問診の流れで不妊治療の話題になることがある。
保険適応となり経済的な負担が減ったことは、家計負担が減り、少子化による国の衰退が著しい我が国に朗報であった。
しかし現実には、望むような治療効果が得られないケースも少なくないようだ。
賢明に取り組んでいる話を聞くと聞くと心苦しいが、カイロプラクターとしてできることは多くない。
当院では”できること”の一つである情報の共有はしっかり行なっていきたい。
不妊症治療における調節可能な危険因子の情報を知ることで、治療成功の確率が少しでも高くなれば幸いだ。
不妊症は、全世界で4800万組のカップルが経験していると推定され、一般に女性不妊の原因として内分泌疾患、子宮内膜症、卵管損傷、感染症、環境因子などが挙げられる。
また、女性不妊は一般的に排卵障害と関連する。
多くは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)によるものとされ、PCOSを持つ女性の80%が排卵障害を経験する。
排卵障害の病態において特に重要なのはインスリン抵抗性で、これは無排卵性不妊症と栄養を結びつける最も重要な要因。
また、酸化ストレスや慢性炎症も排卵障害のリスクを高める非常に重要な要因。
女性の月経周期中に炎症マーカーが高値になると、主に卵巣の酸化ストレスが増加し、無排卵周期のリスクが高くなると言われています。
不妊症は、全世界で4800万組のカップルが経験していると推定され、一般に女性不妊の原因として内分泌疾患、子宮内膜症、卵管損傷、感染症、環境因子などが挙げられる。
また、女性不妊は一般的に排卵障害と関連する。
多くは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)によるものとされ、PCOSを持つ女性の80%が排卵障害を経験する。
また女性不妊は、年齢、タバコの喫煙、ストレス、精神作用物質の使用、身体活動など、複数の要因に影響され、食事要因も排卵の調節に重要な役割を果たす。
食事とその栄養成分は、代謝経路、内分泌プロファイル、糖質代謝への影響を介して、女性の生殖能力と排卵に影響を与える可能性がある。
排卵に良い影響を与える食事成分としては、グリセミック指数の低い炭水化物製品、植物性タンパク質、一価不飽和および多価不飽和脂肪酸、葉酸、ビタミンD、抗酸化物質、鉄などが挙げられる。
また地中海食は、その抗炎症作用により有益と思われる。
悪影響を及ぼす成分の多くは、高グリセミック指数炭水化物、多量の動物性タンパク質、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸で、これらは酸化ストレスの増加と密接な関係がある欧米型食事モデルによく見られる。
不妊症の予防における食事や生活習慣に関連する修正可能因子の役割は現在も研究中されているが、栄養と無排卵性不妊症のリスクとの直接的な関連性を提示した研究はほとんどない。
リンクのレビューは、食事要因が排卵障害に及ぼす影響に関する最新研究をまとめ、今後の研究の可能性を示すことを目的としたもの。
The Influence of Diet on Ovulation Disorders in Women—A Narrative Review
*食生活のパターン
妊娠を希望する女性17,544人を対象に行われた研究で、食事とそれに含まれる栄養素が妊孕性と排卵障害リスク低減に顕著に影響することが明らかになった。
食事療法の順守率が最も高い五分位の女性は、最も低い五分位の女性に比べ、無排卵性不妊症のリスクが66%低いことが分かった。
その結果を元に「妊活食」と呼ばれる食事パターンが開発され、トランス脂肪酸を抑えると同時に一価不飽和脂肪酸の供給を増やし、植物性タンパク質を多く含み、高脂肪乳製品、低グリセミック指数炭水化物製品、高鉄分などを含んでいるのが特徴。
この食事パターンを順守することで、他の要因による不妊症リスクが低減することも明らかになっている。
また、PCOS女性において「妊活食」摂取による特別な利点が観察された。
この食事パターンの順守によって、PCOS女性グループ全体の生殖能力改善とともに、自然排卵の発生に関連性が見られた。
地中海食(MD)が女性の生殖能力に及ぼす有益な効果も興味深い。
伝統的な地中海食は、野菜、果物、オリーブオイル、脂肪分の多い海水魚、全粒穀物製品を多く摂取することが特徴。アルコール摂取は控えめで、赤身肉の摂取も控えめにである。
MDには、PCOS女性の排卵障害リスクと関連する炎症と酸化ストレスマーカーを低減する可能性がある。PCOS患者は非PCOS女性と比較して、グルタチオン、ビタミンC、Eの濃度が低く、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオンレダクターゼ、グルタチオン トランスフェラーゼといった抗酸化酵素の活性が有意に高いという研究結果もある。
PCOS女性における慢性低悪性度炎症は卵巣機能に影響を与え、性ホルモンの合成と放出、卵胞の成熟、排卵を妨げている可能性がある。
MDと無排卵性不妊症リスクを関連付ける研究がないため、排卵への直接的な影響は明確に確認されていないが、女性の生殖機能に有益な効果があること、「妊活食」の前提条件に似ていることから排卵にも良い影響を与えると判断されるかもしれない。
MDの特に重要な成分であるリノール酸によって産生されるプロスタグランジンは排卵の過程で重要な役割を果たし、ゴナドトロピンに対する卵巣の反応を高めるため排卵に好影響を及ぼす。
一方、欧米食パターンは全く異なる。
砂糖、菓子、甘味飲料、赤身肉、加工赤身肉、単純炭水化物に富んでいる。
さらに新鮮な果物や野菜、全粒粉の穀物、鶏肉、魚の消費量が少ないことも特徴。
高グリセミック指数食であり、さらに飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が豊富で、無排卵性不妊症のリスクを高める可能性がある。
欧米型食事パターンは、内分泌代謝や卵巣予備能に悪影響を及ぼすことで、女性の妊孕性と逆相関している。
PCOSの女性における栄養と欧米食の整合性が低いと、不妊の確率が35%低くなるとの研究結果もある。
しかし、欧米型食事と無排卵性不妊症との相関を評価する研究は行われていないため、食事が排卵障害のリスクを高めることは明確に確認されていない。
とはいえ、生殖機能の低下、インスリン抵抗性の増加、排卵障害による不妊症リスクを高める成分の割合が高く炎症を悪化させるという相関を考えると、欧米食が女性の排卵に悪影響を及ぼしていると考えることができる。
*炭水化物と低血糖値ダイエット
インスリン感受性とグルコースホメオスタシスは女性の生殖能力を決定する最も重要な要因の一つと考えられているため、生殖能力を促進する栄養モデルを考える際には低グリセミック指数(GI)炭水化物を考慮する必要がある。
高グリセミック指数および高炭水化物量が不妊および排卵障害に寄与するメカニズムは、インスリンに対する組織の感受性に影響を与えることに起因する。
インスリンはゴナドトロピンに対する卵巣卵胞の反応に関与することで、卵巣機能および排卵に直接影響を及ぼすことから、インスリンレベルが高いと卵巣ステロイドの生成異常や卵子の発育障害と関連することが明らかになっている。
さらに、高インスリン血症は高アンドロゲン血症と強い相関があり、これも排卵障害の発生に寄与し、女性の内分泌疾患を悪化させる。
高グリセミック指数で高炭水化物食と排卵障害を結びつけるもう一つのメカニズムは、低悪性度炎症。
グリセミック指数が高く食物繊維の少ない食事は、炎症と強い相関があることが示されている。
特に、果糖は強い炎症促進作用があるとされている。
高GI糖質の大量供給による食後高血糖は、活性酸素の産生による炎症と酸化ストレスの激化と関連している。炭水化物の質と量の両方が、無排卵性不妊症の発症リスクに特定の影響を及ぼすと考えられる。
NHS IIのコホート研究では、炭水化物の総消費量の五分位が最も高い女性は、消費量の五分位が最も低い女性と比較して無排卵性不妊症のリスクが78%高いことが明らかになった。
この研究結果は、7つの介入研究の系統的レビューによって確認され、低炭水化物食の使用はより高い排卵率と関連していることが明らかにされた。
炭水化物から45%のエネルギーを供給する低カロリー食と身体活動およびクエン酸クロミフェンの組み合わせにより、薬物療法および従来の食事療法と比較して、排卵率がかなり改善されたことを報告する研究もある。
この結果は、炭水化物の供給量を減らすことが、インスリン感受性への影響を介して女性の排卵誘発に有効である可能性を示唆している。
また、炭水化物の質も非常に重要な要素である。
グリセミック指数の低い製品(玄米、全粒粉パスタ、パンなど)の摂取は無排卵性不妊のリスクと逆相関し、高グリセミック指数の製品(白米、ゆでたジャガイモ、朝食シリアルなど)は排卵経過にマイナスの影響を与えることが明らかにされている。
注目されるのは食物繊維。
32歳以上の女性において、食物繊維の摂取量が10g/日増加すると、排卵障害の発症リスクが44%低下することを実証した研究もある。32歳以下の女性では観察されていない。
しかし、食物繊維の推奨量以上の摂取は、排卵障害リスク上昇と関連していることが明らかになっている。
低グリセミック指数食は、PCOS女性において特に有益であることが観察されてる。
PCOS患者群では、炭水化物製品の質が低くグリセミック指数が高いことが、排卵障害と関連していることが指摘されている。
インスリン抵抗性と高インスリン血症は、PCOS患者の排卵障害、内分泌障害、子宮内膜構造の異常、ひいては不妊につながる要因であると考えられている。
また、高インスリン血症は、PCOS女性の卵巣卵胞の発育に直接悪影響を及ぼす可能性がある。
卵胞の発育を阻害し、無排卵周期を引き起こす可能性さえある。
10件の無作為化試験のメタ分析およびレビューにより、低グリセミック指数食の使用はPCOSの女性におけるテストステロン値の低下と関連することが明らかにされた。
これは、PCOS女性グループにおける低GI食の有益な効果は、生殖能力と排卵に対する炭水化物の直接的な影響だけでなく、排卵の正常な経過を決定するホルモン調節に対する食事の影響と関連していることを示唆している。
PCOS女性37人を対象とした無作為化試験によると、低グリセミック指数食を摂取した女性の24.6%で排卵周期が発生したとする研究がある。グリセミック指数を重視しない伝統的な食事をしている女性では、7.4%しか排卵周期が確認されなかった。
両食事で観察された排卵周期の頻度の違いは、低グリセミック指数食の摂取によってアンドロゲン濃度が低下し、インスリンに対する組織の感受性が高まったことに起因すると考えられる。
また、炭水化物製品に関連する重要な要因として、食事に含まれるAGE(Advanced Glycation End Products)が女性の生殖能力や排卵に与える影響がある。
AGEは、炭水化物やタンパク質を多く含む製品を高温で揚げたり調理したりする際に、タンパク質、脂質、アミノ酸、核酸のアミノ基と還元糖のアルデヒド基が反応して生成される。
特に、加工度の高い食品、単糖類、動物性タンパク質、脂肪に富む欧米型の食生活に特徴的。
顆粒膜細胞層に蓄積されるため、卵巣機能の調節や排卵に重要な役割を果たすと考えられる。
AGE化合物を多く含む食事は、特に卵巣機能、卵胞形成、ステロイド生成を阻害し、酸化ストレスを助長してホルモンバランスを崩す可能性がある。
また、AGEは主に黄体ホルモンと卵胞刺激ホルモンの作用を阻害し、PCOS女性では排卵障害につながる。
以上のことから、インスリン感受性は排卵の正常な経過を決定する重要な要素の一つであるため、低gフリせミック指数食はその調節に重要な役割を果たすと考えられる。
炭水化物の供給を制限することも、排卵性不妊の予防に重要な役割を果たすと思われる。
したがって、排卵障害に関連する問題を抱える妊娠を希望する女性の食事は、供給される炭水化物の量と質の両方に関してバランスの取れたものであるべきだと考えられる。
*植物性タンパク質と動物性タンパク質
良質なタンパク質も「妊活食」の重要な構成要素だが、いくつかの研究ではタンパク質が不妊に悪影響を及ぼす可能性があることが示されており、それは供給源に関係している。
総タンパク質摂取量の五分位が最も高い女性は、低い女性に比べて無排卵性不妊症のリスクが41%高いことを明らかにした研究では、毎日1食分の肉を追加すると排卵障害リスクが32%増加した。
赤身肉と鶏肉は無排卵性不妊症のリスクをかなり高めることが示されたが、卵と魚のタンパク質は排卵への悪影響は認められなかった。
また、排卵のないPCOSと正常な排卵のある女性2217人を対象とした研究では、排卵障害のある女性は正常な排卵のある女性に比べ、食事に占める肉の割合が有意に高いことが特徴として示されている。
赤身の加工肉は、その摂取が多くの健康上の有害事象と関連しており、特に生殖機能に悪影響を及ぼすことが明らかになっり、排卵に対する悪影響も推測される。
動物性タンパク質の摂取量が多い女性は動物性タンパク質の摂取量が少ない女性と比較して、飽和脂肪酸の摂取量も多いことは注目に値する。さらに彼女たちは身体活動も少なかった。
動物性タンパク質の消費と排卵障害の相関を強める可能性があるため、これら2つの要因の潜在的な影響について考慮する必要がある。
植物性タンパク質に関しては、全く異なる排卵への影響が観察された。
動物性タンパク質の代わりに植物性タンパク質から5%のエネルギーを摂取すると、無排卵性不妊症のリスクが50%以上減少した。
さらに、炭水化物を植物性タンパク質に変えても排卵に良い影響を与えた。
炭水化物の代わりに植物性タンパク質をエネルギー所要量の5%摂取することで、排卵障害リスクが43%も減少した。
植物性タンパク質が生殖機能に及ぼす潜在的な効果は、動物性タンパク質と比較して、インスリン感受性が向上し、インスリンの分泌が減少することと関連している可能性がある。
乳製品も重要な蛋白源であるため排卵障害への影響は興味深い。
乳製品はガラクトースを多く含むため生殖機能に有害な影響を与えると考えられており、マウスでは排卵を乱し早発卵巣不全につながるとされている。
さらに、女性のホルモン調節に悪影響を及ぼす可能性もある。
研究によると、クリームやヨーグルトを多く摂取している女性ほど無排卵の頻度が高いことが示されている。
一方で一部の研究者は、脂肪含量に関係なく、牛乳および乳製品が女性の受胎能力にプラスの影響を与えることを確認している。
また、NHS IIのコホート研究では、乳製品の総消費量と無排卵性不妊症の間に相関はないことが示されている。
しかし、排卵への影響に関しては脂肪含量によって有意な差が観察された。
低脂肪乳製品の摂取量を毎日1食分増やすと無排卵性不妊症のリスクが11%増加する一方、消費エネルギーを増やさずに全乳を1食分追加すると排卵性不妊症のリスクが50%以上減少した。
様々な脂肪含量の乳製品が排卵に与える影響の違いは、高脂肪含量の乳製品は赤身肉と比較してエストロゲン含量が高く、IGF-1増加を低く引き起こすことに起因すると考えている。
また、高脂肪乳製品の排卵に対する有益な効果は、インスリン感受性を高めると思われるトランスパルミチン酸の存在と関連している可能性がある。
低脂肪および高脂肪乳製品の摂取と無排卵不妊との関係は、PCOS症状がない女性では、症状がある女性に比べて特に強いことが観察された。
以上のことから、無排卵性不妊症の場合、動物性タンパク質よりも植物性タンパク質の比率を高くすることが有益であると推測される。
*不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸
不妊症予防には、摂取する脂肪酸の質と量が適切であることが最も重要。
食事性脂質量が不十分でも過剰でも、生殖能力に悪影響を及ぼすと考えられる。
食事性脂質量の不足は、月経周期の異常(卵胞期の延長、続発性無月経、周期の長期化)の発生に寄与すると考えられる。
高脂肪食が女性のテストステロン合成増加を誘発し、それが排卵にも影響することを示した研究がある。
高脂肪食は視床下部-下垂体-卵巣軸の機能を乱し、内分泌障害や月経周期の乱れを引き起こすと推測され、それらも女性の排卵障害に寄与している可能性がある。
この相関は、インスリン抵抗性とインスリンによる卵巣および視床下部の過剰な刺激によるものが多い。
排卵障害に関しては、食事に含まれる脂質量ではなく、質の方がより重要であると考えられる。
PUFA(多価不飽和脂肪酸)の補給は、LHおよびFSH濃度、優勢卵胞の成熟、卵子の質、排卵誘発に影響を与え、女性の生殖機能に有益な効果をもたらすと考えられている。
オメガ3脂肪酸は、主にPPAR(ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体)受容体の調節を介して卵子の成熟と発達を調節する。
またオメガ3は、遺伝子の発現と COX-2 (シクロオキシゲナーゼ2) 活性を介して排卵を刺激する。
オメガ3の供給は、プロゲステロン濃度が高く、排卵障害のリスクが低いことと関連することが実証されている。
健康で定期的に月経のある女性のコホートにおいて、エイコサペンタエン酸と構造的に類似したドコサペンタエン酸の摂取が無排卵のリスク低減につながることを報告した研究もある。
同様の逆相関は多価不飽和オメガ3脂肪酸でも観察された。
しかし、統計的な有意差は認められなかった。
さらに、総脂肪と多価不飽和脂肪酸の摂取はテストステロン値の上昇とは無関係であったが、プロゲステロン値の上昇と関連しており、無排卵リスクの低減を促進することが分かっている。
一方で、MUFA、総多価不飽和脂肪酸、n-3PUFA、n-6PUFAの摂取は無排卵性不妊症と関連せず、特にSFA(飽和脂肪酸)とTFA(トランス脂肪酸)が排卵に悪影響を及ぼすことを報告した研究もある。
菓子類、ハードマーガリン、ファーストフードに含まれるTFAの消費と排卵障害との間に相関関係が観察された。
また、不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸に置き換えることも、排卵障害に悪影響を及ぼすとされる。
多価不飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸から得られるエネルギーの2%がTFAに変化すると、無排卵性不妊症のリスクが2倍になることが示された。
さらに、炭水化物由来のエネルギーではなく、TFAから得られるエネルギーが2%増加するごとに、女性の排卵障害リスクが73%増加する。
PCOSの女性を対象にした研究では、赤血球中のトランス脂肪酸の濃度が高いとPCOSグループの女性における排卵障害のリスクが高まることが実証されている。
不飽和脂肪酸と排卵誘発の相関関係を明確に特定するためには、この問題に関してさらに質の高い研究が必要である。
加工品やお菓子、ファストフードの食事が排卵障害リスクを高める可能性は高い。
*アルコールとカフェイン
カフェインとアルコールは、特に排卵障害のリスクを高める可能性がある。
カフェインを含むエナジードリンクの消費に関する研究では、カフェインを含む飲料を週に1本未満しか飲まない女性に比べ、少なくとも2本以上飲む女性では無排卵性不妊のリスクが47%増加することが示されている。
カフェインの大量摂取(300mg/日以上)が生殖機能に影響を与える可能性について様々な仮説が立てられているが、そのメカニズムはまだ解明されていない。
カフェイン摂取は、生殖ホルモン濃度への影響(例:エストラジオール濃度の低下)、ホルモン代謝の変化、卵巣活性などを介して排卵誘発性に影響を与える可能性がある。
一方で、お茶やコーヒーの飲用と女性の生殖機能に相関がないことを示した研究もある。
ある研究では、お茶やコーヒーのカフェイン摂取と無排卵性不妊症のリスクとの間に相関がないことが明らかになっている。
アルコールの排卵に対する影響については現在研究中であり、結果は矛盾している。
結果の違いは、ほとんどが、摂取したアルコールの種類、健康状態、その他の交絡因子によるものと思われる。
結論
明確な結果が得られていないため、カフェイン摂取が女性の排卵を妨げるとは言い切れない。
お茶やコーヒーの摂取は排卵に影響を与えないようだが、カフェインを含むエナジードリンクは女性の排卵をかなり妨害する可能性がある。
アルコールは他の不妊パラメータに悪影響を及ぼすため、妊娠を希望する女性の食事からは排除する必要がある。
*ビタミンとミネラル
ビタミンやミネラルの適切な摂取も、女性の排卵誘発性に良い影響を与える。
特にビタミンB群(B6、B12、葉酸)、抗酸化ビタミン(A、C、E)、ビタミンD、鉄に大きな役割がある。
マルチビタミンのサプリメントを週に3回以上摂取すると無排卵性不妊症リスクが低減することを示した研究がある。
この相関は、主に葉酸と関連している。
葉酸を毎日700μg摂取することで、排卵障害のリスクが40〜50%減少することが確認された。
また、18~44歳の健康な女性259人をを対象とした研究では、葉酸補給と無排卵リスクは逆相関することが示された。
葉酸摂取量の最高三分位値(270.6μg/日)の女性は、最低三分位値(100.9μg/日)の女性に比べ、無排卵になる確率が64%低かった。
葉酸を強化した穀物製品の消費に関しても同様の相関が観察され、三分位間の相関は非線形だった。
一方でこのような相関は、食品による葉酸消費に関しては観察されなかった。
これは、合成葉酸が天然葉酸に比べて消化管でより容易に吸収されるためかもしれない。
葉酸が女性の生殖機能に有益な効果を発揮するメカニズムは、酸化ストレスと炎症性サイトカイン産生への影響に関連し、これらは排卵と卵子の発達に大きな影響を及ぼすと考えられる。
葉酸が排卵の経過に影響を与えるもう一つの可能なメカニズムは、血清中の葉酸濃度が低い場合、FSH刺激に対する卵巣の反応が低くなることと関連している。
また、ホモシステイン濃度に対する影響は極めて重要。
葉酸はビタミンB6、B12とホモシステイン濃度を調節するため、女性の生殖能力にとって重要である。
ホルモン避妊薬やダイエットサプリメントを使用していない定期的に月経のある女性259人を対象としたコホート研究では、ホモシステイン濃度の高さと無排卵リスクの33%増加の間に相関関係があることが明らかになっている。葉酸とホモシステインの比率が高いと、無排卵のリスクが10%減少した。
また、酸化ストレスが無排卵性不妊症リスクを高めることが判明しており、抗酸化物質は排卵にも非常に重要である。
女性の不妊に対する抗酸化物質の作用機序としては、子宮内膜の血流改善、生殖ホルモン濃度の低下、インスリンに対する組織の感受性向上、排卵、プロスタグランジン合成、ステロイド生成への影響などが考えられる。
卵子細胞質中に高濃度で存在するビタミンCは、グラファイト卵胞の成長、排卵、黄体期に重要なコラーゲン合成に関与している。
ビタミンDも女性の生殖能力に影響する。
ビタミンD受容体が卵巣、子宮内膜、胎盤などの生殖器官の多くの組織に存在することから、女性の生殖機能の調節に関与していると考えられる。
さらに、多くの内分泌過程および生殖ホルモンのステロイド生成に影響を及ぼしている。
クエン酸クロミフェンで排卵を誘発し、ビタミンD補給を併用した186人の女性を対象とした無作為プラセボ対照臨床試験では、ビタミンDの補給は排卵率を有意に改善している。
ミネラルでは鉄が最も重要。
NHS IIのコホート研究において、非ヘム鉄や鉄剤の使用は排卵障害のリスクと逆相関していた。
この相関は卵巣にトランスフェリンが存在することに起因し、卵巣卵胞と女性配偶子の発育に影響を与える。
結論
必要な栄養素をバランスよく摂取することは、女性の生殖能力および排卵障害リスクに大きな影響を与える。
植物性タンパク質、不飽和脂肪、低グリセミック指数炭水化物の十分な供給は非常に重要。
さらに、葉酸、ビタミンD、抗酸化ビタミン、鉄をはじめとするビタミンやミネラルを適量摂取することが重要。
飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、高グリセミック指数炭水化物の供給は制限されるべき。
排卵障害女性の治療に役立つ栄養モデルを開発するために、個々の栄養素、食品、および食事全体の構造からなるより質の高い研究を行うことが必要。