今回のブログは、コロナ感染後の回復期における栄養状態に関するデータを簡単にまとめていきたい。
栄養不良の有病率は病院の急性期医療の環境に入院した患者で23〜60%と大幅に高く、集中治療が行われるほど、患者が栄養不良になる可能性は高くなる。
栄養不良は免疫系に大きな影響を与え、免疫反応の低下、感染症の重症化のリスクの上昇をもたらす。
様々な疾患で、除脂肪体重の低さと脂肪率の高さは予後不良と密接に関連する。
急性COVID-19感染症も栄養不良を招く可能性がある。
COVID-19患者は、味覚・嗅覚の喪失、吐き気、嘔吐など、栄養摂取量の減少につながる症状を訴える。
COVID-19急性期には重度の炎症反応が観察され、栄養必要量が増加する。
病気の重症度に応じて、栄養必要量の増加は、回復を促進するために数日、数週間、または数年と変化する。しかし、そのような代謝亢進状態に対抗して、栄養不良を予防するために十分な栄養素を消費することは患者にとって難しい。
自宅療養の軽症患者も栄養失調のリスクがある。新型コロナの臨床症状、特に疲労、呼吸困難、および摂食障害(吐き気、嘔吐、においと味の変化、呼吸困難)は、十分な栄養摂取の維持が困難となる。
また、長期にわたるコロナによる胃腸症状は食事摂取に悪影響を及ぼし、急性疾患からの回復をさらに遅らせる可能性がある。
リンクの研究は、現在COVID-19が栄養状態に及ぼす影響に関するデータや研究がほとんど存在しないことから、COVID-19感染後の食事摂取量と栄養分布パターンを明らかにすることを目的としたもの。
参加者は平均53歳、63%が女性、69%が非ヒスパニック系白人、59%が肥満または病的肥満だった。
栄養失調リスクがある参加者(48%)は、胃腸障害、嗅覚障害、味覚障害、息切れなどの症状が顕著で、消費カロリーが顕著に少なかった。
ほとんどの参加者は、果物や野菜の推奨摂取量を満たしていなかった。
病気からの回復に最適なタンパク質摂取量として提案されている1.2g/kg/日を満たしているのは39%未満。
一日を通してのタンパク質の分布は偏っており、すべての食事で推奨量を満たしているのはわずか3%で、30%以上がどの食事でも基準値を満たしていなかった。
新型コロナ感染後の慢性症状を考慮し,回復を最適化するための栄養教育と患者へのサポートが必要と結論。
Impact of COVID-19 Infection and Persistent Lingering Symptoms on Patient Reported Indicators of Nutritional Risk and Malnutrition
・COVID-19感染後の食事摂取量の動向を調査した初めての研究。
(a)COVID-19感染患者は高い割合で栄養失調リスクにあった
(b)栄養失調リスクのある参加者は、下痢、腹痛、嗅覚障害、味覚障害、鼻詰まり、息切れなどの症状の数が有意に多い
(c) 消化器症状を有する参加者は消費カロリーを有意に少なくしていた
(d) 参加者の大多数は果物または野菜の消費が少なかった
(e) タンパク質の平均摂取量はRDAの0.8g/kgを上回ったものの、推奨値の1.2g/kgを満たしている参加者は40%未満
(f)30%以上の参加者が、筋タンパク合成を最適に刺激するための1食当たりのタンパク質推奨量0.4g/kg/食を満たすことがなかった。
・最近の研究で、栄養不良によりCOVID-19患者の入院が平均12日間延長されることが示されている。さらに、栄養リスクは重度のCOVID-19発症するリスクと強く関連している。
・急性期からの回復に重要な役割を果たすタンパク質の摂取について詳しく調べた。現在のタンパク質のRDAである0.8g/kg/dayは最適ではないとされている。
除脂肪体重と機能維持と回復をそれぞれ助けるために、健康な高齢者には1~1.2g/kg/日を、急性または慢性疾患のある成人には1.2~1.5g/kg/日が推奨されている。
・低タンパク食になりがちな朝食と昼食に適量のタンパク質を加えることは、長期にわたる不適当なエネルギー摂取と身体活動の減少による筋肉の異化を防ぎ、コロナからの回復を支援できる介入となる可能性がある。