近年、子癇前症(PE)の有病率は上昇傾向で、世界的に大きな健康上の懸念となっている。
PEは母体および新生児死亡の主な原因で、子宮内胎児発育不全、未熟児、妊娠関連ICU、成長後の心疾患との関連も報告されている。
最近のエビデンスによると、妊娠前の肥満度(BMI)と妊娠時体重増加(GWG)は、妊娠における有害合併症の危険因子(修正可能)であることが示唆されている。
WHOは、女性の過体重と肥満の有病率が過去40年間で劇的に増加したと推定し、現在世界では女性の40%が太り過ぎで、15%が肥満と言われている。
GWGは健康な妊娠における一部であり胎児の健全な発育に必要だが、過剰なGWGは酸化ストレスの増加、全身的な血管の炎症反応、血管内皮細胞の損傷を通じてPEと関連する。
過去の研究により、妊娠前過体重や肥満がPEの高リスクと関連することが報告されている。
またいくつかの研究では、過剰なGWGがPEリスク上昇と関連することが示唆されている。
一方で、GWGとPEリスクの関連性については、研究デザインの相違など、依然として議論が残っている。
リンクの研究は、母親の妊娠前の体格指数(BMI)および妊娠時体重増加(GWG)が子癇前症およびその表現型と関連するかどうかを評価することを目的としたもの。
単胎妊娠の女性32,531人が対象。
妊娠前BMIが正常な女性と比較して、過体重および肥満の女性はPEリスクが高く、一方で低体重の女性はPEリスクが低いことが示された。
適切なGWGを得た女性と比較すると、不十分なGWGおよび過剰なGWGの妊婦はPEのリスクが増加した。
観察されたリスク上昇は、軽症、重症、早期および後期発症のPEで概ね同様で、リスク低下は重症および後期発症のPEで同様だった。
結論
妊娠前の過体重(肥満を含む)およびGWG異常(不十分なGWGおよび過剰なGWGを含む)は、独立してPE高リスクと相関し、潜在リスクはPE表現型によって異なる可能性があることを強く示唆。
妊娠前の過体重や肥満は、妊娠前期間にコントロールしておく必要がある。
妊娠中のGWGの程度を適切にコントロールすることも必要。
・妊娠前の過体重または肥満の女性は、正常体重の女性と比較してPEリスクの上昇と有意な相関がある一方、低体重の女性はPEリスクが低いことが分かった。
異なる国や集団の先行研究でも、妊娠前の過体重や肥満はPEリスクの上昇と関連することが報告されており今回の結果と一致する。
・妊娠前の過体重または肥満は、妊娠前の正常体重の人と比較して、MPE、SPE、EOPE、LOPEを含むPE表現型のリスク増加にも有意に関連した一方で、妊娠前の低体重はMPE、SPE、LOPEのリスク減少に関連することが示唆された。
・不十分なGWGと過剰なGWGを持つ妊婦は、適度なGWGを持つ妊婦と比較してPEおよびSPE、EOPE、LOPEを含むほとんどのPE表現型のリスクが有意に高かった。既存の研究でも、GWGが過剰な女性はPEの発症と有意に関連することが示唆されており今回の知見と一致する。
・妊娠前の過体重/肥満グループは、妊娠中の不十分な体重増加や過剰な体重増加にかかわらず、妊娠前に正常体重だった女性や妊娠前低体重の女性と比較してPEの発生率が高いことが判明。
・妊娠前の母親のBMIおよびGWGとPEリスクおよびその表現型との関連に関与する潜在的なメカニズムは不明なまま。過去の研究では、酸化ストレスと全身性炎症反応がPE発症因子の一つであることが示唆されている。特定の炎症性サイトカインやプロテアーゼは、全身的な血管炎症反応を刺激し、血管内皮細胞の損傷を加速させ、最終的にPEの臨床症状を引き起こす可能性がある。
・健康な非妊娠ボランティアにおける研究では、体重増加は皮下脂肪組織の沈着よりもむしろ内臓脂肪組織の沈着によって現れることが示されており、これは高血圧のリスク上昇に寄与する。血圧に変化がない場合でも内皮機能が損なわれる。したがって、脂肪の分布も高血圧のリスクに対して重要。妊娠前に低体重だった女性は、肥満女性よりも新たに獲得した内臓脂肪組織の割合が高いため、正常体重または過体重・肥満の女性よりも妊娠前は低体重のGWG過剰女性の方がPEリスクが高いことが分かった。
一方、妊娠前に低体重であった妊婦では、妊娠前の標準体重の女性や過体重・肥満の女性と比較して、不十分なGWGがPEの強い危険因子であることも分かった。
妊娠前〜妊娠中まで一貫して適切な体重・体脂肪率管理が重要であることを示唆している。
妊娠から産後まで一貫した体重、体質管理は当院にご相談ください。