久しぶりにカイロプラクティックに関連するデータをまとめてみます。
テーマは閉経移行期〜閉経後女性に対する徒手療法の有効性について。
更年期は女性が老化に近づく生理的変化の時期であり、閉経移行期期はエストロゲンレベルと性腺ホルモン濃度の低下による様々な変化を引き起こす。
当然、筋骨格系(MSK)にも直接的な影響が及び、中でもMSK疼痛は頻繁に報告される症状の一つ。世界的にMSK疼痛は公衆衛生問題の一つに挙がっており、中年期の女性人口の半数以上が罹患しているといわれる。
閉経後に焦点をあてた疫学調査では、MSK疼痛有病率は閉経前から更年期、そして閉経後へと直線的に増加することが明らかになっている。女性は閉経前と比較して、閉経前後で関節の痛みやこわばりを感じる可能性が約二倍高くなる。これに関連して、骨粗鬆症は更年期女性に多く、50歳以上の女性の3人に1人近くが罹患している。
また、変形性関節症の女性における生涯リスクは47%で、関節痛は少なくとも50%の女性の更年期症状である。
解決策として、更年期障害に対する当院で行われてるような徒手療法が更年期症状の緩和に有効であることが複数の研究で示されており、更年期女性に最も広く用いられ、好まれている治療法の一つである。
徒手療法は、関節可動性と機能を改善するために身体の神経ー筋骨格系構造のモビライゼーションとマニピュレーションを用いる。また、徒手療法はMSK疼痛治療において非常に有益な治療アプローチであり、薬物療法と比較して費用対効果が高く、有害事象のリスクが低いことが指摘されている。
過去に腰痛、頚部痛、変形性膝関節症、肩の原発性癒着性関節包炎(四十肩)、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)などの筋骨格系障害の治療において徒手療法が有効であるというエビデンスが報告されている。
リンクのレビューは、MSK疼痛を有する更年期女性に対する徒手療法の有効性を検証したもの。
閉経後女性の筋骨格系疼痛に対する徒手療法の効果を検討した無作為化比較試験(RCT)を対象に、Cochrane Central Register of Controlled Clinical Trials等、9つデータサイトの創刊から24年2月までに発表された論文の包括的検索を行った。
【結果】
計5件のRCTが組み入れられ(総サンプル数=245)、母指CM関節症、胸椎後弯症、慢性頚部・背部痛、変形性膝関節症、胸鎖関節痛が対象の研究結果を総合すると、更年期女性の筋骨格系の疼痛が改善したことが示された。
【結論】
システマティックレビューに含まれる研究の大部分は、プラセボ手技、筋力トレーニング、その他の運動と比較して、徒手療法は更年期女性の筋骨格疼痛の軽減に有効だった。
しかし、サンプルサイズが小さくバイアスリスクが高い研究から得られた結果であり、この結果は慎重に解釈されるべきである。
The Efficacy of Manual Therapy on Musculoskeletal Pain in Menopause: A Systematic Review
・レビューに含まれた5件の研究のうち、4件が介入群における疼痛の軽減を報告した。
・更年期は女性のQOLに影響を与える様々な不定愁訴を伴う時期であり、中でもMSK疼痛は際立っている。その意味で、このレビューに含まれる母子CM関節症に対する有効性を検証した質の高いRCTは注目に値する。
・運動ベースの介入に関する最近のシステマティックレビューとメタアナリシスでは、当院のように徒手療法と運動を組み合わせた治療が疼痛軽減と機能的能力向上の短期的改善に最も効果的であることが示唆されている。
・エストロゲンレベルの変化は腰痛や変形性関節症の痛みと関連している。更年期症状が重ければ重いほど関連痛が生じる可能性が高くなる。
・様々な集団において、徒手療法は慢性非特異的頚部痛の軽減に低~中程度のエビデンスを示し、急性頚部痛の軽減において有意な効果を示し、急性腰痛の疼痛レベルの緩やかな改善、亜急性腰痛症の改善を示している。現在、徒手療法が腰痛や頚部痛に対する多くの臨床実践ガイドラインで支持されていることは特筆に値する。
・骨粗鬆症は更年期女性に多くみられる疾患で、MSK疼痛の潜在的原因である。
いくつかの研究では、骨粗鬆症患者の胸肋関節痛に対するマニピュレーションを含む穏やかな手技療法アプローチを推奨しており、介入群で痛みの強さが統計的に有意に減少している。
・様々な集団において、徒手療法は短期・中期的に胸椎後弯を減少させる。胸椎後弯症は、転倒、疼痛、死亡率の増加、QOLや肺機能の低下(呼吸機能の機械的低下、呼吸困難、生命維持能力の低下、強制呼気量の低下)などの影響を及ぼす。そのため、胸椎前弯の改善は臨床的に重要な目標であり、徒手療法はそれを達成するための選択肢である。
・レビューでは、様々な集団における徒手療法が変形性膝関節症治療において、痛みの軽減という短期的な利益をもたらし、費用対効果も高いことが示された。
・更年期女性に対する徒手療法が、不眠症やうつ病などの更年期症状を改善し、精神衛生を改善することが示されている。
・・・久しぶりに徒手療法に関するデータをご紹介しました。
バイアスのリスクが高い研究もあり、エビデンス強度は高くないかもしれませんが、痛みの軽減に加えて更年期症状の軽減も報告されているという点で、多くの女性の参考になれば幸いです。
今回ご紹介したデータで、挙げられた筋骨格系障害は全て当院でも対応しています。
腰痛、頚部痛、変形性膝関節症、原発性癒着性関節包炎(四十肩)、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、母指CM関節症、胸椎後弯症、慢性頚部・背部痛、変形性膝関節症、胸鎖関節痛でお困りの方はお気軽にお問い合わせください。