頸部-舌症候群(Neck Tongue Syndrome : NTS)は片側の上頸部または後頭部の痛みと、頸部を一方に動かした際に舌の同側半分に知覚異常が起こることを特徴とする稀な疾患。
NTSの治療は主に保存療法で、症状、原因、治療の根拠については議論の余地がある。
リンクのデータは、最近の治療の方向性を踏まえて臨床におけるNTS治療の枠組みを示すことを目的としたもの。
2021年8月から過去20年に発表された症例報告を、MEDLINE、EMBASE、PEDroのデータベースで検索。
NTSの治療法は確立されていないため、検索キーワードはneck-tongue syndromeとcase reportsとした。
症例報告の品質評価には、Critical Appraisal Checklist for Case Reportsを採用。
検索された16件の研究のうち6件の症例報告を採用し、8つの基準に基づいて分析された。症状は、首の痛み、首を回旋した際の同側の舌の麻痺などがあった。6件の研究では手技療法、4件の研究では運動の介入によって、すぐに症状の緩和が見られた。
レビューされたエビデンスに基づき、NTSの診断と治療に関していくつかの合意が確認された。
明確な治療法を確立することは困難であるが、頸部-舌症候群の患者に対してカイロプラクティック療法および運動など保存的手法で行うことが推奨される、と結論。
A Systematic Review of Case Reports on the Neck-Tongue Syndrome
・このシステマティックレビューは、NTSに関する症例報告を分析するために行われ、データベースで検索された16件の研究のうち6件が採用され、分析された。分析された症例報告では、LanceとAnthonyの研究で定義されているように、片側の上頸部または後頸部の痛み、首を動かすことによる同側半分の舌の知覚異常、急な回転による首の痛みがあった。
本研究で検討していない随伴症状として、構音障害、乳様突起のしびれ、顔面神経麻痺上肢のしびれなどがあった。
・2018年のシステマティックレビューでは39名の患者が分析され、患者のほとんどが小児期または思春期に発症し、罹患者はほとんどが女性(56%)だった。発症時期が早い原因として、成長・発達過程における靭帯の弛緩や、いくつかの遺伝的要因が報告されている。
・報告されているNTSの特徴によると、NTSは合併症のないNTSと合併症のあるNTSに分けられる。非複雑性NTSは、特発性、遺伝性、外傷などが関係しており、複雑性NTSは、基礎疾患のある患者に現れることが報告されている。
このため鑑別診断が非常に重要で、関連する疾患としては頸動脈のなんらかの異常、椎骨脳底動脈循環不全(VBI)、一過性脳虚血発作、片頭痛、靭帯機能低下、キアリ奇形などが挙げられる。
・NTSに関する他の研究では、変形性頚椎症の症例や、小脳くも膜嚢胞の症例があった。
・NTSの管理には非外科的方法が一般的だが、NTSの外科的管理に関する研究では隆起した環軸関節によるC2神経への圧迫を解消することで症状が緩和されることが確認された。
5つの症例報告では、手技療法、運動、頸椎カラーが有効であることがわかった。
・特発性NTSと外傷後NTSの鑑別診断は、付随する症状から行う。
治療法として頸椎カラーの使用や薬の服用が考えられるが、手技療法や運動が介入として適切であると思われる。
しかし、不安定性が疑われるタイプには脊椎マニピュレーション療法の利点はない。
・幼少期や思春期の症例では、斜角筋の先天的な異常、胸鎖乳突筋による圧迫のケースがある。
神経学的病理や構造的不安定性による筋肉や靭帯の神経筋制御の発達がない場合には、手技療法によって症状が改善される。したがって、脊椎マニピュレーション療法、手技療法、運動療法、神経筋再教育などの介入が保存的治療法として有用であることが示唆される。