慢性肝疾患(CLD)は世界的に大きな健康問題となっている。
CLDの主な病因はアルコール関連肝疾患(ALD)、B型およびC型慢性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)。
上記の疾患では肝実質の破壊と再生が繰り返され、肝線維症を経て肝硬変に至る。
様々な研究によると、コーヒーの摂取は肝硬変や肝細胞癌などCLDに対する予防効果をもたらすことが示唆されている。
下のリンクの研究は、今まで判然としなかった異なるコーヒーの種類(したがって、成分)の影響を含めたコーヒー消費とCLDの転帰との関連を調べたもの。
すべての種類のコーヒー(カフェインレスを含む)がCLDの転帰に対して保護効果を示す証拠が得られたと結論。
All coffee types decrease the risk of adverse clinical outcomes in chronic liver disease: a UK Biobank study
・この研究では、約50万人の参加者を対象にコーヒー摂取とCLDの発症、CLDまたは脂肪沈着の発症、肝細胞がんの発症、およびCLDによる死亡との関連を調査しまた。このうち78%の参加者は、コーヒーを定期的に飲んでいた(中央値で1日2杯の摂取)。コーヒーを飲まない人に比べて、コーヒーを飲む人(すべての種類と量を含む)はCLD発症、CLDまたは脂肪沈着発症、CLDによる死亡のリスクをそれぞれ21、20、49%減少させた。最大の予防効果は、1日3~4杯程度で見られた。カフェインレスコーヒー、インスタントコーヒー、挽いたコーヒー(エスプレッソを含む)を飲む人はCLDの発症、CLDまたは脂肪症の発症、CLDによる死亡、さらにはHCCの発症のリスクが低く、挽いたコーヒー(エスプレッソを含む)の効果が最も大きかった。
・コーヒーの保護効果は、ALD、NAFLD、慢性ウイルス性肝炎など、異なるCLDの病因で観察されている。
・フランスで行われた小規模な研究では、エスプレッソではなくフィルターで挽いたコーヒーがNAFLDを発症した肥満女性の線維化リスクの低下と関連していることがわかった。フィンランドと日本ではインスタントコーヒーが最もよく飲まれており、これらの国ではCLDの転帰との逆相関が報告されている。
・今回の研究では、カフェインレスコーヒーの摂取はすべての種類のコーヒーを合わせた場合と同等のCLD発症リスクおよびCLDまたは脂肪症発症リスクの減少と関連し、CLDによる死亡リスクの減少はより大きかった(49%に対して63%)。
・カフェインレスコーヒーの保護効果が観察されたことは、CLDの発症や進行を予防するためのコーヒーベースの介入策を開発する上で非常に重要である。カフェイン不耐性があると、コーヒーの摂取量が増えない可能性があるため、カフェインレスのコーヒーが好ましいと考えられる。
・用量反応メタアナリシスでは1日5杯程度までは保護効果があり、それ以降は不確実性が増すと報告されている。
・CLDの転帰に対するコーヒーの保護効果には、生物学的な妥当性がある。カフェインはA2aA受容体の非選択的アンタゴニストであり、A2aA受容体の活性化は、線維化の主要なメディエーターである肝星状細胞によるコラーゲンの産生を刺激する。しかし本研究および過去の研究では、カフェインレスのコーヒーにも予防効果が認められた。コーヒーに含まれる別の有効成分としては,動物実験で肝線維症を予防するクロロゲン酸,カフエオール,カフェストールなどが考えられる。カフエオールとカフェストールは挽いたコーヒーに最も高い濃度で含まれており、これが最も保護的であった。組成の異なる様々なコーヒーの保護効果を考えると、1つ以上の有効成分が関与する複雑な関係があるのかもしれない。