胃がんは世界で5番目に多いがんで、アジアで最も罹患率の高い癌の一つ。
世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究所(AICR)は胃がんリスクに関連付する特定の潜在的危険因子として、アルコールと塩蔵食品(数の子、塩辛)の摂取量が増加すると胃がんリスクが高くなると報告している。
また焼き肉やバーベキューの肉や魚、加工肉の摂取の増加、果物をほとんど食べない/全く食べないことは胃がんリスクを増加させるが、柑橘類の果物は胃がんリスクを減少させるといういくつかの証拠が示されている。
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染、塩分過多の食事、燻製や漬け物の摂取、喫煙、肥満、家族歴といったの危険因子も胃癌に関与している。
WCRF/AICRの勧告では、(様々な)がん予防のためには、脂肪、でんぷん、砂糖を多く含むファーストフードや加工食品の摂取を制限することの重要性が強調されている。
胃がんリスクにおける高脂肪食品、特に揚げ物の具体的な影響はまだ不明。
揚げる過程で食品成分や油の化学組成は重合、水素化、酸化によって変化し、アクリルアミドや複素環アミンのような潜在的に発がん性のある物質が形成される可能性がある。
過去の研究では、咽頭がん、喉頭がん、胆嚢がん、前立腺がんなどいくつかのがんにおいて揚げ物の発がん性が証明されている。
揚げ物の摂取とがんリスクとの間に正の関連を示す証拠があるにもかかわらず、揚げ物に対する需要は増加の一途であり、ファストフード店の数が顕著に増加している。
リンクの研究は、胃がんリスクに対する揚げ物摂取の影響を明らかにすることを目的とした
メタ解析(PubMed、EMBASE、Google Scholar、Cochrane Library、China National Knowledge Infrastructure (CNKI)、Korean Information Service System (KISS)、Research Information Service System (RISS))。
Cochrane RevMan 5.0。
胃がん患者(n=5739)と健常成人(対照n=70,933)における揚げ物摂取の影響を比較した18研究を解析。
結果
胃がんリスクと揚げ物摂取の間には有意な正の相関があった。
この関係は、非東アジア人と東アジア人の両方で有意だった。
このメタアナリシスは、揚げ物摂取が非アジア人およびアジア人の両者において胃がんリスク上昇と関連しているという考え方を支持している。
胃がんリスク対策として揚げ物の摂取を減少することが推奨される。
・食物と胃粘膜は直接接触するため、食事と調理法が胃がん発生に重要な役割を果たすと考えられる。
・揚げ物摂取量の多さは胃がんリスクと正の関連があり、この関連は非東アジア地域と東アジア地域の両方で統計学的に有意だった。18研究のプール結果は揚げ物摂取と胃がんリスクとの有意な正の相関を示した。
・高温で調理された食品(グリル、バーベキュー、フライなど)は大腸がんリスクと正の相関が報告されている。
・体内では代謝過程で硝酸塩が亜硝酸塩に変換されるが、亜硝酸塩は様々な癌の発生に関与している。したがって硝酸塩摂取量が多いと、がんリスクが高まる可能性がある。
調理工程は食品中の硝酸塩含有量を調節する。
硝酸塩を多く含むタンパク質の豊富な食品や、野菜を炒めたときに生成される化合物はがんリスクを高める可能性がある。
野菜の硝酸塩リスク評価を行った研究によると、生野菜の調理工程で硝酸塩含有量は減少し、特に茹でる工程で最も減少したが、野菜の炒め物は硝酸塩含有量を増加させることがわかっている。
・食品を調理する際に揚げもの油を4回以上再利用すると、消化器系がんリスクが4倍に増加する。揚げもの油の有害成分は、調理の温度や時間によって異なる影響を及ぼす。
多くの研究では、揚げ物(肉、魚、卵、ジャガイモ)の摂取量が多いと発がんリスクが有意に増加することが判明している。
・揚げ物の一つであるドーナツは、胃がんの危険因子の一つであるピロリ菌感染リスクを高めることを報告した。ピロリ菌感染、食事要因は胃癌の発症に相乗的に作用する可能性がある。
・肉類やパンなどの揚げ物は胃癌リスクを高める可能性がある。
・若年層の胃がん罹患率の増加は、高齢者に比べて揚げ物を含む高脂肪食の摂取が増加していることと関連している可能性がある。アルジェリアでの研究では、有塩バターを20年間摂取た場合、胃がんのリスクが8.2倍に上昇したと報告されている。
・長期にわたる頻繁な食事時間のずれは、ピロリ菌感染と胃炎リスクを高める。
不規則な食習慣と胃癌の関係を定量的に分析した中国の研究は、不規則な食事と早食いの両方が胃癌の独立した危険因子であることを示している。
・揚げ物摂取と胃がんリスクとの間に正の相関があるという説得力のある証拠は、非東アジア人と東アジア人の両方で観察された。
・オリーブオイルは多価不飽和脂肪酸を多く含む他の植物油に比べて発がん性成分の含有量が少ない可能性が示唆されるが、さらなる調査が必要。