妊娠中の未治療の高血糖は、妊娠性高血圧、巨視症、帝王切開(CS)、肩甲難産、出生時外傷、早産、LGA児、新生児低血糖など、有害な妊娠転帰の頻度と正の線形相関を持っている。
高血糖を治療することで妊娠合併症リスクは軽減される。
治療の第一歩は食事と運動を含むライフスタイルのアドバイスであることは疑いようもないだろう。
一般的な食事アドバイスは、下画像に示すように一日の食事量を均等にすること、すべての食品カテゴリーから食事を摂ることだろう。
糖代謝能および血糖コントロールのための栄養戦略はより詳細に指導されるべきなのだが・・・
2013年、WHOはこれまで各国で用いられていたものより低いグルコース基準を含むGDM診断に関する新たな勧告を行った。
それ以降、各国でその新しい基準が採用され、これまでとは異なる低いレベルの高血糖が治療目標とされた。一方で、妊娠中に異なるレベルの高血糖を治療する効果を評価できるように、薬物療法を導入するための血糖閾値を含め、食事療法を行うGDM女性に対するケアのモデルを見直す必要も議論されている。
リンクの研究は、食事療法によるGDM女性の妊娠転帰を、背景となる集団およびインスリン療法群で比較したスウェーデンの研究。
妊娠前糖尿病のない単胎妊娠(n = 1,455,580)が対象。
GDMと診断された14,242人のうち8851人が食事療法で、5391人がインスリン療法で治療を受けた。
食事療法群、インスリン治療群ともに、子癇前症、帝王切開、出生時外傷、早産のリスクが有意に増加した。
ほとんどの結果でインスリン治療群(対食事療法群)のリスクが高かったが、周産期死亡率は治療群間でもバックグラウンド集団との比較でも差がなかった。
GDMの治療としての食事療法は妊娠の転帰を正常化しなかった。
したがって、食事療法を受けたGDMの妊娠を低リスクと見なすべきではない。
食事療法およびインスリン療法を受けたGDMの周産期有害事象のリスクが高いことは、スウェーデンで一般的に用いられている管理アプローチが妊娠経過を正常化するには不十分であったことを示している。
妊娠の予後を改善するためには、個別に治療法を調整し、管理およびサーベイランスを変更することが必要と結論。
Diet-Treated Gestational Diabetes Mellitus Is an Underestimated Risk Factor for Adverse Pregnancy Outcomes: A Swedish Population-Based Cohort Study
・比較的高い診断基準によるGDMの女性では、インスリン治療か食事療法かにかかわらず、妊娠転帰の有害事象が増加することが示された。転帰は一般にインスリン治療群で悪化した。
・食事療法を行ったGDMの女性ではLGA新生児のリスクが背景集団に比べてほぼ2倍高く、インスリン療法を行ったGDMの女性ではほぼ4倍高かった。
また、両群の新生児は、同様に出生時外傷のリスクが高かった。
・マクロソミー有病率は定義に関係なくインスリン治療群で高かった。また、子癇前症、CS、分娩誘発は、食事療法群に比べインスリン治療群で有意に多かった。
・多くの女性は血糖値目標を達成できず、血糖値モニタリングの結果が目標値を上回る割合は、有害転帰の増加と相関している。
・今回の研究では、食事介入は目標とする血糖コントロールを達成するのに十分ではなかったかが、研究期間中のスクリーニング時点がほとんどの施設で妊娠28週から32週であったため治療の開始が遅すぎたかもしれない。
また、インスリン治療開始の基準や投与量の調整方法、スクリーニングやGDM診断の方法にも地域差があった。
・診断基準や治療目標が高いと、LGAのリスクは食事療法群、インスリン療法群ともに高く、無視できないことが示された。
包括的なスクリーニング戦略と低い診断基準を持つ環境では、LGAの割合はGDM全体で有意に減少し、食事療法群では背景集団と比較して正常化する可能性もある。
さらに、診断基準やグルコース目標値が低くても妊娠年齢に対して小さい赤ちゃんが生まれるリスクは増加しないようだった。
・今回の知見は、スウェーデンにおけるケアモデルは全体的なGDM管理(例えば、グルコース目標値)と共に見直しが必要であることを示唆している。