閉経後骨粗鬆症(PMO)はエストロゲン欠乏による代謝性骨疾患で、薬物による治療は劇症的な副作用を伴う可能性があることから、現在では代替療法としてマメ科植物や果実、ハーブ抽出物から得られる植物性エストロゲンイソフラボンなどの天然化合物の使用が提唱されている。
しかし、重篤な有害事象のリスクはほとんどないものの天然化合物の臨床試験結果は一貫しておらず、閉経後女性の骨密度(BMD)に有益な効果を示したものはごくわずか。
脊椎と股関節の骨量は20代半ばでピークに達するが、橈骨など他の骨は成人女性では40歳でピークに達するケースもある。
閉経の前年に骨量減少の急激な加速が始まり、さらに3年間続いた後に加速が弱まるが、それでも閉経後4〜8年間の骨量減少の割合はまだ高い。
更年期移行期のBMDの平均減少率は約10%。
多くの女性は更年期近くの5〜6年間で10〜20%という大きなBMD減少を経験していることになる。
したがって、骨量の減少がかなり進行してからではなく、閉経前または閉経開始時に食事介入を開始することがPMOを予防するための最良の戦略であると考えられる。
カシス(Ribes nigrum)は、雌の成体マウスにおいて、卵巣摘出による骨量減少および加齢に伴う骨量減少を効果的に抑制することが見出されたが、その効果は介入開始のタイミング次第であり、カシスサプリメントが骨代謝に及ぼす有益な効果はマウスで実証されているが、ヒトでの研究はない。
リンクの研究は、成人女性を対象にカシスの用量依存的な骨量減少防止効果とその作用機序を検討することを目的としたもの。
カシスサプリメントが成人女性のエストロゲン欠乏症による骨量減少をどのように緩和するかを調べた最初の無作為化臨床試験。
40名の閉経前後女性に対し、
(1) プラセボ
(2) カシス粉末3392mg/日
(3) カシス粉末784 mg/日
の3つの治療群のいずれかに6ヶ月間ランダムに振り分け。
・全体として、カシス補給は対照群と比較して全身の骨密度(BMD)の損失を減少させたが、全身のBMD改善は、高BC群でのみ有意に保たれた。
また、カシス補給は、骨形成マーカーである血清1型プロコラーゲンのアミノ末端プロペプチド(P1NP)を有意に増加させた。
これらの知見は、784mgのカシス粉末を6ヶ月間毎日摂取することは骨形成を促進し、閉経後の骨量減少のリスクを軽減する可能性があることを示唆している。骨保護効果は、骨形成マーカーおよび骨形成/骨吸収指数(BALP/CTX1)がカシス補給により増加する傾向があることから、骨吸収を抑制するだけでなく、骨形成を促進することによっても得られている可能性がある。
・過去の動物実験や閉経後女性におけるPMO予防ヒト臨床試験の大半とは異なり、本研究では、比較的若く(平均年齢53.1±4.3歳)、十分な骨量を保持している閉経前後および閉経初期の女性(ベースラインで骨粗鬆症を発症していない)を対象にしたもの。
この年齢では、骨形成は骨吸収との相互作用を通じて骨リモデリングに重要な役割をまだ担っている。
・カシスの主要アントシアニンであるデルフィニジン-3-ルチノシドが、線維芽細胞増殖因子(FGF)経路の活性化により骨芽細胞の分化に影響を与えることが明らかになり、PMO予防のための骨刺激因子としての可能性が示されている。
・ブルーベリーやプラムなど抗酸化作用の高い果物の骨保護効果についてもいくつかの研究で証明されている。
・この研究で得られた知見は、更年期移行期の一般成人女性に関連するものであることを強調する。
・本研究では、6ヶ月間のカシス高用量群で血清P1NPが有意に増加した。
またカシス補給はBALP、OC、BALP/CTX1比の減少を緩和する一方、骨芽細胞性骨形成を阻害する重要なメカノセンサーであるスクレロスチンを減少させる傾向が見られた。
・カシスサプリメントの骨保護効果は、閉経後の骨量減少の進行度合いによって異なる可能性があった。カシスサプリメントは骨量減少リスクが高い人により効果的である可能性がある。
結論
閉経前後の女性を対象としたこの二重盲検ランダム化臨床試験において6ヶ月間にわたるカシスエキス784mgの毎日の補給は骨量減少予防に有効だった。