閉経後女性は、骨粗鬆症の主なハイリスク群として一般に認識されている。
閉経後骨粗鬆症の中核的な病態はエストロゲン欠乏で、現在の骨粗鬆症治療にはホルモン補充療法が適用されている。
しかし、外因性ホルモンは内分泌の恒常性を乱し、乳がん、子宮内膜がん、胆石症などのリスクを高めると言われている。
骨粗鬆症の薬物療法においては、骨形成促進と破骨細胞抑制の二種に分けられ、後者が主流となっている。破骨細胞抑制薬は、それ以上の骨量減少を防ぐだけで根本的な骨量の改善は望めない。
一方で骨形成薬は、内分泌障害、胃腸刺激、中枢神経病変を引き起こす可能性がある。
メラトニンは、その抗酸化作用と抗老化作用により骨粗鬆症患者や臨床医から注目されている。
以前の研究では、骨粗鬆症を有する閉経後女性において血清メラトニンレベルが明らかに低下していることが明らかになっている。
血清メラトニンの変化は、閉経後骨粗鬆症の発症における骨代謝マーカーと有意に相関していた。
この結果は、骨量および骨強度の評価におけるメラトニンの潜在的な役割を示している。
さらにメラトニンの骨芽細胞に対するポジティブな作用と、動物実験における閉経後骨粗鬆症の治療効果も明らかにされた。
また、メラトニンは血清中の破骨細胞と骨芽細胞の相対比率を低下させ、骨バランスを改善することがわかった。
メラトニンの経口投与により、血清中のメラトニン濃度が上昇し、骨量が改善される可能性がある。
リンクの研究は、メラトニンの骨代謝改善メカニズムを解明し、骨粗鬆症治療へのメラトニンの応用することを目的としたもの。
結果
血清メラトニンは骨量に関係し、血清メラトニン値の測定は骨粗鬆症の診断法として期待されている。
メラトニンは骨形成を促進し、破骨細胞形成を抑制することにより骨リモデリングに直接影響を与える。
メラトニンは骨組織の生体リズムを調節し、骨形成作用に有利に働く。
メラトニンは、酸化ストレスや炎症によって骨芽細胞に引き起こされる損傷を減衰させ、活性酸素や炎症性因子から骨溶解を防ぐ。
メラトニンは腸内細菌叢を改善、微生物叢の構成をリモデル、物質吸収を調節、代謝バランスの維持に関与し、そのすべてが骨構造の健康にとって有益である。
メラトニンは閉経後骨粗鬆症の診断、予防、治療において重要な役割を果たすと結論。
The role of melatonin in the development of postmenopausal osteoporosis
・血清メラトニンレベルも骨形成マーカーと密接な関係を示す。
メラトニン分泌の乱れによって媒介される概日リズムの不均衡は、閉経後女性の骨粗鬆症性骨折リスクを増加させる。血清メラトニン測定は、閉経後骨粗鬆症のリスクを予測するための新しい診断基準となる可能性がある。
・メラトニン投与は、骨密度増加や肥満度改善にプラスの影響を与える一方、経口エストロゲンは閉経後女性の夜間のメラトニン放出を抑制する可能性がある。
メラトニンの治療効果は、エストロゲン濃度の改善よりも骨への直接作用とエストロゲン欠乏後の病状改善が主なものだった。
・メラトニンは直接的に骨形成を促進し、破骨細胞形成を抑制する。Wnt/β-catenin経路およびPPARγ経路を介してBMSCsの骨形成への分化を制御するが、脂肪形成は制御しない。
動物実験では、メラトニンは卵巣摘出マウスの骨量を顕著に改善した。
・メラトニンは閉経後女性の骨組織の微小環境を改善する。卵巣で合成されるエストロゲンは骨芽細胞と破骨細胞の間でOPGとRANKL発現に介在し、骨形成と骨吸収のバランスを保っている。
エストロゲン欠乏はOPG/RANKLの比率を低下させ、破骨細胞の増殖と分化を促進する。
・エストロゲン欠乏は、概日リズムを変化させる。
概日リズムの乱れは、骨代謝のアンバランスをもたらす酸化的・炎症的ダメージを媒介する。
メラトニンはCLOCKやBMAL1を調節することで概日リズムを修正し、抗酸化酵素の活性を高めて活性酸素生成を抑えることで酸化ストレスを防ぎ、骨組織の免疫細胞からの炎症性因子の分泌を抑えることで炎症を抑制する。
・メラトニンは腸内生態系を改造してCaや骨形成物質の吸収を促進し、骨基質の形成や骨構造の強度向上に寄与する。
骨代謝に対するこれらのポジティブな効果に基づき、メラトニンは骨粗鬆症の治療に有効な代替薬となり得る。
メラトニンは副作用が少ないため、骨粗鬆症治療において大きな可能性を秘めている。
メラトニンの利点を合理的に利用することで、閉経後骨粗鬆症の診断、予防、治療の進化が期待されまる。