果糖の過剰摂取が公衆衛生上大きな懸念事項となっている。
様々な代謝性疾患や心血管疾患を引き起こす有害な作用があるのがその理由だ。
以前妊娠中の高脂質食が成人後の子孫に及ぼす影響をブログにしたが、今回は妊娠中の高フルクトース摂取が子孫の成人後の代謝に及ぼす影響に関してデータをまとめてみたい。
リンクの研究は、妊娠中に母体が20%果糖液を摂取しても、子どもたちの代謝バランスは変化しないが、高脂肪食を与えると肥満、脂肪肝、インスリン抵抗性を発現しやすくなることを示している。
フルクトースを与えた母親の子孫の食事誘発性褐色脂肪リプログラミングとグローバルエネルギー消費が損なわれることがメカニズムとして示されている。
母親の高フルクトース摂取は胎児の褐色脂肪発達を阻害し、その結果、食事誘発性熱産生が減衰。
胎児期に褐色脂肪の筋原性シグネチャーを誘導することによって成体子孫に代謝異常を引き起こすことが示唆された。
Maternal High-Fructose Intake Activates Myogenic Program in Fetal Brown Fat and Predisposes Offspring to Diet-Induced Metabolic Dysfunctions in Adulthood
・母親の高フルクトース摂取が子孫の代謝的健康に及ぼす影響とその潜在的な機序を探索した結果、母親の高フルクトース摂取は、成体子孫にHFD誘発性肥満、脂肪肝、インスリン抵抗性の素因となることを見出した。
・母体由来のフルクトースは、胎児BATの筋原性シグネチャーの誘導を介して胎児BATの発達を部分的に阻害し、結果として成体マウスにおけるHFD誘発熱産生を阻害することが明らかになった。
・フルクトースは飲食物の甘味料として広く利用されており、果糖の過剰摂取は世界的な肥満蔓延の主因と考えられている。
・高フルクトース水を摂取した母親が出産した子孫は、HFD誘発性肥満、脂肪肝、インスリン抵抗性になりやすいことがこの研究で明らかになった。
・母親の高フルクトース摂食が成体子孫に及ぼす有害な代謝的影響は、母親のHFD摂食が引き起こすものと類似していることは注目に値する。この研究は、特に妊娠期間中のフルクトースの食事摂取制御の重要性を強調するもの。
・高脂肪食を与えた高脂血症児ではBATの機能が破壊されていることが確認された。
BATの機能不全がHF子孫の肥満および代謝異常の発生に主要な役割を果たすことは間違いない。
胎児期のBATの発達は、成人期のBAT機能およびその後のエネルギー恒常性に大きな影響を与える。
・母親の栄養は、胎児BATの発達に影響を与えることによって、部分的に成人子孫の代謝的健康に影響を与えることが研究によって示された。
例えば、母親のHFDは胎児のBAT発達を阻害することによって子孫に代謝障害をもたらすが、母親のレスベラトロールまたはn-3PUFAの補給は子孫のBAT発達を高めることによってHFD誘発性肥満を改善することが示された。
・母親の高フルクトース摂取が胎児のBAT発達に悪影響を及ぼすかどうか現在まで不明だったことから、胎児のBAT形態と遺伝子発現プロファイルを詳細に検討した。
その結果、母親の高フルクトース摂食は胎児BATの脂質沈着を増加させ、de novo脂質生成経路の遺伝子の発現を上昇させた。
これは、高フルクトース飲料を母親に与えた後は胎児の血漿フルクトースレベルが有意に上昇し、フルクトース由来の中間代謝物が脂肪組織における主要な脂肪生成転写因子であるChREBPの転写活性を活性化することによるかもしれない。
最近、ChREBPの活性型アイソフォームであるChrebpbをBATにのみ過剰発現させると、脂質サイズが増大し、BATの発熱機能が損なわれることが報告されている。
・GSEAの結果は、胎児BATにおいて最も優勢に発現している経路が筋組織形成で、脂質形成ではないことを明確に示していた。
筋原性経路は通常BATの活性時に阻害され、この阻害が緩和されると必ずBATの発達遅延や後年の代謝障害を引き起こすことから、果糖による胎児BATの筋原性プログラミングの活性化はBAT機能障害や後の代謝障害の主要因となる可能性が考えられた。
要約すると、母親の高フルクトース曝露が胎児BATの筋原性シグネチャーを誘導し、胎児BAT発達とHFDによるエネルギー消費を阻害し、成人子孫におけるHFDによる肥満と代謝障害の素因となることを明らかにした。
本研究は、後世の子孫の代謝的健康を守るために、妊娠中のフルクトース食の摂取を制限することの重要性を明らかにした。