今回のブログは、機能性身体障害(Functional Somatic Disorders: FSDs)と低悪性度慢性炎症の関連性を示すデータについてまとめてみたい。
FSDは、線維筋痛症、慢性疼痛、過敏性腸症候群(IBS)、慢性疲労症候群(CFS)を含む、明確な身体疾患や精神疾患に起因しない、1つまたは複数の持続的身体症状や特徴的な症状パターンの存在と定義されている。
軽度の一過性身体症状は小児や青少年で観察されるが、FSD罹患者の正確な人数は不明である。
重篤な症状では不登校や引きこもりなど、児童や青少年の日常生活に大きな支障をきたす。最近のメタ解析では、小児および青年期のFSD有病率は3.3%で、有病率は増加傾向にある。
小児期や青年期のFSD症状は成人期までの継続リスクはかなり高く、長期的な身体的・精神的健康状態の悪化と関連している。
FSDの病因はまだ完全に解明されていないが、生物学的要因と心理社会的要因の複雑な相互作用で生じると考えられており、免疫炎症系の活性化を含む複雑なストレス系の調節不全が関与していることが示唆されている。継続的、累積的、または圧倒的なストレスは、低悪性度炎症と呼ばれる軽微だが慢性的な免疫炎症活性化状態をもたらし、、視床下部-下垂体-副腎軸などのストレス系システムを活性化する可能性がある。
ストレス系システムの活性化は、結果的に身体の覚醒を亢進させて機能性身体症状の発生と維持に寄与する。
低悪性度慢性炎症は免疫細胞から分泌される炎症マーカー群によって引き起こされ、全身性の炎症マーカーの主なサイトカインは炎症過程における役割によって、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインに分類される。一般的な炎症性サイトカインはIL1-α、IL1-β、IL6、CRP、TNF-αであり、IL-1ra、IL-4、IL-10、IL-11、IL-13。
これらの炎症マーカーとFSDとの関連は、成人においても認められており、高感度CRP(hsCRP)値がCSF患者と線維筋痛症患者の両者で健常対照群と比較して有意に上昇していることがわかっている。同様に、炎症マーカーの発現増加は様々な慢性疼痛と関連していることもわかっている。
FSDの重要な一形態である過敏性腸症候群(IBS)では、炎症性サイトカインであるTNF-αとIL-17が、健常対照者と比べてIBS成人患者において有意に高いことが観察され、IBSの病態においても低悪性度慢性炎症が関与している可能性が示唆されている。
成人で観察されるFSDと低悪性度慢性炎症との関係は小児や青年期のFSD患者にも存在する可能性が提唱されており、最近では小児IBSにおける局所性炎症反応と、病態生理と症状発現における低悪性度慢性炎症の役割が注目されている。
リンクのレビューは、小児および青年期における全身性炎症マーカーとFSDの関連性を検討したもの。
非FSDパーソンと比較したオリジナルデータを有する15件の研究で、696人の小児および青年集団において41の血清または血漿中のサイトカインが測定された。
【結果】
FSD患者におけるサイトカインレベルの変化は12研究で報告されたが、3研究ではFSD患者と対照群を比較した際に有意差は認められなかった。
サイトカインレベルは、9研究で有意に上昇していた(IL-2、IL-6、IL-8、IL-12、CRP、hsCRP、IP-10、MCP-1、sTIM-3、sCD25、TNF-α)。
【結論】
炎症反応が小児FSDの病態生理に関与している可能性が示された。
小児FSDにおける炎症マーカーレベルの変化はほとんどの研究で報告されており、小児FSDの病態生理学における炎症反応系の役割を示している。
・CFSまたは機能性胃腸障害(FGID)に限定されたFSD小児症例696例を対象とした15研究が同定され、これらの研究では41種類の血清または血漿中サイトカインが測定された。FSD小児および青年におけるサイトカインレベルの変化は12件で報告され、有意差が認められなかった研究は3件のみだった。
・サイトカインレベルの有意な変化が報告された研究では測定されたサイトカインレベルの上昇と減少の両方が認められた。上昇したサイトカインはすべて炎症性サイトカインと考えられるが、減少が報告されたサイトカインのの中にも炎症性サイトカイン(IL-6、IL-23、hsCRP、IFN-γ)と抗炎症性サイトカイン(IL-5、IL-10、IL-13)の両方が含まれていた。したがって、FSD小児や青年において炎症反応が亢進するのか、あるいは低下するのかを明確に結論づけることは困難。しかし、報告されたサイトカインレベルの変化の大部分は炎症反応を媒介するもので、FSD小児および青年における低悪性度慢性炎症の存在が示唆される。
・成人FSD患者に関する既存エビデンスに関するレビューでは、線維筋痛症や慢性疼痛患者を対象とした多くの研究で炎症反応とFSDとの関連が示唆された。さらに、FSDを有する成人症例を対象とした大規模コホート研究では、感染症の既往がFSD高リスクと関連していることが判明し、過去に感染した回数が多いほどFSDリスクが高くなった。また、FSDと重症感染症との関連も示された。
・小児FSD患者を対象に、hsCRPレベルと機能的身体症状を比較した研究では、hsCRPレベルと機能的身体症状のレベルとの間に有意な相関が示された。
また、機能性神経障害の小児と機能性慢性疼痛の小児を対象にCRP値を測定した研究では、FSD患者ではCRP値が上昇傾向にあることが報告されている。これらは炎症反応系の活性化を示唆し、小児FSDにおける炎症過程の関与を示している。
・サイトカイン産生の変化を伴う免疫系の偏りは、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸と炎症系の活性化を引き起こす長期的なストレス曝露と関連する。慢性ストレス状態ではストレスホルモンであるコルチゾールの産生が上昇し、HPA軸が長期にわたって活性化されるためコルチゾールに対する免疫系感受性が損なわれた結果、炎症マーカーレベルが上昇する。
・コルチゾールレベルとFSDの関係調べた先行研究では、FSD患者ではコルチゾール反応が変化することが示されている。長期にわたるストレスはストレスホルモンレベルの上昇を介した炎症反応システムを阻害し、 特定のTリンパ球型(Th1、Th2、Th17など)バランスの変化を引き起こした結果、サイトカインレベルを低下させる可能性がある。ストレス系と炎症反応の相互作用は複雑なプロセスであり、FSD発症はさまざまなサイトカインのレベルの上昇と下降の両方の不均衡によって媒介されている可能性がある。
…いかがでしたか?
小児から成人に至るまで、線維筋痛症、慢性疼痛、過敏性腸症候群、慢性疲労症候群でお悩みの方は慢性炎症をいかに抑制するか?をテーマにご自身の生活を再確認してみてはどうだろう。
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