忘年会シーズン。
コロナのおかげで無理やり飲みに出ずに済んでほっとしている人、逆に寂しい想いをしている人、関係なくゴリゴリ攻めてる人、十人十色でいろんなドラマが夜な夜な繰り広げられていることでしょうが、今回のブログはアルコール摂取と疾病および死亡リスクとの関連性について。
なんとなくお酒は体に悪いというイメージが定着しているものの実際には、確たる証拠が存在せず、論争的が続いている問題(一気飲みしたらとかそういう極端な話じゃなくて)。
過去に行われた膨大な数の疫学研究では、アルコールと心血管疾患または全死亡にはJ字型の相関があることが一貫して示されている一方で、軽度あるいは中等度の飲酒はHDLコレステロールの増加、血小板凝集の抑制、抗細動作用などの心血管健康上の利点と関連づけられている。
アルコール消費の研究では単に消費されたアルコール量を評価するだけでなく、飲み物の種類や消費のパターンなどさまざまな側面が含まれる。
様々な疾病に対してお酒の消費パターンが強い修飾因子として作用すること可能性があることから、食事パターンと栄養素を別々に研究することが重要になってきているのと同様に、アルコール消費についても同じ方法で評価されるべきという意見がある。
健康的な食事パターンの代表に地中海食パターンがある。
地中海食では、食事と同時にワインを低-中程度の消費量で1週間を通して嗜み、暴飲暴食を避けることが特徴となっている。
アルコールは、地中海食の遵守と死亡率低下との関連に最も貢献した食事パターンの構成要素の一つでもある。
一方で、地中海食パターンにおけるアルコール摂取が死亡率に及ぼす重要性に関するこれらのデータにもかかわらず、地中海式アルコール飲酒パターン(Mediterranean Alcohol Drinking Pattern:MADP)の効果を評価した研究はほとんどない。
リンクの研究は、アルコール消費に関するより正確なデータを提供することを目的としたもの。
Seguimiento Universidad de Navarra(SUN)コホート参加者2226名(ベースライン時50歳以上の男性および55歳以上の女性)を追跡調査。
結果
MADP遵守度が最も高いグループで最も高い死亡リスク減少率が観察された。
中等度の遵守群と禁忌群も低MADP遵守群より低い死亡リスクを示した。
結論
50歳以上の年齢層への公衆衛生メッセージ。
アルコールを飲む人は、MADPスコアを高く守っていれば全死因死亡リスクを48%減らすことができる。
・暴飲暴食を避ける
・1週間を通じて食事時に適度な赤ワインを摂取する
・地中海式飲酒パターン(MADP)の遵守は全死亡リスク低下と関連していた。
・ポイントは、ワイン、できれば赤ワインを消費すること。赤ワインに多く含まれるポリフェノールは抗酸化および抗炎症作用を有している。ポリフェノールの抗酸化作用は、全死亡率、心血管系疾患、がんに対する保護効果を説明する。
食事と一緒にワインを摂取することで、全死亡率、口腔・消化器系がん、糖尿病、肝硬変リスクが減少するという研究結果もある。
・MADPのポイントには、アルコール摂取を1週間にわたって分散させ、たまの高摂取を避けることがある。このアルコール摂取の分散方法は死亡リスクの低下と関連しており、酸化的および心毒性メカニズムを誘発する血中の大量アルコール濃度を回避する意味でも生物学的に理にかなっている。
・現在利用可能なエビデンスでは、若年層は飲酒すると暴飲暴食といった不健康な飲酒パターンをとる傾向があるため禁酒が推奨されているが、50歳以上の年齢層についてはより議論の余地があり、完全な禁酒または節酒を推奨する強力な証拠はない。
・がん死亡のみを対象とした解析では、統計的に有意な62%の死亡リスク減少が観察された。
この結果は、アルコールががんに有害な影響を及ぼすというこれまでの証拠と矛盾しているように思われるかもしれない。
この結果は地中海式飲酒パターンを遵守していない場合との比較から生じた結果であり、1週間にわたる食事の際の適度なワイン消費は、大量消費および突発的消費に比べて癌死亡リスクを減少させることを反映している。
また、MADPをより忠実に守っている参加者は、より健康的なライフスタイルも忠実に守っており、したがってがん死亡リスクもより低いという説明も可能。
・統計的に有意ではないが、非喫煙者の分析では62%の死亡リスク減少を示し、アルコールとタバコの相互作用に関する利用可能な証拠とも一致している。