メタボリックシンドローム(MS)とレニン活性は、コロナ感染プロセスと重症化リスクの観点から注目され改善を意識している方も多いと思う。
MSは2型糖尿病、脳卒中、心筋梗塞のリスクを、心血管イベントの既往歴にかかわらず増加させることは皆さんご存知のとおりで、世界的に公衆衛生問題として認識されている。
今回のブログは、緑茶が多く含むエピガロカテキンガレート(EGCG)というフラボノイドの仲間が心臓血管系のリスク低減に有効であること、メタボリックシンドロームにつながる様々な症状のメカニズムを調節することを示唆するデータ↓をざっくりとご紹介。
Epigallocatechin Gallate: A Review of Its Beneficial Properties to Prevent Metabolic Syndrome
・数々の研究でポリフェノールを含む食事がメタボリックシンドロームの予防に有益であることが報告されている。
・フラボノイドは,低密度リポタンパク(LDL)の酸化、血小板の凝集と接着、平滑筋細胞の移動と増殖を回避することで内皮機能障害を予防することができる。
・食事からのフラボノイド摂取量と心血管リスクとの関連を評価したデータによると、EGCGの摂取量は心血管疾患のリスクと逆相関することが報告されている。
・緑茶の葉は、26%の線維、15%のタンパク質、2%~7%の脂質、5%のビタミンおよびミネラル、1%~2%の色素としての二次代謝産物、30%~40%のポリフェノール、そのうち少なくとも80%がフラボノイド、3%~4%のメチルキサンチンで構成されている(条件によって変化する)。
・フラボノイドは茶葉に含まれる最も重要なポリフェノールで固形抽出物の重量の37%から56%を占めている。カテキンは、緑茶含まれる主要なフラボノイドである。
・いくつかのin vitro研究で、EGCGは他のカテキンと比較して最も高い抗酸化活性を有することが判明している。またEGCGはフリーラジカルを除去する強い能力を示している。分子構造中の電子の非局在化が抗酸化活性の一因となっている可能性がある。
・EGCGの抗酸化作用は、金属イオンをキレートする能力にも起因している。金属のホメオスタシスに対する影響は、糖尿病、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症などの慢性疾患に現れる酸化ストレスに関連している。EGCGは、鉄(Fe)、銅(Cu)、クロム(Cr)、カドミウム(Cd)などの金属をキレートすることが報告されている。
・緑茶ポリフェノール、特にEGCGの薬物動態パラメータは、げっ歯類ではよく調べられているが、ヒトではまだ不明な点がる。
・EGCGの吸収率は非常に低い(おそらく5%未満)。緑茶カテキンは、主に空腸と回腸において、上皮細胞を介した副細胞拡散により腸内に吸収される。吸収されたEGCGはフリーの状態で血漿中に大部分が含まれる。
・ラットではEGCGは妊娠中のラットの胎児や胎盤、血液脳関門を通過して脳内でも発見されている。
・Snoussiらは、高脂肪食(脂肪22%、炭水化物43%、タンパク質21%)を与えた雄のラットにEGCGの煎じ薬を毎日経口投与したところ、1週間以内に体重が減少したことを報告している。また、EGCGを投与したラットは、血中脂質(トリグリセリド50%、コレステロール25%)と血糖値(15%)の濃度が有意に低下した。
・Fioriniらは、レプチン欠乏症のマウスにおける肥満と肝脂肪症に対するEGCGの効果を研究した。85mg/kgのEGCGを5日間投与したところ、対照マウスと比較して体重増加が減少した。またEGCGを投与したマウスは、総肝脂肪量を有意に減少させ、肝臓におけるエネルギー貯蔵量を増加させた。
また、グルタチオンレベルの向上を通じて肝臓の抗酸化活性を増加させた。
・EGCGフラボノイドの抗肥満特性は、食物の消化率の低下が腸粘膜および肝臓の基質代謝に影響を与え流ことで食後の脂肪酸化が増加し、食事の脂質の組織への取り込みが減少することで説明された。
・EGCGは、膵臓のリパーゼを阻害することが報告されている。EGCGがヒトの肥満を予防するために有効な、膵リパーゼ阻害剤の開発に貢献する可能性も死示唆されている。
・EGCGは膵島の構造を維持することで耐糖能を改善し、グルコース刺激によるインスリン分泌を増加させることが報告されている。
・EGCGの有益な効果を説明する1つの仮説として、このフラボノイドによって誘発される抗炎症特性の増強があげられる。雌の非肥満糖尿病マウスに0.05%のEGCGを投与したところ、抗炎症サイトカインIL-10の有意な増加によって1型糖尿病の発症が遅延したことが報告されている。
・EGCGが抗酸化メカニズムを通じてグルコース毒性から網膜を保護することが明らかになった。
・糖尿病性腎症は糖尿病における最も深刻な合併症の一つである。糖尿病腎内ではグルコース依存性の経路が活性化され、酸化ストレスの増大、ポリオールの生成、AGE(Advanced Glycation End-products)の蓄積などが起こる。腎全摘術とストレプトゾトシン注射により糖尿病を誘発したラットを用いたモデル研究では、EGCGを50日間経口投与することで、高血糖、タンパク尿、脂質過酸化を抑制することが示されている。
・酸化ストレスの増大によって引き起こされる糖尿病性神経障害に対するEGCGの特性が調査されている。ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットにEGCGを10週間投与したところ、酸化ストレスのマーカーである8-ヒドロキシ-2′-デオキシグアノシンの増加および神経細胞の過敏性が正常化したことが報告されている。
・高脂肪食ラットを対象とした研究では、EGCGが遊離脂肪酸、空腹時インスリン、恒常性モデル評価-インスリン抵抗性指数、および精巣上体脂肪係数を有意に減少させ、グルコース注入速度を増加させたことが報告されている。さらに、この研究では、EGCGがマクロファージの含有量を減少させることで炎症を減衰させ、脂肪組織におけるインスリンシグナルを改善することが明らかになった。
・EGCGと血中リポ蛋白質レベルとの関係を調査した研究の多くで、EGCGが総血中コレステロール、LDL-コレステロールおよびトリグリセリドを減少させることができると結論づけている。
・MSとインスリン抵抗性は、高血圧との関連性が認められ内皮機能障害によって促進される。内皮機能障害では内皮依存性の血管拡張が損なわれ、動脈のコンプライアンスが低下し、炎症や血栓促進作用が増大することを特徴とする。
内皮機能障害の病態生理には複雑かつ複数のメカニズムが関与している。酸化ストレスは、血管炎症のシグナル伝達経路を増幅する可能性があり、炎症と密接に関連している。内皮機能障害はアテローム性動脈硬化症の発症において重要な初期事象であり、結果的にMSに関連する心血管疾患の出発点となっている。
・内皮機能を改善するEGCGの有益な特性が多くの研究で評価されている。ジメチルアルギニン(ADMA)のレベルを低下させ、内皮の一酸化窒素生成を促進することによって内皮機能障害を改善すると考えられる。さらに、LDLによって引き起こされたラットの内皮機能障害モデルにおいて,EGCG(10または50 mg/kg)は、ADMAの上昇を抑えて血清亜硝酸塩/硝酸塩レベルを低下させることにより,アセチルコリンに対する血管拡張反応の阻害を有意に減少させることが確認されている。
・レニンの阻害は高血圧症の治療に有益と考えられている重要な酵素である。EGCGのレニン活性に対する阻害効果を分析した研究はほとんどないが、最近のin vitroの研究では、EGCGの阻害特性が報告されており、阻害濃度50(IC50)値は44.53μMであった。他の研究では、EGCGがPI-3-キナーゼ経路を介して内皮からの一酸化窒素の産生を促進することが確認され、EGCGがメタボリックシンドロームの症状、特に高血圧の改善に関連する可能性が示唆された。
長かったのでかなり端折った・・・細かいことが気になる方はセルフでどうぞ。
レニン活性の件は初めて知ったので眼から鱗だった。
とはいえ、ECGCの予防的活性はヒトの研究では一貫して観察されていないので、メタボリックシンドロームのすべての症状を予防するためにEGCGを使用することについて結論を出すためには、さらなる臨床研究が必要とのこと。