運動によって骨格筋から分泌される”イリシン”。
年齢を重ねるほどに運動後の血中イリシン濃度は高くなり、腹部内臓脂肪面積の減少に影響することがわかっている。
イリシンの存在が発見されて以来、女性の代謝疾患や生殖疾患におけるイリシンの潜在的な役割が注目されてきた。
当院のパーソナルトレーニングにお越しの女性の方々(20代〜60代)は体脂肪減少に成功し、大病を患うこともなく閉経後のQOLも高いままに人生を謳歌されている。トレーニング後のイリシン発現効果が身体機能に好影響を与えているのだろう。
今回のブログは、女性の生涯を通じて影響を及ぼす可能性がある様々な生理学的(思春期と更年期)および病理学的(多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、機能性視床下部性無月経(FHA)、子宮内膜症、妊娠糖尿病)状態において、イリシンが果たす役割に関する最新データを要約してみたい。
【レビューの結論】
・イリシンは視床下部-下垂体-性腺軸(HPG)軸活性化の重要なトリガーであり、思春期開始のタイミングに関与している可能性がある。中枢性思春期早発症(CPP)小児では血清イリシン濃度の上昇が報告されており、イリシンがこの疾患の診断マーカーとなる可能性が示唆された。
・イリシンは肝機能、膵臓機能、脂肪組織、エネルギー消費の調節に良い影響を与えることから、代謝性疾患治療の新たな治療標的となる可能性がある。
・妊娠糖尿病(GDM)を発症した女性では、発症しなかった女性と比較してイリシン濃度が妊娠初期に有意に低いことが判明した。血清イリシン値は将来のGDM発症を予測するバイオマーカーになる可能性がある。
・イリシンはGDMだけでなく巨大児や胎盤機能のマーカーにもなりうる。
・PCOS症候群は卵巣嚢腫の問題ではなく、代謝に重要な影響を及ぼす複雑な疾患である。PCOS患者ではレプチン抵抗性(IR)現象と同様の「イリシン抵抗性」メカニズムが仮説として提唱されている。イリシンはPCOSの病因、代謝性合併症の発症さらには治療にも関与しているようだ。
・イリシンが直接的、間接的なメカニズムによって骨代謝に影響を与えることが示されている。閉経後女性ではイリシン濃度は骨折頻度と逆相関し、同様の機序がFHAのある若い女性においても提唱されている。
・前臨床および臨床試験で、イリシンの抗炎症作用が示されてきた。現在まで子宮内膜症患者におけるイリシンレベルの上昇を報告した研究は1件のみで、おそらくこの疾患の根底にある炎症の亢進を補うための適応反応と考えられる。
The Role of Irisin throughout Women’s Life Span
イリシンと性差
・現在まで血漿および血清中イリシンの正常値の範囲は示されていない。循環中イリシン濃度は0.01ng/mLから2000ng/mLまで報告されておりかなりばらつきがある。これまでの研究では、男児より女児のイリシン濃度が高いことが示されている。また、急性運動後の血清イリシンの一過性の増加は男性よりも痩せた女性で顕著であることが示されている。
・卵巣摘出マウスモデルにおいて骨格筋における循環イリシンとFNDC5の発現増加と関連した脂肪率と代謝の変化が発見された。これはイリシンがより多く分泌され、白色脂肪組織(WAT)を燃焼させることによってエネルギー消費量を増加させるか、あるいは他のまだ知られていない作用による代償メカニズムを示唆している。
・男児81人、女児72人を対象に行った研究ではイリシン循環レベルの高さは耐糖能障害と相関し、この相関は女児でより顕著だった。これは、両性におけるホルモンの違いによって説明できることを示唆している。17β-エストラジオール(E2)(強力な天然型エストロゲン。卵胞より分泌され、細胞の分化、増殖に影響)は、筋肉量を増加させる同化経路を通じてイリシンの循環に影響を与えてイリシンのアップレギュレーションを引き起こし、イリシン抵抗性メカニズムを促進する可能性がある。また、女性と男性の褐色脂肪組織(BAT)の分布の違いも関連している可能性がある。実際に少なくとも成人期では女性は男性よりもBATが活発である。
さらに、イリシンはWATからも分泌されるという最近の発見はWATの分布そのものが男女二型であることから、性差を部分的に説明できるかもしれない。
・健康な若者を対象に行われた研究では、除脂肪体重がイリシンレベルの強い正の予測因子となり、男性より女性の方がイリシン濃度が高いことが示された。これによりイリシン産生の性的二型が確認された。イリシンの分布と作用の性的二型性の証拠は中枢神経系(CNS)におけるイリシンの同定という新しい知見からも得られている。
イリシンと思春期の発達
・イリシンは視床下部-下垂体-性腺(HPG)軸の機能と生殖能力を活性化する重要因子のようだ。実際、イリシンとFNDC5は視床下部、下垂体、卵巣、精巣で同定されている。
また、イリシンは視床下部の内側核と弧状核でも発現しており、摂食、エネルギー恒常性、生殖の節に関与している。
・イリシン陽性線維と性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンとの直接的接触が確認され、GnRHパルスに直接影響していることが示唆された。モデルマウスにイリシンを投与したところ1時間の培養でGnRHの転写が促進され、イリシンがGnRH放出に関与し、GnRH発現ひいては生殖機能に影響を及ぼす可能性が示唆された。
・ラットモデルでは、イリシン(出生後21日目から約10週間、100ng/kg)を毎日腹腔内注射すると思春期の開始が遅れ、雌ラットの脳におけるGnRH発現が減少した。イリシンの慢性投与はホルモンレベルにも影響を及ぼし、血清卵胞刺激ホルモン(FSH)レベルを低下させ、血清黄体形成ホルモン(LH)とE2レベルを上昇させた。加えて、イリシン投与ラットの卵巣組織では初期卵胞の減少と線維化の増加がみられた。
一方で雄ラットではイリシンへの長期暴露後、血清テストステロンとLHレベル、精子数、精細管幅は有意に増加した。イリシン暴露に対するオスとメスのラットの生殖系と思春期の成熟は異なる反応を示し、イリシンへの長期暴露はメスの生殖系を変化させる可能性がある。
・イリシンはFSHとLHの分泌を直接刺激してそれらの分泌を減少させ、GnRH分泌に負のフィードバックを及ぼす可能性がある。また、イリシンの作用はGnRHアゴニストの作用に匹敵するという仮説が成り立つ。
・GnRHニューロンが役割を果たすホルモンと神経内分泌経路のネットワークは思春期の開始を複雑に制御している。キスペプチン/ニューロキニンB/ダイノルフィン(KND)、神経ペプチドYを介する抑制シグナルと刺激シグナルのバランスがGnRHニューロンを制御している。GnRHパルスが始まると思春期の開始が確認され、成長速度の増加、骨の成熟、骨端融合、第二次性徴の発現が可能になる。脈動性GnRH分泌は思春期における体重(脂肪/筋肉)、代謝状態、エネルギー貯蔵量と関連しているようだ。
・エネルギー貯蔵量と代謝状態は思春期の発症に強く影響し、視床下部のネットワークは身体が脂肪および/または筋肉量の臨界レベルに達したときにのみ活性化される。HPG軸の活性化には、レプチン、インスリン、グレリン、ネスファチン、ニューロキニン-βを介する様々な代謝シグナルが関与していると考えられている。
・体脂肪の増加や肥満は思春期早発症に関係しているようだ。体格指数(BMI)、ウエスト周囲径、総体脂肪、内臓脂肪組織はすべて性的成熟と関連している。思春期に関しても、肥満児は思春期前と思春期の間でイリシン濃度にかなりの差が見られ、肥満集団におけるイリシン濃度上昇の主な原因は思春期である。
・中枢性思春期早発症(CPP)33名、思春期早発症(PP)31名、健常対照30名を含む94名の女児のイリシン濃度を評価する研究を行ったところ、CPP患者は他グループよりも血清イリシン濃度が高かった。さらに、イリシン値とBMI標準偏差スコア(BMI-SDS)、身長SDS、体重SDS、骨年齢、子宮長軸、卵巣の大きさ、ベースラインのFSHとLHのレベル、ピークLHとの間には、統計的に有意な正の相関があることが報告された。イリシン値の増加がCPPマーカーとして使用できる可能性がある。
イリシンと多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
・PCOS患者が一般的に代謝異常を有していることは広く認識されている。また、PCOSでない患者に比べて肥満の有病率が高い。BMIとは無関係だがPCOS女性の最大80%がインスリン抵抗性(IR)を示し、臨床症状や代謝変化の発現に重要な役割を果たしている。
・イリシンが骨格筋や心臓のインスリン受容体感作を高めること、肝臓の糖・脂質代謝や膵β細胞の機能を改善すること、WATからBATへの転換を促進するなど、いくつかの機序によってIRを改善することが多くの研究で示されている。
・PCOS患者の血清イリシン濃度は、対照群と比較してPCOSで高いことが明らかにされ、PCOSの発症にイリシンが関与している可能性が示唆された。918人のPCOS患者と529人の対照女性を対象とした8研究を含む最近のメタ解析では、PCOS患者では健常対照女性と比較してイリシン濃度が少なくとも45.78ng/mL高いことが示されている。また、イリシンレベルはBMIが高いPCOS患者の方が低い患者よりも高かった。したがって、循環イリシン濃度はBMIの影響を受けているようだ。
・PCOS女性、非PCOS女性ともにイリシン値は標準体重女性よりも過体重や肥満の女性の方が高かった。体重が減少するとイリシン濃度は有意に減少し、体重が戻るとイリシン濃度はベースラインレベルに戻った。PCOS患者では高インスリン血症に反応して2時間後にイリシンが減少し、その程度は健常対照群よりも大きかったことも報告されている。この結果は、PCOS女性におけるIRに対するイリシンの役割、あるいはイリシン抵抗性の可能性を示唆していると考えられる。PCOS患者におけるイリシン分泌の増加は、インスリン感受性の低下や他の代謝状態を補うための防御機構であるかもしれないという仮説が立てられている。
・PCOS女性におけるイリシンレベル上昇がフリーアンドロゲンインデックスで評価したアンドロゲン過剰と関連していることが示された。アンドロゲン過剰症はIRの重要な誘因であり、アンドロゲンレベルは褐色脂肪組織(BAT)熱産生と逆相関し、PCOS女性はBATレベルが低下していた。BATの増加および活性化は、PCOSおよびその代謝的結果に対する可能な治療戦略であると考えられる。
・イリシンはBAT機能を活性化することにより、デヒドロエピアンドロステロン誘導PCOSマウスの体重、熱発生、インスリン感受性を改善することが示された。さらに、イリシン投与はPCOSマウスの発情周期を改善し、テストステロン、抗ミュラーレリアンホルモン、LH、LH/FSH比を低下させ、卵巣嚢胞卵胞の形成を減少させた。したがって、イリシンはこの疾患の病因に関与しているだけでなく、治療オプションの可能性もある。
イリシンと機能性視床下部性無月経
・機能性視床下部性無月経(FHA)は器質的な原因とは関係なく、様々なストレスから生じる慢性的な無排卵の一形態で、一般に体重減少、過度の運動、および心理的ストレスの3つの主な原因。
・FHAではGnRHの脈動が抑制され、その結果LHとFSHの分泌が減少して性腺機能低下症になることが特徴。FHAの一部症例では回復に長い時間がかかり、エストロゲン欠乏により主に骨の健康に合併症を引き起こす可能性がある。若い女性におけるエストロゲンは骨代謝を調節し、骨リモデリングを抑制、骨吸収を減少させて骨形成を維持する最も重要なホルモン。
・エストロゲン欠乏に加え、イリシンの枯渇も骨の健康状態の悪化に寄与している可能性がある。
マウスモデルでは、イリシンは骨芽細胞の活性化を促進し、NF-κBリガンド活性化受容体(RANKL)を介する破骨細胞形成を抑制し、海綿体および皮質の厚さと海綿体密度を増加させる。このメカニズムはヒトでも確認されている。
・骨代謝に対するイリシンの効果は、BATにも依存する可能性がある。実際、BAT形成は生理学的に骨の健康と関連しているようで、褐色脂肪形成の欠陥は骨量減少と相関している。血清イリシン値は閉経後女性の骨折有病率と逆相関していることが示されている。閉経後女性と同様に、FHAを有する若い女性の骨の健康においてもイリシンの潜在的役割が仮説として考えられる。
・FHA患者における血清イリシン濃度を調査した研究は2つ。2014年に無月経のアスリート、非無月経アスリート、非アスリートを対象とした研究ではイリシン値は脊椎、大腿骨頚部、全身の骨密度(BMD)のZスコアと正の相関を示した。また、イリシン全骨量および海綿体骨量ならびに剛性および破壊荷重を含む骨強度とも関連していた。無月経のアスリートでは、非無月経アスリートおよび非アスリートと比較してイリシンレベルが低いことを発見。無月経のアスリートにおけるイリシンレベルの低下はBATの脂肪生成を抑制することによってエネルギーを維持しようとする防御機構を表している可能性があると推測。この仮説を支持するものとして、神経性食欲不振症のような極度の栄養失調状態ではイリシンレベルの低下とBATの低下が認められる。運動と摂食障害はそれぞれ独立して血清イリシン濃度に影響を及ぼす。
・イリシンはDXAの結果を予測することができることから、イリシンを測定することによって骨粗鬆症を回避するための早期標的治療が可能になる可能性がある。
イリシンと子宮内膜症
・イリシンには抗炎症作用があることが示唆されている。イリシンの抗炎症作用に関与する機序としては、炎症性サイトカイン(インターロイキン-6(IL-6)や腫瘍壊死因子-αなど)の産生低下、抗炎症性サイトカイン産生増加、マクロファージ増殖抑制、alternative-typeマクロファージ分極化誘導、血管透過性亢進経路阻害、インフラマソーム形成阻止などが挙げられる。
・様々な炎症性サイトカインレベルの上昇が子宮内膜症発症に重要な影響を及ぼす。子宮内膜症は炎症性疾患で、主に骨盤内の臓器や組織に子宮内膜に類似した子宮外組織が存在することが特徴。妊娠適齢期女性の約5〜10%が罹患し、月経困難症、慢性骨盤痛、不正子宮出血、不妊症により女性のQOLを低下させる。
・子宮内膜症患者におけるイリシンレベルを調査した研究は1件のみ。子宮内膜症患者では対照群と比較して血清イリシン濃度が上昇し、BMIやC反応性蛋白と相関していることがわかっている。イリシンの増加は子宮内膜症における炎症亢進を補うための適応反応ではないかと推測されている。
・抗イリシン抗体で染色したヒト卵巣癌、乳癌、子宮頸癌のサンプルについて研究では、卵巣子宮内膜症や粘液癌は良性腫瘍に比べてイリシン免疫反応性が非常に高いことが示された。乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌におけるイリシン免疫反応性の増加は癌の発生におけるイリシンの重要な機能を示唆している。
イリシンと妊娠糖尿病(GDM)
・妊婦は妊娠中期にインスリン感受性の低下期を経験し、妊娠中期から後期にかけてその傾向が強まる。その結果、母体組織によるグルコース取り込みが減少し、糖新生によるグルコース産生が増加するが、かなりの割合の妊娠においてIRが悪化し、母体の代謝状態が悪化することで胎児の成長に異常が生じる。GDMは周産期の罹患率、子癇前症、胎児巨大症リスクが増加し、母児ともに二型糖尿病、心血管疾患、肥満発症リスクが高くなる。
・イリシンは代謝に大きな影響を与えることから、イリシンと代謝異常との関連を調べる研究が行われてきた。イリシン濃度は妊娠中、特に妊娠第2期と第3期において妊娠初期に比べて統計学的に有意に増加する。さらに、妊婦の血清イリシン濃度は非妊婦に比べて有意に高い。最近の研究ではGDMの早期診断のためのバイオマーカーとしてのイリシンの可能性が注目されている。
・ある重回帰分析では、母親の血清イリシン濃度とHOMA-IRとの間に逆相関があることが観察された。これは、妊娠中のイリシンの増加はIRの増加を補うための適応反応であることを示唆している。
・イリシンは空腹時血糖(FPG)と負の相関を示した。1時間以内に血清イリシン濃度が上昇すると骨格筋のグルコーストランスポーター4型(GLUT4)の発現を増加させ、細胞内グルコースを有意に増加させることが示されている。イリシンは肝臓のグルコース-6-ホスファターゼとホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの発現を減少させることで肝グルコネシン生成を阻害する。全体として、母体血清イリシンはグルコース取り込みを改善し、糖新生を抑制することによりFPGに影響を及ぼす可能性がある。
・血清イリシン濃度とGDM発症との関係に関するシステマティックレビューとメタ解析では、妊娠中の血清イリシン濃度はGDM群で対照群より有意に低く、イリシンがGDM発症と進行に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。最近の研究でも、妊娠24-28週のGDM妊婦の血清イリシン濃度が健常妊婦に比べて有意に低下していることが示されている。
血清イリシンとBMIおよび食後2時間後のグルコースとの間には負の相関があり、総コレステロール、トリグリセリド、LDLコレステロール値とは正の相関を示した。
・血清イリシン値は、将来のGDM発症を予測するバイオマーカーとして提案されている。妊娠初期のイリシン濃度は、その後GDMと診断された妊婦で低下しており、健常対照者では空腹時インスリン値およびHOMA-IRで測定したIRと正の相関がみられた。イリシンは妊娠中のIRを改善するが、妊娠初期のイリシン低値は既往の代謝状態と関連している可能性があり、膵β細胞による補正とインスリン分泌が不十分となりGDMに罹患しやすくなる。
・巨大児の母親は、正常体重児の母親よりも胎盤成長因子とイリシンのレベルが高く、フェツインAのレベルが低かった。新生児体重は母親のイリシン濃度と正の相関を示し、フェチュイン-A濃度と負の相関を示した。重回帰分析では、血清イリシン濃度のみが出生体重の有意な予測因子だった。
・イリシンがヒト胎盤の分化を促進し、異常胎盤で障害される絨毛細胞機能を改善することが示されている。イリシンは絨毛芽細胞の細胞間融合と増殖を誘導し、絨毛芽細胞の分化を促進する。これは、絨毛細胞株におけるイリシンのAMPKシグナル伝達経路の活性化によるもので、胎盤機能のマーカーとしてのイリシンの役割の可能性を示唆している。
・イリシンとGDMの関連性の可能性は、定期的な運動やバランスのとれた食事など、妊娠中の健康的なライフスタイルの重要性を強調している。運動によるイリシン分泌を促進することによって、妊婦はインスリン感受性を改善できる可能性がある。
イリシンと更年期障害
・1018人が参加した7研究のレビュー/メタ解析によると、骨粗鬆症の中高年では骨粗鬆症のない人に比べて血清イリシン濃度が有意に低いことが明らかになった。また、閉経後の女性や骨折歴のある女性ではイリシン値はさらに低いことが示された。さらに、イリシン値と大腿骨頚部または腰椎のBMDとの間には弱い正の相関が認められた。
・in vitroの研究では、イリシンは骨形成の亢進と骨吸収の減少に関連し、閉経後女性の骨粗鬆症リスクが減少する。
・骨組織レベルでは、イリシンはαV/β5インテグリン受容体を介して骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞の増殖、分化、活性に影響を与える。分化前の骨芽細胞をイリシン処理すると、細胞外シグナル調節キナーゼとp38のリン酸化が増加して骨芽細胞の転写調節因子(Runt関連転写因子2(Runx2))のmRNAレベルが上昇、 骨芽細胞特異的転写因子オステリックス(Osx))および初期骨芽細胞分化マーカー遺伝子(アルカリホスファターゼ(ALP)、コラーゲンタイプ1α1遺伝子(ColIa1))のmRNAレベルが上昇し、骨芽細胞の増殖、分化、ミネラル化が促進される。
・イリシン投与は破骨細胞のRANKL受容体を阻害し、破骨細胞の増殖と分化を低下させる。さらに、NF-κBの発現を阻害することで特定の破骨細胞遺伝子の発現を低下させる。
・運動時に起こる間欠的なイリシン分泌は骨リモデリングを促進し、一方で慢性的イリシン投与はスクレロスチン濃度を上昇させることによって骨異化をもたらす可能性がある。
・血清イリシン濃度とBMDとの間には正の相関が認められ、骨粗鬆症、卵巣摘出、炎症性骨疾患との間には負の相関が認められた。
・骨粗鬆症の閉経後女性におけるイリシンと体組成の関係、イリシン値が椎体脆弱性骨折に及ぼす影響についての研究では、椎体脆弱性骨折と血清イリシン値との間に逆相関があることが確認された。イリシンは骨量よりもむしろ骨質においてより適切な役割を果たし、骨強度にプラスの影響を与える可能性が強調されている。
・全身BMDと全股関節BMDはイリシン値と正の相関があり、正常対照女性と比較して股関節骨折女性では低かった。イリシンとBMDの正の相関は、高齢と閉経に伴う著しい筋力低下によるものかもしれない。血清イリシンと大腿四頭筋断面積との間に正の相関が認められ、サルコペニア患者では血清イリシン濃度が有意に低いことが示されている。
・原発性副甲状腺機能亢進症の閉経後女性ではイリシン値は対照群よりも低い。このことは、骨量の少ない閉経後女性においてイリシン値が副甲状腺ホルモン(PTH)と逆相関することを示した他の研究も支持している。
・マウスモデルでは、イリシンはに細胞増殖を促進させ、シナプス可塑性と記憶機能を改善することが示されている。脳卒中モデルマウスにおいてイリシン投与は神経保護効果を示し、梗塞容積を減少させ、神経機能を改善した。これらのデータは脳代謝におけるイリシンの役割の可能性と、脳卒中後のリハビリテーション療法としての利用の可能性を示唆している。
・イリシンレベルの上昇はホルモン感受性リパーゼ、脂肪トリグリセリドリパーゼ、脂肪酸結合タンパク質4などの脂肪分解関連遺伝子をアップレギュレートし、脂肪細胞への脂質蓄積を減少させグリセロール放出を増加させる。
・卵巣摘出肥満ラットを用いた研究では、イソフラボンの植物エストロゲンであるゲニステイン(GEN)を投与すると血清イリシン濃度が上昇している。これは、GENがイリシン産生を制御するPGC-1αの発現を増加させた結果、脂肪組織が黒くなり、適応的熱発生が増加するため。
・遅発性性腺機能低下症(LOH)とメタボリックシンドローム男性を対象とした研究では、血清イリシンとテストステロン値の間に正の相関があった。LOHとメタボリックシンドロームの男性患者におけるイリシンとテストステロン治療との関連性は、脂肪組織と代謝に対する身体活動の効果のメディエーターとしてのイリシンの役割を明らかにしている。
イリシン分泌を促すためにはそれに見合ったトレーニング刺激が必要であり、トレーニング強度の適切なコントロールが必要。
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