乳がん(BC)は早期発見と治療法の改善により生存率は上昇している一方で、世界で最も一般的ながんで死亡原因の第5位を占めている。
BCリスクと進行は過体重や肥満(BMI25kg/m2以上)に起因する脂肪細胞機能不全による慢性炎症を通じたシクロオキシゲナーゼ2、腫瘍壊死因子α、インターロイキン1β、アロマターゼ循環レベルの上昇と関連している。
さらに、高血圧、インスリン抵抗性、脂質異常症が加わったメタボリックシンドローム患者は、特に閉経後の女性でBC発症の相対リスクが統計的に有意に高いことが最近のメタ解析で明らかになっている。
複数の前臨床研究で、栄養失調を伴わない通常の食事摂取量の30%減のカロリー制限(CR)ががん遺伝子およびがん抑制遺伝子の制御、抗炎症作用メカニズムを通じてがん細胞の代謝を阻害する可能性を示している。
CRは化学療法(CT)や放射線療法などの通常医療の有効性の増幅とも関連していることが示されているが、BC患者におけるネオアジュバントCT(NACT)中のCRの影響に関する研究はほとんどない。
リンクの研究は、NACTを受けているBC患者に対するCRの影響を評価したもの。
CR介入の栄養学的有効性と安全性も評価している。
NACTとCRを受けた39人の患者が食事療法群として対象になり、CR群はカロリー摂取を30%減らし、化学療法施術前、施術中、施術後の3日間は50%に増加。
同じ治療法を受けた60人の対照群は、WCRFガイドラインに従ったBCに対する一般的な食事勧告に従っただけだった。
結果
CRとNACTの併用はすべての生物学的パラメータ調整後も、NACT単独と比較して腫瘍の大きさとリンパ節の状態において統計学的に有意な治療効果を示した。
人体計測および生化学的解析の両方においてこの介入の有効性および安全性が示された。
CRを遵守した患者は対照群の患者と比較して、乳房と腋窩リンパ節の両方でNACTに対する良好な反応を示した。
・CRはNACTの効果を増強する可能性があり、良好な忍容性と安全性を示すことが示唆された。具体的には、CRに従った患者は標準食に従った患者よりもpCRを達成する頻度が高いことが観察された。このプラス効果は、病変の大きさや、ER、PR、HER2、Ki67など、NACT反応に強く関連するBCパラメータで調整後も有意なままだった。
・この研究で初めて、CRが腋窩リンパ節の状態に特異的役割を持つ可能性が示された。食事療法群患者の14/23(60.8%)がNACT後にyPN0までダウンステージしたことが観察された。一方、対照群では16/45例(35.5%)がNACT後にリンパ節転移陽性ではなかった。
・乳がん(BC)はインスリン抵抗性および高インスリンレベルと相関する。
・NACTの前に24時間絶食した女性では、血液学的毒性および循環単核細胞のDNA損傷が減少したことが報告された。絶食による細胞毒性作用の低下はRASやAKTシグナル伝達経路など、健常細胞におけるいくつかのがん遺伝子の発現が減少すること、また体内のIGFBP1やケトン体濃度が上昇する一方で、循環インスリン、IGF-1、グルコース・アディポネクチン、レプチン、VEFG、PAI-1、TNFa、IL-6、MCP1が低下することによって説明できるかもしれない。
まとめ
NACT治療を受けたBC患者におけるCRは、乳房pCRおよび腋窩リンパ節転移のダウンステージという点で好ましい影響を与える可能性が示され、従来の治療法と同時に使用できる新たな補助的治療手段となる可能性がある。
BC患者に重大な副作用が発現しなかったことを考慮すると、CT中のCRの栄養学的有効性と安全性が確認され、このアプローチが他のがん治療に拡大する道も開かれた。