当院の栄養マニュアルでお問い合わせが非常に多いテーマの一つである妊娠中栄養学。
特に第一子をご出産された経験のある女性からのお問い合わせが多い。第二子のご出産ではよりベストの状態で臨みたいという強い思いが、お問い合わせの文章の中からひしひしと伝わってきます。私も知識のブラッシュアップを欠かしませんので、皆様も共に学び、いざその日を迎えましょう。
というわけで、今回のブログは妊娠中の食事パターンに関する最新データをまとめてみたいと思います。
なるべく要点を簡潔にまとめてみますのでどうぞ最後までお付き合いください。
胎生期および乳児期における母親の栄養状態が出産後の新生児の健康状態に影響を及ぼす可能性があるとする理論、すなわちDevelopmental Origins of Health and Disease:DOHaD理論では、栄養因子は特に幼少期の神経発達に不可欠な影響因子として認識されており、妊娠中の母親の栄養が子供の認知発達および行動に影響を及ぼす可能性を示唆する証拠が増加している。
母親の鉄分やヨウ素などの欠乏は胎児の発育に影響を与えるだけでなく、新生児の知能や認知力にもダメージを与える。
一方で、妊娠中の葉酸補給は神経管欠損症の予防に役立ち、認知発達を改善することが示されている。
個別の栄養素については様々な県有が行われてきたが、一方で妊娠中の母親の食事パターンが子供の神経発達に及ぼす潜在的影響についてはあまり研究されていない。
妊娠中の食物クラスターと小児期のIQとの関連を報告した初の研究では、「野菜と果物」パターンの妊婦から生まれた子どもは、「肉とジャガイモ」や「食パンとコーヒー」パターン群に比べて知能指数(IQ)が高いという結果が出ている。
またある研究では、妊娠中の「魚、エビ、野菜、藻類」の食事パターンが子孫の神経発達レベルに影響を及ぼす可能性が示され、この食事パターンスコアが高い女性では乳児の認知および粗大運動発達遅延リスクが減少していた。
また、妊娠中の母親の地中海食パターン(MD)遵守は、子供の神経発達障害リスク低下と関連することが報告されている
一方で、妊娠中の不健康な食事パターンのスコアが高いほど、子供の神経発達に悪影響を及ぼすリスクが高い。
ある研究では、妊娠初期のオランダ伝統食の遵守が、子どもの外在化問題リスクの上昇と関連していることが示され、「不健康」または「西洋」食事パターンを高頻度でとる母親の子どもは、多動性-不注意症状を起こしいことがわかっている。
リンクの研究は、中国の出生コホートに基づき、食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて食物摂取頻度データを前向き収集し、妊娠3期間の食事パターン、妊娠中の食事軌跡と子どもの神経発達との関連を検討したもの。
主成分分析により、妊娠期間中の5つの異なる母親の食事パターンを同定。
・タンパク質および微量栄養素に富んだ食事パターン
・低鉄分の食事パターン
・鉄分に富んだ食事パターン
・主食としてのパスタの食事パターン
・塊茎、果物、およびグリル食品の食事パターン
【結果】
妊娠中に高タンパクで微量栄養素に富んだ食事パターンをとった母親の子どもは粗大運動や問題解決スコアが高いなど、神経発達が良好だった。
低鉄分食パターンの女性から生まれた子どもは、神経発達が不良であることが観察された。妊娠初期に低鉄分食パターンの母親から生まれた子どもは問題解決スコアが低く、第2、第3期に低鉄分食パターンにさらされた子どもは粗大運動スコアが低かった。
妊娠第3期に低鉄分食パターンをとった母親を持つ子どもはコミュニケーションスコアが低かった。
【結論】
妊娠期間を通じて、母親が栄養バランスのとれたタンパク質と微量栄養素の豊富な食事パターンと十分な鉄分の食事パターンをとることは子どもの神経発達と正の相関があることが支持された。
また、妊娠中女性が低鉄分食パターンに従うと子孫の神経発達異常のリスクが増加した。
母親は適切かつ十分な栄養摂取を確保するために、妊娠中の適切な食事にもっと注意を払うべきである。
・解析を進めると、タンパク質と微量栄養素が豊富な食事パターンを高頻度でとる母親の子どもは、中頻度の母親よりも神経行動発達異常リスクが低いことが示された。
・タンパク質はヒトの成長と発達を維持するために不可欠である。母親のタンパク質欠乏は運動機能や認知機能に永続的な影響を及ぼし、子孫の脳の発達を阻害する可能性がある。日本の研究でも、妊娠初期のタンパク質摂取量の少なさは3歳時点の発達遅滞リスクの高さと関連していることがわかっている。
・げっ歯類モデルでは、妊娠初期段階でのタンパク質欠乏は神経発生、細胞移動、分化、可塑性を変化させることが観察された。メカニズムとして、海馬や大脳皮質における神経伝達物質やホルモン放出への影響、視床下部における神経幹細胞(NSC)の増殖・分化能への影響などが考えられる。
・妊娠中のヨウ素摂取不足は甲状腺ホルモン合成に影響を及ぼし、胎児の大脳皮質と海馬における神経細胞の増殖と移動に影響を及ぼすことで胎児の脳発達を損なう。重度ヨウ素欠乏は子供の知的障害につながる可能性がある。
・ビタミンCは妊娠中の胎児の脳の発達に不可欠である。出産前のビタミンC欠乏は発達中のモルモットの脳において海馬の発達を著しく損ない、酸化ストレスを誘発することが報告されている。
・ビタミンB群、葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6、リボフラビンの摂取状況はすべて胎児の神経発達に直接的影響を及ぼしうるコリンの状態に影響を及ぼす可能性がある。妊娠中の葉酸とビタミンB12の摂取は、神経管欠損症の予防に役立つことが研究で示されている。
・鉄欠乏症と鉄欠乏性貧血は世界的な栄養障害で、早期鉄欠乏症(ID)は小児期における能動的・受動的認知制御を支える脳機能の変化と関連している。出生前の良好な鉄レベルは小児の適切な神経発達に不可欠。
・鉄はミエリン形成、神経伝達物質であるセロトニン(トリプトファン水酸化酵素)とドーパミン(チロシン水酸化酵素)合成、エピネフリンとノルアドレナリンの前駆体など、特定の脳機能に関与する酵素に必要。動物実験では、妊娠中に鉄欠乏食パターンをとったラットの子孫は、出生後に十分な鉄を含む飼料を摂取したにもかかわらず、出生前に鉄が十分な食事パターンをとったラットの子孫と比べて、その後の発育において皮質下白質と海馬におけるミエリン形成が少ないことがわかっている。
・母親の血清フェリチン濃度(12mg/Lから60mg/Lの範囲)と鉄摂取量(14.5mg/日から30.0mg/日の範囲)が、ワーキングメモリー高スコアと関連していることが示されている。妊娠中に食事からの鉄摂取を適切に強化することが推奨される。
…いかがでしたか?
お子様の発達障害を予防する上で有益なデータだと思います。
食事パターンや個別の栄養素サプリについて、より細かく具体的な栄養戦略をお探しの方は、当院の栄養マニュアルのご利用を是非ご検討ください。産後ダイエット、体質管理にも非常に有益な内容になっています。
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