肥満に関する研究では、脂肪組織および肥満度と血清ビタミンDの間に逆相関があることが研究で観察されるなど、ビタミンD(VitD)の抗肥満作用に関するメタアナリシスによる証拠は増えている。
体脂肪率の高い被験者は、VitD欠乏の程度が3倍高いことを報告するデータもある。
体内の脂肪濃度が高いとより多くのVitDが脂肪組織に貯蔵されることになり、また、VitD不足の状態では、脂肪生成が亢進するというメカニズムも提唱されている。
VitDは、カルシウムやリンの恒常性維持、骨代謝に関与するだけでなく、1型コラーゲンの産生、筋肉機能、細胞分化、インスリン分泌、免疫系の調節に重要な役割を担っている。
肥満(によるVitD欠乏)が様々な疾患と関連するのもうなずけるだろう。
リンクのレビューは、VitDと肥満の関連性を説明を提供するために国際的データベースであるPubMed, Scopus, Embase, Web of Science, Google Scholarを2022年3月まで系統的に検索。
VitD補給のBW、BMI、WC、脂肪量への影響を調べたすべてのメタ分析を対象とした。
14のメタアナリシスの結果、VitD補給は対照群と比較して体格指数(BMI)および体重(BW)を減少させることが明らかになった。
ウエスト周囲系(WC)と脂肪量に対するビタミンD効果はそれほど大きくなかった。
VitD補給は、BMIやWCなどの肥満指標を有意に改善すると結論。
・VitD補給がBWとBMIの減少に有効であるという説を支持する一方、脂肪量とWCに関しては有意な関連は観察されなかった。介入期間16週間以上、投与量5,000IU以上、平均年齢50歳以上、研究対象(肥満、NAFLD、糖尿病)。男女ともBMIはより改善されることが示された。
・肥満者のビタミンD濃度が低い理由
1)肥満者は屋外での活動を避けるため、健康な人と比べて日光に当たる機会が少ない。
2)肥満者は1, 25(OH) D濃度が高いため、25 (OH) D濃度が低下する。
3)VitDは脂肪組織内に取り込まれる。
4)脂肪量の体積希釈により25(OH)D濃度が低下する。
・VitD欠乏は直接的に脂肪生成を上昇させ、間接的には炎症、酸化ストレス、代謝、前脂肪細胞から脂肪細胞への分化、遺伝子制御を調節することで肥満リスクに影響する。
・VDDは副甲状腺ホルモン(PTH)濃度を高め、脂肪細胞組織へのカルシウム侵入を増加させてさらに脂肪生成を高める。
・肥満は全身性低悪性度慢性炎症の状態と認識されている。全身性低悪性度慢性炎症の状況下では、脂肪細胞は炎症性サイトカイン、ホルモン、急性期反応物質を分泌している。
・過体重および肥満の被験者、NAFLDおよび糖尿病患者、50歳以上の男女における介入期間16週間以下でのビタミンD補充は、BMI低下により顕著な影響を与えることが確認された。
ビタミンDは過体重および/または肥満の管理における補完的治療として投与される可能性がある。