本日のブログは食行動(時間帯)と糖尿病の関連性についてまとめてみたい。
カロリー摂取を短時間に集約する時間制限食がメタボリックヘルスを改善することは過去の研究で実証されていることから、食事タイミングも注目も集めている。
概日システムは24時間の間に様々な行動、生理、分子変化をリズミカルに支配し、膵臓β細胞を含む重要な代謝器官の周辺時計や環境と同期し代謝の恒常性を維持している。
例えば、概日リズムは耐糖能に影響を及ぼし、耐糖能は朝が夕方より高い。これは身体活動や食事などの行動とは無関係であることが判明している。この耐糖能の概日パターンは、膵臓の概日時計によるインスリン分泌制御と、腸の概日時計による腸のグルコース吸収への影響によって生じる。
最適な代謝のためには、これらの体内サーカディアン時計、睡眠・覚醒・摂食パターン、およびこれらのリズムと行動が互いに影響を与え合うホルモンの間の同期が必要とする仮説もある。
概日時計の同調に代謝的に関連するタイミングシグナルの1つが食事で肝臓、腸、筋肉といった末梢時計の重要な同調因子と考えられる。
現代社会では、生活様式の多様化と夜間のスマホなど光へ曝露が長いことなどが原因で、摂食行動リズムが変化する可能性がある。
食事タイミングを誤ると概日時計の非同期化、いわゆる「サーカディアンディスラプション」または「サーカディアンミスアライメント」が起こり、代謝機能障害につながる可能性がある。
総カロリー摂取量や食事の質を変えることなく、すべてのカロリー摂取を一定の短い食事時間に集約する時間制限食、または間欠的断食は、体重、ウエスト周囲径、血圧に有意な改善をもたらす結果が出ている。
また、降圧剤および脂質低下剤による薬理学的管理と10時間の時間制限食の組み合わせは、メタボリックシンドローム患者の心血管指標に有益な効果をもたらすことがわかり、食事タイミングの介入が薬物と相乗的に作用しうることが示唆されている。
リンクの研究は、米国の大規模な全国コホートにおいて食事タイミングと食事時間がそれぞれ独立してメタボリックヘルスと関連するかどうかを検証したもの。
データ(n =7619)は、調査、健康診断、食事リコールなどを含む米国の全国代表的な調査であるNational Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)の4サイクル(2005~2012年)のもの。
平均食事時間は12.0時間、平均開始時刻は8時21分だった。
食事開始時刻の早さは、空腹時血糖値および推定インスリン抵抗性の低下と有意に関連したが、食事間隔の長さは関連しなかった。
食事開始時刻が1時間遅くなるごとに、グルコース値は約0.6%、HOMA-IRは3%高くなった。
食事開始時刻の早さはより好ましい代謝指標と関連しており、食事タイミングが代謝に影響を及ぼす重要な要素であることを示している。
・食事開始時刻が早いほど、食事間隔時間や他の共変量とは独立して、空腹時血糖値の低下やインスリン抵抗性と有意に関連した。これは糖尿病患者を除外しても同様だった。
・アメリカの成人では食事間隔が長くなる不規則な食事パターンが観察されている。
同様にこの研究の参加者の大多数は10〜13時間の食事時間帯を持っており、現代の食事間隔の拡大と一致している。
・昼食のタイミングを早くすること(13:00)と遅くすること(16:30)の影響を1週間にわたって検証したところ、昼食時間を早くした方が耐糖能と空腹時炭水化物代謝が大きいことが分かった。
ま朝食抜きは、昼食と夕食時のインスリン反応低下と食後高血糖の上昇と関連していた。
これらの関連性の基礎となるメカニズムには、おそらく概日リズムが関与している。
インスリン感受性には概日リズムがあり、インスリン感受性は午前中に最も高くなる。
さらに、代謝に関与する主要なホルモンやタンパク質の発現は、活動期(すなわち覚醒期)の最初の5時間に最も高く、これには副腎皮質ホルモン、レプチン、アディポネクチン、PPAR-γのレベルが含まれる。したがって、早い時間の食事はインスリン感受性の向上、これらのホルモンやタンパク質のレベルと一致し、共に最適な代謝機能を促進するのに最適と考えられる。
・食物摂取タイミングは概日リズムの同調に対して強力な刺激となるため、不適切なタイミング、すなわち1日の遅い時間に食事をすると代謝プロセスのずれを引き起こす可能性がある。
・食事開始時間が遅いほどカロリー摂取量が多く、炭水化物、糖質、脂質の摂取量も多いことがわかった。カロリー摂取量を調整すると、食事開始時間が遅いほど健康的な栄養素の摂取量が少なく、砂糖と飽和脂肪酸が多く、タンパク質と食物繊維が少ないことと関連した。
糖質で特にグリセミック指数が高いものはインスリン作用に関連することから、遅い食事開始時刻と高空腹時血糖値および高いインスリン抵抗性の間に観察された関連性の基礎となるメカニズムのひとつは食事の質である可能性がある。