出だしから注目を集めたパリ五輪が終わりました。
みなさんはどの競技が印象的でしたか?
私は男子バスケ決勝以外はリアルタイムで見ておらず、これは見といたほうがいいという印象的なシーンがあったらぜひ教えてください。
さて、今回のブログは、閉経後女性の心血管系疾患リスクに関するデータです。
多くの人にとってさほど面白い内容ではないと思いますが、個人的に今まで蓄積してきたデータを振り返って考えるときにいろいろと再確認できるデータだったため、メモ程度に書き出すことにしました。「裏のテーマ」に気づくと栄養学もますます面白くなってきますね。
心血管疾患(CVD)は、閉経移行期のホルモン動態など生理的に内在する要因によって女性における死因の主な疾患となっている。
閉経はエストロゲンレベルの急低下と卵胞刺激ホルモンおよびテストステロンレベルの上昇によって心代謝の変化が現れることから、女性の人生において重要イベントである。エストロゲンは脂質代謝やグルコース代謝といった複数の代謝経路を制御し、内皮細胞、血管平滑筋細胞、線維芽細胞に対する血管拡張作用により血圧を調節するという点で、心臓の保護的役割を果たしている。
したがって、閉経後女性は脂質異常症、インスリン抵抗性、内臓脂肪蓄積や肥満傾向、血管構造や内皮機能の有害な変化といった有害な代謝的変化を伴う体組成の変化を経験する。
この事実は、メタボリックシンドローム、非アルコール性脂肪肝、CVDといった様々な病態のリスクを伴う。
また、並行して炎症性バイオマーカーの増加や抗炎症性アディポカインの減少が起こり、活性酸素種(ROS)産生が増加することから閉経後女性の心代謝性疾患リスク(R-CMBs)を悪化させる。
閉経に伴う上記の合併症リスクを軽減するためにホルモン補充療法(HRT)等の薬理療法が開発されてきたが、最近の研究ではそれらの治療法の使用と癌やアルツハイマーなど他の病態の有病率の増加との間に直接的な相関関係があることが示されている。
さらに、HRTは全ての女性に心臓保護効果をもたらすわけではなく、実際には健康な閉経後高齢女性において、脳卒中や静脈血栓症のリスクを増加させる可能性があることも示されている。
したがって、閉経後女性のR-CMBリスクを副作用なく減少させる新しい治療法や戦略の開発が急務である。
副作用がないという意味で、果物や野菜は抗酸化作用、抗炎症作用、血管拡張作用、免疫反応調節作用を持つ二次代謝産物である(ポリ)フェノール(PP)などの生理活性化合物を多く含んでいることから注目に値する。
リンクの研究は、(ポリ)フェノールに富む食品(PPリッチ食品)を2ヶ月間毎日摂取することが、閉経後女性の主要心代謝リスクバイオマーカーの調節に及ぼす影響を評価するために食事試験を実施したもの。
【結果】
閉経後女性にPPリッチ食を2ヵ月間毎日摂取させたところ、血圧(SBPとDBP)、脂質プロファイル(トリグリセリド、VLDLとTyG、HLAPとVAI指数)、酸化ストレスバイオマーカー(TBAR)、内皮機能バイオマーカー(sICAM-1とsVCAM-1)、抗炎症バイオマーカー(アディポネクチン)にわずかな改善が認められた。
この改善はTBARsにおいてのみ統計的に有意だった。
しかし、(ポリ)フェノールの心臓保護効果の大きさは個人差に大きく依存した。
ベースライン時の参加者の特徴
・閉経後女性の年齢は56.16歳だった。
・ベースライン時の測定により、WHO欧州地域肥満報告書の分類に従ったBMI(平均値29.06kg/m2)およびW/H比(平均値0.89)により、ほとんどの参加者が過体重(64%)または肥満(36%)だった。参加者の体脂肪率も、過体重(30.20%)から肥満(44.40%)の範囲だった。
・血圧測定では、参加者のほとんどが正常血圧であ、平均SBP値は129mmHg、平均DBP値は83.50mmHgだった。
・糖代謝の測定値は、平均空腹時グルコース値92.72mg/dL、平均空腹時インスリン値9.73μUI/mL、平均HOMA-IR指数値2.14と基準レベル内にあった。
・総コレステロールとLDL-Cの平均値はそれぞれ232.04mg/dLと145.04mg/dLと高値だった。
・心血管系の有害事象リスクは中程度で、平均AIP値は0.13だった。
・参加者のほとんどが地中海食に高いアドヒアランスを示しており、Med-Scoreの平均値は9.27で、質的な観点から健康的な食習慣を示していた。(ポリ)フェノール摂取量は、スペイン人の平均摂取量である1360mg/人・日よりもわずかに多かった。
食事は平均1900kcal/日に近く、そのうち42.72%が炭水化物、19.33%がタンパク質、37.69%が脂質だった。参加者の食事は炭水化物よりタンパク質と脂質の摂取が多いという特徴が観察され、脂肪の摂取量過多のためにR-CMBリスクの増加につながる可能性がある。
PPリッチ食の2ヵ月間摂取は血圧(SBPとDBP)、脂質プロファイル、酸化ストレスバイオマーカー、内皮機能バイオマーカー、抗炎症バイオマーカーにわずかながら影響を与えるようだというデータでした。しかし、食品の組み合わせや摂取方法によってはもう少し違った結果になっていたかもしれないなという感想。
栄養素の能力を最大限引き出すにはただ摂取するだけでは不十分なのかもしれませんね。
そのあたりも含め、心血管疾患リスクを減らすためのより具体的な栄養戦略をお探しの方は、当院の栄養マニュアルのご利用を是非ご検討ください。
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