様々な文献で乳がん罹患率が上昇しているという文言をよく見るが、職業柄おおいにうなずける。
実際に毎年乳がんのご相談が増えており、先日もご家族が乳がんに罹患された方からご相談があったばかり。
医師や科学者たちが行う治療法、治療戦略の効果をブーストするアプローチはないか常にアンテナを張り、患者さんに提案するのも我々カイロプラクターの役割。
今回のブログは、乳がん患者は治療により骨減少症リスクが高くなり、欠乏によってさらに悪化する可能性があることから近年注目されているビタミンDについての欧州のデータをまとめてみたい。
ビタミンD欠乏症は多くの女性で観察される。
血清25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)値がそれぞれ30ng/mL未満、20ng/mL未満、10ng/mL未満で、軽度、中等度、重度ビタミンD欠乏症に区別される。
ビタミンDは骨代謝に重要な役割を果たしており、骨折や骨量減少など骨格系の好ましくない転帰と関連している。また、ビタミンD欠乏は死亡率の増加と関連している。
骨代謝は乳がん患者における腫瘍学的治療の影響を受ける。
全乳癌患者のうち70〜80%はホルモン受容体陽性であり、内分泌療法が必要となる。ホルモン受容体陽性乳癌患者に対するアロマターゼ阻害剤による内分泌療法は骨粗鬆症を引き起こすことが知られている。
エストロゲンは破骨細胞を介する骨吸収を抑制し、骨芽細胞を介して骨形成を促進するが、アロマターゼ酵素が阻害されるとエストロゲンレベルが低下するため骨の再生と強化が減少する。
ビタミンD欠乏は骨密度をさらに悪化させるので、腫瘍治療の前、治療中、治療後にビタミンD欠乏を治療することは極めて重要である。
ビタミンD血清レベル(25(OH)D)の基準範囲は30-100ng/mLである。
また、乳癌患者におけるアントラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤による化学療法は6ヵ月以内の骨密度の悪化と、10年後の骨粗鬆症性骨折リスクの上昇と関連することもわかっている。
さらに、パクリタキセル化学療法を受けた患者では、多発性神経炎に罹患する頻度が高かったことから、ビタミンD欠乏が治療に関連した副作用に及ぼす影響も示されている。
リンクの研究は、乳がん診断後1年間、腫瘍学的治療(化学療法、放射線療法、内分泌療法、Her2標的療法など)中にビタミンD濃度がどのように変化したか、またビタミンD補充や生活習慣因子がこれらの変化にどのように寄与したかについて調査したもの。
【結果】
治療前、患者の68.5%がビタミンD欠乏症(<30ng/mL)であり、4.6%が重度の欠乏症(<10ng/mL)だった。
ベースラインの25(OH)D値中央値は24ng/mL(範囲:4.8〜64.7ng/mL)だった。
試験を通じて、ビタミンD値の中央値は48ng/mL(範囲:22.0~76.7ng/mL)に上昇した。診断前に16.7%がビタミンD補充を受けており、97.8%が年間を通してビタミンD補充を受けていた。
週当たりの投与量の中央値は20,000IUであった。
95%の患者が正常範囲に達するには、少なくとも3回の四半期評価が必要だった。
多重GEE分析により、25(OH)D値と補充量、季節、年齢、VLDL、マグネシウム値、内分泌療法との関連が同定された。
【結論】
腫瘍治療中でも25(OH)D値を上昇させ、正常に保つことは可能。
ビタミンD欠乏症を予防するために、腫瘍学的治療前、治療中、治療後の25(OH)D値をモニターすべき。定期的な検査と、必要であれば推奨される25(OH)Dレベルを維持するための適切な代替療法が必要。
評価の季節、生活習慣要因(栄養など)、年齢、腫瘍治療はビタミンD値に影響を与えるが、25(OH)D値に最も大きな影響を与えるのはビタミンDの補充である。
Course of Vitamin D Levels in Newly Diagnosed Non-Metastatic Breast Cancer Patients over One Year with Quarterly Controls and Substitution
・化学療法や内分泌療法などの腫瘍学的治療は骨代謝の問題を悪化させる。 乳癌患者にとって十分なビタミンD濃度を確保することは、骨粗鬆症の予防と骨の健康のために極めて重要であることから、日常的な管理はもちろん、腫瘍学的治療中はビタミンDを適切に補充する必要がある。
特にアロマターゼ阻害剤や卵巣機能抑制剤による内分泌療法中は、国内外の腫瘍学ガイドラインで推奨されている。
・内分泌学会のガイドラインにより25(OH)D値の連続モニタリングが、ビタミンD代替療法を行う患者に推奨されている。欧州の専門家コンセンサスによれば、ビタミンD代替療法を行う患者において十分なビタミンD濃度を確保し、高カルシウム血症を予防するためには、少なくとも代替療法開始6〜12週間に1回のモニタリングを行うべきである。
・このデータでは、試験の間、特定の患者において十分な血清25(OH)D濃度を確保するためには追加の測定が必要であることが明らかになった。患者の95%以上が25(OH)D血清レベルの正常範囲に達する/とどまるまで、少なくとも3ヵ月ごとに3回のコントロールが必要であることがわかった。
・投与量に関しては、試験で25(OH)Dレベルを正常範囲に上げるには中央値で20,000IU/週のビタミンDが必要だった。患者が1年を通して20,000IU/週のビタミンDを補給すれば、25(OH)D値はベースライン値にかかわらず中央値で20ng/mL上昇することが示された。
20,000IU/週は、内分泌学会の臨床診療ガイドラインの推奨する範囲内。同ガイドラインでは、ビタミンD欠乏症(20ng/mL未満)の患者に対して、週1回50,000IUのビタミンD2またはD3を少なくとも8週間投与し、その後週1回10,500〜14,000IUのビタミンD補充を継続することを推奨している。吸収不良やビタミンD代謝に影響を及ぼす薬剤の服用など、ビタミンD欠乏の危険因子を有する患者では必要量を2~3倍に増やすことができる。
・このデータの試験では、推奨される正常範囲(30-100ng/mL)を達成するのにより少ない量(2000IU/週)または多い量(60,000IU週)のビタミンD補充を必要とした患者もいた。
・25(OH)D値には、日光浴、栄養状態、BMI、年齢、ビタミンD受容体などの生活習慣および遺伝的因子が関与している。このことは、”一律 “のアプローチは効果がなく、定期的なモニタリングが必要であることを示している。
・ビタミンDの主な供給源は、日光に皮膚をさらすことである。そのため、25(OH)Dレベルは冬季に最も低くなった。
・過去の研究で、高齢者でビタミンD欠乏症の割合が高いことが示されている。加齢による皮膚でのビタミンD合成の低下だけでなく、入院率の増加、不動化、腎不全の割合の増加、様々な薬剤の摂取がビタミンD代謝に影響を及ぼしている可能性がある。
・ビタミンDは脂溶性ビタミンであることから、肥満成人(BMI>30kg/m2)は、ビタミンDが脂肪組織に貯蔵されてビタミンD欠乏リスクが高い可能性がある。
乳がん治療中の方は、予後の骨代謝リスク低減のためにもぜひビタミンd値の管理を念頭においていただけたらと思います。
当院には、癌治療中の栄養学的アプローチに関するデータが蓄積しております。
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