このデータの裏付けがさらに強化されれば衝撃的と言えるのではないでしょうか?
日本でも大々的に宣伝されているグルコサミン。
グルコサミンの使用が心血管系イベント(CVD)リスクをあげるかもしれない。
グルコサミンは関節軟骨系サプリとして関節痛や変形性関節症患者に広く使用されており、米国、オーストラリア、英国では成人の約5分の1が摂取していると言われる。
過去の研究では潜在的な毒性は低いとされているものの、グルコサミン使用患者では空腹時血糖値の上昇とインスリン感受性の低下が観察されている。
グルコサミンは一酸化窒素(NO)合成阻害剤として作用し、微小血管のリモデリングや内皮機能調節に影響を与え、グルコサミンが心血管疾患の潜在的危険因子となる可能性が指摘されている。
変形性関節症患者は心血管イベントリスクが高いため、変形性関節症患者におけるグルコサミン使用が心血管疾患のさらなるリスクをもたらすか否かは重要なテーマ。
リンクの研究は、2010年から2017年末までの病院、薬局、医療施設の投薬情報を網羅したデータベースに基づき、中国・北京における変形性関節症患者685,778人を対象にグルコサミン使用とCVDの関連を評価することを目的としたもの。
新たに変形性関節症と診断された患者を抽出し、グルコサミンユーザーと非グルコサミンユーザーに分け、グルコサミン使用者群をさらに服薬アドヒアランス群、部分アドヒアランス群、非アドヒアランス群に分け、観察期間中に新たに発症した心血管疾患(CVD)イベント、冠動脈性心疾患(CHD)、および脳卒中を同定。
240,419人のグルコサミン使用者と445,359人の非使用者を含む、新たに変形性関節症と診断された685,778人のうち平均年齢は56.49歳、59.35%が女性だった。
中央値6.13年の追跡期間中に、64,600件の新規CVD発症、26,530件のCHD、17,832件の脳卒中イベントが発生。
グルコサミン摂取はCVDおよびCHDと有意な関連を示したが、脳卒中とは関連がなかった。
CVDリスクが最も高かったのは、服薬アドヒアランス群、次いで部分アドヒアランス群、非アドヒアランス群で有意な用量反応関係が認められた。
この縦断的研究では、服薬アドヒランス群の変形性関節症患者のグルコサミン使用は心血管疾患の高いリスクと有意に関連していた。
グルコサミンのリスクとベネフィットを再検討する必要があることを示唆。
・グルコサミンは、服薬アドヒアランスの高い患者においてCVDおよびCHDリスク上昇と有意に関連している。
・グルコサミン使用と脳卒中に有意な関連は認められなかったが、アドヒアランスの高いグルコサミン使用者では脳卒中のリスクが53%増加すると有意に推定された。
・変形性関節症患者におけるグルコサミン使用とCVDリスクの関連を調査した研究では結果が一貫していなかった。いくつかの無作為化臨床試験は、変形性関節症患者におけるグルコサミンとCVDリスクとの間に有意な関連はないと報告しているが、サンプルサイズが不足しており追跡期間が2年以下と短いためエビデンスは不十分だった。
・一方で、別の研究では、ベースラインで糖尿病、がん、心血管疾患がなかった患者のグルコサミン使用は2型糖尿病発症率の低下と関連していることが明らかになっているが、ベースライン時が健康なため、その研究結果を変形性関節症患者の研究にあてはめることはできない。
・変形性関節症患者のグルコサミン使用におけるCVDリスク上昇は、生物学的にも妥当である。1)これまでの研究で、グルコサミンは心血管疾患の危険因子として広く認識されている空腹時血糖値の上昇、動脈硬化の促進、インスリン感受性の低下をもたらす可能性があることが示されている。
2)グルコサミンは一酸化窒素(NO)の合成を阻害する可能性がある。NOは保護的シグナル伝達分子として動脈硬化の予防に重要な役割を担っている。NOの抑制は動脈硬化を促進させる可能性がある
・グルコサミン服用者は非服用者に比べてCVDのリスクが68%増加することが分かった。
変形性関節症の治療や予防でグルコサミンを使用している方は、もう一度過去のデータを洗ってみて、納得の上で使用した方がいいかもしれない。