我が国では好酸球性食道炎(EoE)は指定難病であり、新生児期~乳児期の患者は1990年台末から急激に増加傾向にある。
EoEは食道の慢性炎症性疾患で、乳児では嘔吐、逆流、成長障害、年長児では胸やけ、嚥下困難、腹痛など症状は多岐に渡る。
幼児~成人におけるEoEでは嚥下障害のために日常生活が障害され、長期経過例では食道狭窄を起こし観血的な治療が必要となるケースもある。
好酸球性食道炎の根本的な原因はまだ不明だが、食物やアレルゲンに対する過剰な免疫反応が原因と考えられている。
EoEと他のアレルギーやアトピー性疾患との間には強い関連性があることが研究により示されている。
EoE患者の多くが様々な食物アレルゲンに敏感であることはアレルギー疾患の機序が背景にあることを示している。
現在様々な研究でEoEや好酸球性胃腸炎(EGE)治療におけるプロバイオティクスの肯定的な効果が報告されており、免疫疾患の通常治療と並行したプロバイオティクスの摂取が症状の改善に有効な治療戦略になる可能性がある。
リンクの研究は、プロバイオティクスがEoE患者の症状改善に有効な役割を果たす可能性について検討したもの。
好酸球性食道炎患児30名を対象とした2群並行二重盲検プラセボ対照臨床試験。
生後6ヶ月から15歳までの小児である。
両群とも同じ治療(除去食、ステロイド外用剤、プロトンポンプ阻害剤)を受けました。
15名の患者にはシンバイオティクス(キディラクト)を投薬し、他の15名にはプラセボを投与した。
治療前と8週間後の両群の症状の重症度と頻度を、有効なスコアリングツールに基づくチェックリストで評価。
結果
プロバイオティクス摂取群では胸痛と食欲不振の重症度スコアが有意に低下し、この群で介入後に吐き気と食欲不振スコアが有意に低下したことから、プロバイオティクスはEoE患者の補助治療として使用できると結論。
The Effectiveness of Synbiotic on the Improvement of Clinical Symptoms in Children with Eosinophilic Esophagitis
・腸内細菌叢の障害(ディスバイオーシス)は、アレルギー疾患リスク上昇と関連することが分かっている。
・プロバイオティクスを処方すると腸内細菌叢に大きな変化が起こり、サイトカイン分泌や腸管IgA反応の増加が調節される。プロバイオティクスは酪酸産生の増加による炎症の減少、IL-10/IFN-γ、Treg/TGF-βなどのサイトカイン比率の増加による耐性の誘導、血清好酸球レベルの低下などでアレルギー性疾患の症状改善に寄与している。
・2016年のEoEマウスモデル研究では、ラクトコッカスラクチスNCC 2287の補充は、食道および気管支肺胞の好酸球を有意に減少させることが判明。
この研究は特定のプロバイオティクスが好酸球性食道炎に影響を与えることを示した最初の動物モデルでの研究で、食道炎を持つヒトの治療への応用が示唆された。
・プロバイオティクスの摂取がアトピー性皮膚炎だけでなく、好酸球性胃腸炎の症状の改善にも有効であることが別の研究でも示されている。
また、別の米国の研究ではプロバイオティクス使用後にアレルギー性直腸炎の症状が改善することが示されている。
さらに、4週間のシンバイオティクス使用を観察した研究では、アレルギー性胃腸炎(好酸球性胃腸炎、アレルギー性IBSを含む)の症状改善が示された。
これらの研究結果は、プロバイオティクス使用後の臨床症状の改善に関する今回の研究結果と一致している。
・乳児期後期のプロバイオティクス投与は、プラセボ群と比較して湿疹の発生率が有意に低いことを示す研究もある。
・2019年に行われたメタアナリシスでは、産前産後の両期間におけるプロバイオティクス摂取が乳幼児のアトピー性皮膚炎の発症率を低下させることが示された。妊娠中にプロバイオティクス摂取を開始し、乳児の生後6カ月まで継続することが、アトピー性皮膚炎の予防に有益である可能性が示唆されている。
・今回、EoE症例群のプロバイオティクス摂取群では、摂取後に症状の重症度スコアが有意に減少した。
介入後、胸痛の重症度スコアは症例群と対照群で有意な差があった。
また、介入後の患者の症状の総スコアの平均値は、対照群、症例群ともに有意に減少した。
プロバイオティクスは安価で手に入り、非侵襲性、非発癌性、非病原性のため安全に使用できる。
好酸球性食道炎でお困りの方は使用を検討する価値があるだろう。
好酸球性食道炎・胃腸炎以外の免疫疾患の方も試す価値があると思う。
特に関節(腸-椎間板軸)や皮膚(腸-皮膚軸)に症状が出ている方