低質な食事は精神疾患の潜在的危険因子として認識されている。
過去の研究では、赤身肉や加工肉、精製穀物の消費、食事パターン分析、あるいは飽和脂肪や砂糖の摂取などの多量栄養素含有量とうつ病との関係と対象とした調査がほとんどだったが、近年の研究によって、食品加工の程度が精神障害における食事の質の指標として関与していることが明らかになっている。
リンクの研究は、現代のエビデンスを統合してメタ分析し、超加工食品の消費と精神障害との関連を明らかにすることを目的としたもの。
結果、超加工食品の摂取の多さは、抑うつ症状および不安症状のオッズの増加と関連していた。
さらに、超加工食品の摂取が多いほどうつ病リスクが上昇することが示された。
超加工食品の摂取と有害な精神衛生との間に双方向の関連性が存在することが示唆された。
Ultra-Processed Food Consumption and Mental Health: A Systematic Review and Meta-Analysis of Observational Studies
・超加工食品の消費と精神障害パラメータとの関連を報告した385,541人の参加者の系統的レビューとメタ分析。
横断研究を含む一連のメタ分析の結果、超加工食品の摂取が多いほど抑うつ症状および不安症状のオッズの上昇と関連していた。
超加工食品の摂取量が多いことは、その後の抑うつ的転帰のリスク上昇と関連していた。
・メタアナリシス対象外の研究のナラティブシンセシスでは、超加工食品の摂取は、うつ病、不安、トラウマ、ストレス、および依存症関連パラメータとポジティブかつ断面的に関連していることが示された。
・これらの知見は、果物、野菜、全粒粉、魚、オリーブオイル、低脂肪乳製品の摂取量が多く、超加工食品の摂取量が少ない地中海式ダイエットや「抗炎症」ダイエットなどの健康的な食事パターンが、うつなどの精神障害のリスク低減と関連していることを示す広範なエビデンスを基礎としている。
・超加工食品の消費は有害な精神衛生と双方向に関連しているようであった。
・多くの超加工食品は高エネルギー、精製デンプン、砂糖、ナトリウム、飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸の供給源である。
超加工食品には、野菜、果物、豆類、全粒穀物、脂肪分の多い魚、赤身の肉、ナッツや種などの非超加工食品に含まれる様々な繊維、ポリフェノール、オメガ3脂肪酸、必須ビタミン、ミネラルが一般的に含まれていない。
これらの栄養不足プロフィールは、炎症、酸化ストレス、腸内マイクロバイオームなどの多くの相互作用経路を通じて、うつ病の有病率、発症率、重症度に関与していることが示唆されている。
・超加工食品に含まれる複数の非栄養成分は、精神障害に関連する経路の調節に関与していることが示唆されている。限られたデータではあるが、人工甘味料(アスパルテーム、サッカリン)およびグルタミン酸ナトリウム(MSG)の摂取量が増えると、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸に加えて、ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニンといった気分障害に関係する神経伝達物質の合成および放出の調節障害に関与する可能性があることが示唆されている。
・抗菌剤として使用されている乳化剤カルボキシメチルセルロースおよびポリソルベート80が、超加工食品と精神疾患との関連に関与している可能性が示唆された。これらの化合物は、腸内細菌叢の組成(多様性の減少)と機能(短鎖脂肪酸と遊離アミノ酸の減少)を変化させ、関連する炎症反応を促進する可能性がある。
・酸化チタンナノ粒子は食品の着色料として広く使用されているが、ラットの血漿および大脳皮質における炎症性サイトカインであるインターロイキン-6の高濃度と関連した神経炎症に関連することが分かっている。
炎症は精神疾患の有病率、発症率、治療効果に影響を与える。
・最近のレビューでは、プラスチックの飲食物容器やパッケージの製造に使用される化合物であるビスフェノールAへの周産期における暴露が、ストレス感受性および内分泌系を混乱させ、後年の不安および抑うつ状態につながる可能性が示唆されている。
・うつ病など精神疾患は肥満度の高さと双方向の関係を共有している。超加工食品は、脂肪率への影響を介して間接的にうつ病と関連している可能性がある。
これには、超加工食品に潜在する以下のような要因が含まれる。
(1) 超加工食品は非超加工食品に比べて相対的に高いエネルギー密度を持つ。
(2) その感覚的な特性により、過剰消費とそれに続く過剰なエネルギー摂取を助長する。
(3) 腸と脳のシグナル伝達または風味と栄養素のフィードバックループを変化させる。
・慢性および急性の制御不能なストレスは感情的摂食やコンフォートフードと呼ばれる現象でHPA軸を調節し、複数の食欲関連ホルモン(ノルアドレナリン、コルチゾール)および視床下部神経ペプチド(コルチコトロピン放出因子)に影響を及ぼす可能性がある。HPA軸の過活動は、超加工食品などの高食味・高エネルギー食品への嗜好性を高め、その過剰摂取によって食行動を変化させる可能性がある。
・COVID-19パンデミックなど、自分ではコントロールできない出来事に基づくストレス関連の不安を軽減しようと超加工食品に手を出す可能性が増加。
その結果、パンデミック中の精神疾患の増加につながった可能性。