加糖または遊離糖の大量摂取は、肥満、2型糖尿病や心血管疾患リスクを増加させることから、
世界保険機関は加糖消費を減らし、1日あたりの総エネルギー摂取量の5%から10%を超えないようすることを推奨している。
世界保健機関などの規制機関は遊離または加糖の定義内に蜂蜜を含んでいるが、彼らの定義とは対照的に、蜂蜜が好ましい甘味料として白砂糖を上回っていたことを報告するデータもある。
様々な試験において、心代謝系に対する多くの効果が示され、体重、炎症、脂質プロファイル、および血糖コントロールの改善に寄与することがわかっている。
しかし、ヒトを対象とした体系的評価の数は少なく、花由来などのはちみつの種類や、はちみつが生か加工されているかによって異なるかどうかは未だ不明。
リンクのデータは、蜂蜜摂取が脂肪率、血糖値、脂質、血圧、非アルコール性脂肪肝疾患のマーカー、炎症マーカーに及ぼす影響を検討し、GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluation)アプローチでエビデンスの確度を評価すべく、対照試験の系統的レビューとメタアナリシスを実施したもの。
心代謝系リスク因子に対する蜂蜜の効果が評価された。
結論
蜂蜜、特にロビニア、クローバーおよび未加工の生蜂蜜は、健康的な食事パターンの中で消費された場合、空腹時血糖コントロールと総コレステロールを減少する可能性がある。
系統的レビューとメタアナリシスによって、経口蜂蜜摂取が空腹時グルコース、総コレステロール、LDL-C、空腹時トリグリセリド、ALTを減少させ、HDL-C、IL-6、TNF-αを増加させることを示した。
HDL-Cに対する蜂蜜摂取効果の信頼度は高い。
Effect of honey on cardiometabolic risk factors: a systematic review and meta-analysis
・体重がまちまちな主に健康な参加者1105人を対象とした33試験比較を含む18の対照試験で、経口蜂蜜摂取の心代謝系アウトカムへの効果を評価した。中央値40gのハチミツを中央値8週間にわたって経口摂取することで、空腹時グルコース、ALT、総コレステロール、LDL-C、空腹時トリグリセリドが有益に減少し、HDL-Cが有意に増加することが示された。
また、炎症マーカー、特にIL-6とTNF-αの有意な増加が観察された。
・クローバー蜂蜜とロビニア蜂蜜の両方が総コレステロール、LDL-C、および空腹時のトリグリセリドを減少し、空腹時グルコース値に有益な効果を示した。
・蜂蜜に関する過去の論文は、心代謝系アウトカムに対する蜂蜜の有益性を提示してきた。
中国の18000人を対象とした低悪性度全身性炎症と健康コホート研究の横断的分析では、蜂蜜を定期的に摂取している人は糖尿病予備軍のオッズが低いことが示された。
蜂蜜摂取量と糖尿病予備軍との間に用量反応関係を示し、より定期的な蜂蜜の消費は糖尿病予備軍の低有病率と関連していた。
また中程度の量の蜂蜜摂取は非アルコール性脂肪肝疾患の低有病率と関連していることが示された。
イギリスの研究(n = 665男性)は、25年間の追跡調査において蜂蜜摂取が全死亡率の低下と関連していることを証明している。
・動物実験でも多くの利点が示されている。
蜂蜜含有量の高い餌を摂取したラットは空腹時血糖値の減少を実証し、血糖アウトカムに有益な効果が確認された。動物実験で使用された蜂蜜の種類は単花の生蜂蜜だった。
・そば蜂蜜への加工の影響を調べた研究では、抗酸化力が33%減少することが実証された。
高圧加工を施したはちみつは抗酸化活性を維持するだけでなく増加させたが、熱加工を施したはちみつは抗酸化活性を維持できなかった。
・単花蜂蜜、特にクローバー蜂蜜とロビニア蜂蜜は、多花蜂蜜と比較して脂質レベルおよび空腹時グルコースに対して有益な効果を示した。
クローバー蜂蜜とロビニア蜂蜜は、他の単花蜂蜜と同じ酵素、フラボノイド、フェノール化合物を多く含むみ、おそらく異なる特性を付与する可能性がある独自の化合物を有している。
例えばニュージーランド産のマヌカハニーは特有のメチルグリオキサール化合物に起因する強力な抗菌特性を示す。
アカシア蜂蜜として販売されているロビニア蜂蜜、およびクローバー蜂蜜はどちらも高いフルクトース含有量(〜40〜44%)を有している。
ロビニア蜂蜜の高い果糖含有量は有益性を駆動している可能性があり、クローバー蜂蜜の組成分析ではLDL-C過酸化阻害剤であるフェノール化合物ピノバンクシンの存在が実証されている。
これはコレステロール値に対するクローバー蜂蜜の有益な効果を説明する。
・蜂蜜はフェノール化合物やフラボノイドを豊富に含み、総コレステロール、LDL-C、HDL-C、空腹時トリグリセリドの影響を緩和すると考えられている。
フェノール化合物は抗炎症作用や抗がん作用といった特性を有しており、前脂肪細胞のアポトーシスに関与して抗肥満作用を示すとともに、脂肪細胞における脂質蓄積を抑制する。
同様に、フラボノイドは非酵素的な脂質過酸化を抑制し、フリーラジカルと関連する疾患から保護することが示されている。
これらの化合物は、健康的な脂質プロファイルを促進し維持する役割を果たす。
・蜂蜜の摂取によりIL-6とTNF-αのレベルが上昇することが示された。
代謝異常のある人によく見られるIL-6の慢性的上昇はインスリン抵抗性と関連している可能性があると一般に考えられているが、本研究で観察された血糖値および脂質の効果はこの狭い前提とは相反するものだった。
健康な人を対象とした研究では、IL-6は全身のエネルギー代謝を改善して栄養供給に対する肝臓の効率を高め、筋肉によるブドウ糖の取り込みと利用を改善することによって正常血糖を維持する役割を果たす可能性が示されている。
・IL-6は脂質代謝を増加させて臓器への基質供給を維持することが示されている。
In vitroの研究では、蜂蜜に含まれる特定のタンパク質はToll様受容体4(TLR4)の刺激を介してTNF-αの産生をもたらし身体の自然免疫系を活性化させた。
TLR4のシグナル伝達経路は、核因子κBの活性化にもつながり、IL-6を含む炎症性サイトカインの発現につながる。したがって、蜂蜜の特定の成分は身体の免疫反応を活性化し、改善する可能性がある。