現代では朝食を食べる文化はどのくらい残っているのだろう?
私が子供の頃は、どの家庭も朝食はしっかり摂っていた記憶がある。
当院にお越しになる患者さんの話を聞く限り、朝食摂取は年々ポピュラーではなくなってきている印象がある。
そもそも食事に興味がない方も増加傾向にある印象。
共働き家庭などで食生活の文化の優先度が低い環境で育ち、成人後もそのカルチャーを受け継いでいる方もいる。
さて、今回のブログは成長期の食習慣がメンタルヘルスに及ぼす影響について、データを簡単にまとめてみたい。
「Left-behind children(LBC)」は、両親の一方または共働き家庭において、出生地に取り残された18歳未満の子どものことで、比較的発展した地域よりも社会経済的に不活性な地域でより一般的とされる。
LBCにおけるメンタルヘルスの問題の発生率は、非LBCの約2.7倍であることが証明されている。
過去のレビューとメタアナリシスでは、LBCのうつ病の有病率は26.4%であると報告されている。
LBCが問題となっている中国・四川省のLBCのメンタルヘルス問題の有病率は43.4%(!)と高いことが報告されている。
LBCのメンタルヘルス状態に影響を与える要因とは一体なんだろう?
過去の研究により、食習慣は成長期のメンタルヘルスに顕著な影響を及ぼすことが実証されている。
例えば、炭酸入りソフトドリンクの摂取頻度は青少年における孤独感や不安感を感じる頻度が高くなることと関連していた。
一方、果物や野菜の消費と青少年の精神的な健康問題との間には逆相関が観察されている。
25の低・中所得国のデータを用いたプール分析では、果物と野菜の摂取は青少年におけるメンタルヘルスリスクを低下させることが示されている。
また、朝食の摂取も健康的な食習慣の不可欠な要素と考えられており、過去のメタアナリシスでは、朝食抜きはうつ病の確率と正の相関があると結論づけている。
リンクの研究は、中国人LBCの食習慣とメンタルヘルスの問題(例:うつ病、不安、不眠症)との関連を探ることを目的としたもの。
2020年5月に中国の経済的に不活性な地域で横断研究を実施。
地元の青年(3314人のLBC(男性1455人、女性1859人、12~17歳)を対象に、社会人口統計学的因子、食習慣(炭水化物,果物,野菜,タンパク質,朝食を食べる頻度),メンタルヘルス問題(不眠,うつ,不安)に関する情報を収集。
結果
LBCの食事パターンは不健康で、女子ではさらに悪い。
朝食と果物を食べる頻度が低いことは、メンタルヘルスリスクを高める2つの有意な因子として同定され、この関連は女子でより顕著であった。
食事の質の改善、特に朝食を食べる頻度と果物の摂取を改善することは、LBC、特に女子のメンタルヘルス対策において有効なアプローチとなる可能性があると結論。
Care Their Diet and Mind: Association between Eating Habits and Mental Health in Chinese Left-behind Children
・この研究は、中国人LBCの食習慣と精神的健康状態の役割を検討した最初の研究。
結果は、中国人LBCの食習慣は最適ではなく、健康的な食習慣を日常的に取り入れている割合が低いことが示された。
・朝食と果物を食べることは、メンタルヘルスの問題のリスクを有意に低くすることと関連していた。この関連は、男性よりも女性で顕著であった。
・炭水化物、果物、野菜、タンパク質、そして朝食を食べる頻度を測定した。
頻度が「日常的にある」と回答した割合は低かった。さらに、女子では男子に比べて頻度が高いと報告する割合がさらに低いことが観察された。
これは、女子は理想的な体型を維持したり体重を減らしたりするために食事量を減らす傾向があることも影響している可能性がある。精神的な問題は男子よりも女子でより深刻だった。
・朝食の摂取は、LBCにおけるメンタルヘルス問題のリスクを低くする有意な要因だった。
日常的に朝食を摂っているLBCと比較して、頻度が低いLBCは男女ともに不眠とうつ病重症度のリスクが高く、女性では不安症の重症度リスクも高かった。
日常的な朝食の摂取が、LBCのメンタルヘルスに対する保護因子となることを示唆している。
・結果は、LBCに焦点を当てていない他の研究とも一致する。
あるメタアナリシスでは、青少年における朝食抜きはうつ病の症状や不安の高いリスクと正の相関があると結論付けている。朝食を抜くことは、不眠症や起床時間の遅れ、エネルギー不足を引き起こし、さらに日中の疲労感を誘発する可能性がある。
朝食抜きは、精神衛生上の問題を伴うことが多い肥満リスクを高め、精神衛生上の問題のリスクをさらに高めるかもしれないことを示す研究もある。
・日常的な果物の摂取がメンタルヘルスリスクの低下と関連することがわかり、これは女子のみに見られた。果物の摂取がうつ病や不安のリスク低下と有意に関連するという過去の研究と一致する。
他の食習慣(すなわち、炭水化物、野菜、タンパク質)と精神的健康問題との間に有意な関連はなかった。果物の摂取頻度は健康的な食事パターンの重要なマーカーとなる可能性がある。
果物に含まれる栄養成分(例えば、ビタミン)は、ストレスが精神衛生に及ぼす有害な影響の一部を弱める可能性がある。
朝食の摂取と同様に、果物を食べることと精神的健康との関連は女性でより強かった。これは、野菜摂取とうつ病・不安症との関連が女性では有意であったが男性では有意ではなかったという多国籍研究のエビデンスと一致する。