要であり、これらは胎盤発育の初期段階において極めて重要である。
またセレン は、十二指腸機能を高め、甲状腺ホルモン(TH)、インスリン様成長因子(IGF)、インスリンなど、胎児の早期発育に不可欠な主要ホルモンの分泌に影響を与える。
・妊娠第2期において、セレン摂取量、GPX活性、1分時および5分時のAPGARスコアの間に有意な相関関係が示された。妊娠中期は臓器の著しい成長とともに、神経系の集中的な発達と神経線維の髄鞘化がみられる。同時に、母体の血中脂質過酸化産物が増加するが、これは妊娠後期に減少する。過酸化脂質は胎盤でも産生され、制御されないと酸化ストレスと重大な細胞損傷を引き起こす可能性があるため、これに対応してGPXを含む抗酸化酵素のレベルが高くなり、活性化される。
・妊娠第3期にも、GPX活性と新生児の出生体重との間に有意な正の相関が認められた。
・妊娠合併症の場合の妊娠期間に対するセレン摂取の影響は、まだ広く研究されていない。
しかし、数少ない研究のメタ解析ではセレン濃度と妊娠期間の間に正の相関があることが示唆されている。合併症を伴う妊娠の場合、胎児の成長と発育の指標に対するセレンの影響は合併症によってもたらされる複雑な影響によって影が薄くなる可能性があり、これは潜在的に異なる代謝または栄養動態が作用していることを示している。
いかがでしたか?
妊活中、妊娠中の方はご自身のセレン摂取について食事内容を見直してもいいかもしれません。
妊活・および妊娠中より具体的な栄養戦略をお探しの方は、当院の栄養マニュアルのご利用を是非ご検討ください。
産後ダイエット、体質管理にも非常に有益な内容になっています。
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