今回のKメモは乳がんについてのデータ。
昨年から今年にかけて個人的に乳がんによって辛い思いを複数回経験したので、そんな思いをする人を少しでも減らすことに役立ちそうなデータが見つかり次第紹介していくつもりです。
乳癌(BrCa)は世界中の女性で最も一般的な悪性腫瘍の一つで、2020年には226万人が新たにBrCaと診断されており、今後も罹患率の増加が予想されている。
BrCaリスク因子には、妊娠経験なしまたは初産年齢が遅いこと、初潮が早いこと、閉経が遅いこと、不妊症、外因性ホルモンの使用、肥満、低クオリティの食習慣、飲酒、喫煙、運動不足などの環境因子がある。
BrCaの多くは散発性。家族性乳癌リスクの機序は未解明のままだが、約5~10%は特に第一度近親者のがん歴や遺伝子変異保有に関連した遺伝的素因を有すると推定されている。
BrCaサブタイプは、ホルモン受容体の発現に基づいてヒト上皮成長因子受容体陽性(HER2+)、プロゲステロン受容体陽性(PgR+)、エストロゲン受容体陽性(ER+)、トリプルネガティブ(TNBC)の4つに分類される。
個々のBrCaサブタイプでは発症リスクの違いが観察されており、異なる生物学的特徴と異なる危険因子が存在することがわかってきている。
経口避妊薬(OC)使用女性のBRCaリスクに関する研究ではリスク増加はない、または20%~30%リスクが上昇するという相反する結果が示されている。過去のメタ解析では、一般女性集団における経口避妊薬の服用は、避妊薬を使用しない人と比較してBRCaリスクを中程度に統計学的に有意に増加させることが示されている。
果たして実際のリスクはどの程度なのだろうか?
リンク研究は、乳癌リスクと経口避妊薬使用の関連について世界的な地理的地域に重点を置いて発表された観察研究を同定し、データの系統的レビューとメタ解析を行ったもの。合計198,579人の女性を含む74の研究が対象。
【結論】
OCの使用がアジアと中東においてより高いBrCaリスクと関連している可能性を示唆しているが、統計的有意な相関は複数の地域では認められなかった。
世界中のすべての女性が乳癌の家族歴にフォーカスすることがいかに重要であるかを示す。
・OC使用とBrCaリスクに関するエビデンスを、地理的地域に関連して包括的にまとめた初のメタ解析。
・世界の特定地域におけるメタ解析の累積結果は以下の通り
アフリカとアメリカ大陸、両地域ともBrCaリスクの増加は有意ではなかった。
ヨーロッパ諸国ではBrCaリスクの統計的に有意でない増加と関連していた(RR = 1.01、p =0.904)。
アジアではOC使用はBrCaリスクを統計学的に有意に増加させた(RR=1.29、p=0.014)。
中東諸国でも統計学的に有意な増加が観察された(RR=1.29、p=0.043)。
・サブグループ解析では、世界的に女性BrCa家族歴がBrCa罹患率の増加に有意な影響を及ぼすことが示された。
アフリカ(RR=3.897、p=0.000)、アメリカ大陸(RR=1.780、p=0.000)、アジア(RR=1.850、p=0.001)、ヨーロッパ(RR=2.014、p=0.001)、中東(RR=1.804、p=0.004)
・分娩数(未分娩vs分娩)の解析では、アフリカ(RR = 2.206、p = 0.003)およびヨーロッパ(RR = 1.337、p = 0.000)でBrCaリスクの増加が認められた。
・BrCaリスクの統計学的有意な増加は母乳育児(なし/あり)に関連していた。、アフリカ(RR=2.206、p=0.003)とヨーロッパ(RR=1.337、p=0.000)、中東(RR = 1.878、p = 0.007)、アメリカ大陸(RR = 1.123、p = 0.047)、アジア(RR = 1.864、p = 0.000)
・2009~20年の42研究、登録女性110,580人を対象としたメタ解析では、OC使用は一般にBrCaリスクの有意な上昇と関連していることが示されているが、今回のメタ解析は地域別に避妊薬のBrCaへの影響を検討した。
・東南アジアの女性28,776人を対象とした研究では、経口避妊薬の服用期間が5年以下の場合、BrCaリスクはOR=1.21とわずかに上昇する一方で、経口避妊薬の服用期間が5年を超える女性では、OR=2.66と乳癌リスクが高いことが明らかになった。
・歴史的にBrCa罹患率は中国や日本より米国で数倍高く、2000年以前の文献によるとOC使用と乳癌罹患率には世界地域で大きな格差があることが示されている。これは、移住状況、経済発展、健康意識のレベルによるものである。
乳がんの家族歴がある方は経口避妊薬の使用に関して情報収集することを勧めたい。