ここ2年くらいで発表された癒着性関節包炎(いわゆる四十肩、足首の関節可動域制限など)に関するデータを洗いざらい読んでいる。
MRI画像診断での軟部組織に関する知見以外は目新しい情報はなし・・・とはいえ徒労感は全く無く、もう一度情報をインプットし直すことで「あぁ、あの時の閃いた治療テクニックは間違ってなかったな」とか、患者さんへの説明の際の要点を再確認できたので非常に有意義だった。
治療の現場に立ちつづけている人にはわかってもらえるかもしれないが、治療中に突然頭に浮かんだ治療テクニックの閃きが時を経てのちに読んだ論文で答え合わせができるのは面白い感覚。
MRI画像診断のデータでは、慢性化したら完全回復への道のりは相当厳しいモノになることが確認された。ですので皆さん、「なんとかなる」などと思わず、筋骨格系症状は放置ぜず適切なケアを行うこと。
まずは一度当院にご相談ください。
さて、今回のデータは肥満関連の不安障害に対するプロバイオティクスの有効性に関するデータをまとめてみたい。
高脂肪食(HFD)の摂取と過体重や肥満発症の関連性は、多くの研究で科学的に実証されているおり、健康と疾病の発生起源(DOHaD)では妊娠中の肥満が子孫の肥満、糖尿病、心血管疾患など生涯を通じた慢性疾患リスク増大との関連も示されている。
そういった背景から、肥満者にみられる負の転帰を予防または軽減する戦略に注目が集まっており、様々な戦略の中でもプロバイオティクス補給が注目されている。
プロバイオティクスは腸の健康に良い影響を与えるだけでなく、炎症性メディエーターを減少させる可能性があることから代謝性疾患の治療介入として広く研究されている。
ある研究では、ラクトバチルス・カゼイCRL431を2ヶ月間投与すると、食事誘発性肥満マウスの小腸と肝臓におけるインターフェロン-γ、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン(IL)-6、IL-17などの炎症性サイトカインが減少することが示されている。
さらに、ラクトバチルス・プランタルム LP104を8週間投与することで、HFDによる高脂血症が効果的に予防されることが観察されている。
また、プロバイオティクスが認知機能障害に対する潜在的治療法として認識されている点も注目に値する。研究では、動物モデルにおける不安様行動の軽減におけるプロバイオティクスの有効性や、神経細胞機能とストレス誘発性うつ様行動に対する調節作用が示された。
この研究では、海馬における神経栄養因子関連の遺伝子発現低下を逆転させるプロバイオティクスの抗うつ作用が示されている。
しかし、プロバイオティクスが神経症上に及ぼす影響については不明な点が多い。
リンクの研究は、不安様行動に対するプロバイオティクス株ラクトバチルス・ラムノサス LB1.5摂取による前頭前皮質における遺伝子発現および、HFDを与えた雄マウスの大脳皮質と海馬における神経炎症について検討したもの。
マウスをコントロール(CONT)、コントロール+プロバイオティクス(CONT+PROB)、高脂肪食(HFD)、高脂肪食+プロバイオティクス(HFD+PROB)の4群に分け、プロバイオティクスラクトバチルス・ラムノサス LB1.5(3.1×108CFU/mL、生水牛乳由来)を週3回経口投与。
【結論】
ラクトバチルス・ラムノサス LB1.5の13週間の介入により、HFD飼育マウスのIL-6濃度が低下し、不安様行動も減少した。
HFDは大脳皮質におけるGFAPとThの免疫反応性に影響を与えた。
海馬でも食事とサプリメントの相互作用が観察され、HFD+PROBではHFDに比べてGFAP陽性細胞数が増加した。このことは、初期段階における栄養が、成人後の健康と疾病の発生に重要な役割を果たしていることを示している。
ラクトバチルス・ラムノサスLB1.5の補充は、治療介入の潜在的ターゲットになる可能性がある。
・離乳後に13週間にわたってHFDを摂取すると、体重と血清脂質濃度が増加することが示された。HFDは大脳皮質のGFAPおよびTh免疫反応性にも影響を与えた。海馬では食事とサプリメントの相互作用が観察され、HFD+PROB群ではHFD群に比べてGFAP陽性細胞数が増加した。
・ラクトバチルス・ラムノサス LB1.5補充は、HFD飼育マウスにおいて血清IL-6レベルの低下をもたらし、LDB試験で評価される不安様行動の軽減を促進した。評価されたすべてのサイトカインの中で、血清中IL-6レベルだけがHFD処理マウスで上昇し、ラクトバチルス・ラムノサス LB1.5補充は血清中IL-6を減少させることが観察された。IL-6は体内の炎症プロセスにおいて極めて重要な役割を果たしており、代謝異常や炎症関連疾患など様々な病態に関与している。
・ラクトバチルス・ラムノサス LB1.5はすべての動物の消化管に耐性があり、実験を通して健康な状態を維持した。
・ラクトバチルス.カゼイCRL 431の補給(108 CFU/mL、2ヵ月間)をHFDマウスで評価した研究では、ラクトバチルス.カゼイCRL 431が抗炎症反応を誘導し、小腸、肝臓、脂肪細胞において炎症性サイトカイン(IL-6、IL-17、TNF-α)を減少させることが確認された。
・HFD摂取は慢性炎症は、過体重や肥満を特徴づける末梢組織の炎症経路を活性化する。
この活性化は脳にまで及ぶ可能性があり、視床下部、海馬、大脳皮質などの部位に影響を及ぼし、行動の変化を引き起こす可能性がある。げっ歯類モデルでは、HFDに反応して不安様行動やうつ病様症状が増加することが明らかになっている。
・HFDによって誘発される炎症は、脂肪酸への過剰な曝露によって生じる視床下部の機能障害と相まって、海馬や大脳皮質を含む様々な脳領域に悪影響を及ぼす可能性がある。HFDを長期間続けると血液脳関門透過性が亢進するため海馬内で神経炎症が起こり、脳の恒常性の乱れに反応してアストロサイトやミクログリアが活性化する。
・肥満が脳萎縮を誘発することはヒトでも動物モデルでもよく知られている。この現象は脳血管機能障害と同時に起こる炎症に関連している可能性が高い。
・前頭前野を含む中枢神経系では、酸化ストレスに対する防御機構が神経炎症からの保護に役割を果たしている。Sirt1やNrf2のようなタンパク質は代謝を調節し、HFD摂取による酸化的チャレンジに対応する上で重要な役割を担っている。Sirt1は、エネルギー代謝やストレス応答を含む様々な細胞プロセスを調節し、HFDの代謝的悪影響に対する保護因子として注目されている。
あくまでマウス研究だが、上記のように不安障害やうつ病に対するプロバイオティクスの有効性を説くデータは少なくない。
肥満に関連した不安障害でお悩みの方は参考にしてほしい。プロバイオティクス選びを含む、より具体的な栄養マネジメントをお探しの方は当院の栄養マニュアルを症状改善に向けてぜひご利用をご検討ください
Lineまたはメールによるカウンセリングをもとに、皆様の症状や体質に合わせて摂取カロリー数の計算や、食事デザイン、サプリメントの選択、排除すべき食材などをパッケージでデザインし、ご提案いたします。
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