サプリの通販サイトを開くと各社から何百種類ものサプリが販売されていて、内容物のチェックだけでも相当時間がかかるようになった。
栄養に関するデータが更新されるにつれ、サプリの世界市場規模はいまだ拡大傾向にあるようだ。
栄養補助食品は確かに健康に有益な効果を及ぼすことが研究で示されているが、一方で、プラスとマイナスの効果に関する体系的な研究は少ない。
特に、食事の代謝物の吸収・排泄経路である肝臓や腎臓機能に問題がある場合、これらの臓器の機能障害に影響を与える可能性がある。
また、薬剤とサプリメントの相互作用の可能性も考慮する必要もある。
慢性腎臓病(CKD)におけるビタミン/ミネラルサプリメントやプロバイオティクス/プレバイオティクスの役割については、広範な動物実験や臨床研究が行われており、例えばビタミンDはCKD患者の臨床転帰の改善に寄与する可能性が、またプロバイオティクスは炎症性メディエーターレベルを下げ、異なるステージのCKD患者において臨床的利益をもたらす可能性がある。
一方で、CKDと多数の栄養補助食品(例えば、高麗人参と紅参、メチルスルフォニルメタン、ルテイン含有サプリメント、プロポリス、ミルクシスル)との関連は十分に検討されていない。
リンクの研究は、2015年から2017年の国民健康・栄養調査に基づいて、韓国の成人13,271人を対象に、栄養補助食品と慢性腎臓病(CKD)の関連性を評価したもの。
この研究は1万人を超えるアジアコホートにおいて、栄養補助食品とCKDの関連を検討した初めての研究。
栄養補助食品のうち、ビタミン・ミネラルの摂取量が61.41%と最も高く、次いでオメガ3脂肪酸が11.85%、高麗人参が7.999%だった。
アミノ酸とタンパク質、高麗人参と紅参、生薬(植物エキス)-ベリーを摂取している人は、摂取していない人に比べてCKD有病率が有意に高いことが分かった。
逆にプロバイオティクスサプリメントを摂取している患者は、摂取していない患者に比べCKD有病率が有意に低かった。
CKD危険因子や既往歴のない集団では、高麗人参と紅参を摂取しているグループでCKDの有病率が高かった。
共変量で調整した結果、漢方薬(植物エキス)-ベリーのグループは、CKD発症と独立した関連を示した。
・韓国における栄養補助食品の使用程度を評価。アミノ酸とタンパク質、高麗人参と紅参、生薬-ベリーを摂取している参加者は、そうでない参加者に比べてCKD有病率が高いことを明らかにした。プロバイオティクスを摂取しているグループは、摂取していないグループに比べCKD有病率が低いことがわかった。
・韓国で最もよく消費されている栄養補助食品はビタミンとミネラルなど他国と変わらなかったが、重要な違いは韓国人は他の国の人々と比較して高麗人参と紅参を好んで摂取していること。
高麗人参は主に東アジアで栽培されており、韓国は世界でも有数の生産国。高麗人参の主成分であるジンセノサイドは、抗酸化作用、抗アポトーシス作用、炎症性サイトカインの抑制作用があり、血圧や代謝を調節する。
・この研究では、高麗人参と紅参を摂取している参加者はCKDの有病率が高いことがわかった。
この結果はCKD既往や危険因子を持たない健康な集団においても同様であり、高麗人参の摂取が腎機能に直接影響を及ぼす可能性が示唆された。
メカニズムは不明。
高麗人参の過剰摂取や、高麗人参と薬物の相互作用が影響している可能性がある。
・腸内細菌叢と腎臓には双方向の関係性があり、CKDが腸内細菌異常や腸内環境の変化を誘発することがいくつかの研究で明らかにされている。これは主に食物繊維摂取量の減少、抗生物質の頻用、腸管壁浮腫、代謝性アシドーシス、尿毒症によって引き起こされる。
最近の研究では、CKDにおける腸内細菌異常とリーキーガットは炎症性サイトカイン産生を伴う腸管免疫細胞活性化を通じて粘膜免疫反応の変化と関連し、潜在的に全身性炎症と心血管/腎合併症の悪化をもたらすことが示されている。
したがって、腸内環境の改善はCKDの進行を遅らせ、CKD関連合併症を予防するための介入の一つと考えられている。
動物実験では、プロバイオティクスサプリメントがCKDを持つ動物の腎臓の炎症と線維化の進行を改善することが証明されている。
さらにいくつかの臨床試験では、シンバイオティクスが透析前のCKD患者において腸内細菌叢の改善と血清クレジル硫酸濃度の低下に有益な効果を示すこと、またプロバイオティクス補給が透析患者のグルコース恒常性と全身性炎症を改善することが証明されている。
・この研究では、プロバイオティクスを摂取したグループは、摂取していないグループに比べてCKDの有病率が低いことが示された。
腎臓病患者における腎臓と腸の相互作用の重要性を示す証拠は豊富にある。
タンパク質の摂取量を変更することは、CKDを遅らせるための重要な食事戦略である。
・いくつかのRCTでは、食事によるタンパク質制限の有益性が示唆されている。
2020 Kidney Disease Outcomes Quality Initiativeガイドラインでは、代謝的に安定した透析前のCKD患者において、進行または死亡を抑えるために食事性タンパク質制限を推奨している。
・アミノ酸やタンパク質のサプリメントを摂取している参加者では、CKD有病率が高いことが観察された。最近の研究では韓国人の平均的な食事性タンパク質摂取量は推定平均必要量のほぼ2倍。タンパク質の追加補充は糸球体圧の上昇と腎臓への追加の酸負荷を通じて、体への過剰なタンパク質負荷と腎臓の損傷につながる可能性がある。
・興味深いことに、年齢、BMI、SBP、DBP、空腹時血糖値などのCKD発症の主な危険因子を調整した後でも、ベリー類を含むハーブサプリメント摂取がCKD発症と関連していることが観察された。この関係は、CKDの既往があり、CKD危険因子を持つ参加者に多く見られた。ベリー類は、ビタミン、食物プレバイオティクス繊維、微量栄養素(亜鉛、鉄など)を豊富に含む栄養補助食品として世界市場を席巻している。
他の研究では、虚血再灌流動物モデルにアサイベリーエキスを予防的に投与すると、腎機能パラメータが改善し、腎臓の炎症性サイトカインとエンドセリン-1の発現が抑制されることを示した。
また、ブルーベリーがToll様受容体4を阻害し、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ活性を減衰させることでメタボリックシンドロームラットを慢性腎臓障害から保護できることを発見した研究もある。この腎保護効果は、フラボノイド、ポリフェノール、および強力な抗酸化作用と抗炎症作用を持つその他の生物活性化合物が多く含まれていることに起因する。
しかし一方で、ベリー類に高濃度に含まれるフラボノイド、特にアントシアニンには非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と同様のシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用があることが報告されている。NSAIDによるCOX阻害はCKD進行と関連することが知られている。したがって、ベリーの慢性的な摂取によって同様の臨床表現型が生じる可能性を排除できない。
・ベリー類の摂取と腎臓病の関係で注目されるのは、カシス100g に322mg のカリウムが含まれるように、ベリー類にはかなりの量のカリウムが含まれており、高カリウム血症は不整脈や心不全・CKD の悪化のリスクとなる可能性があること。