加圧トレーニングの最大の特徴は、バンドによって血流を制限することで「低酸素性刺激」を生み出すことにあります。
この低酸素刺激が認知機能を向上させることがわかってきました。
低酸素刺激によって成長ホルモンやIGF-Ⅰ、血管内皮細胞増殖因子など脳の神経生理作用にポジティブに働くホルモンを通常のレジスタンストレーニングよりも高いレベルで放出されます。
特にIGF-Ⅰはシナプス機能や認知過程で重要な役割を果たす物質です。
成長ホルモンも同様に認知機能の維持に重要な役割を果たしており、成長ホルモンレベルの低下と認知症の関連が指摘されています。
また血管内皮細胞増殖因子レベルの低下もアルツハイマーなど認知機能にネガティブに働くことが指摘されています。
低負荷のトレーニングでこれら三つの因子を高レベルで放出することができる加圧トレーニングは30代以降認知機能が徐々に低下する世代(特に高齢者)にとって非常に有益なトレーニング方法と言えるでしょう。
また、短期記憶や実行機能に影響を及ぼす血中乳酸濃度も加圧トレーニングを行ったのち高くなります。これはモノカルボン酸トランスポーターによって乳酸が血液脳関門を通過し、酸素と結合することで認知機能の燃料として活用されるためです。さらに、乳酸は脳由来神経栄養因子にも関与しているという報告もあります。
加えて、加圧によって生み出される低酸素状態によって増大する因子に低酸素誘導因子(HIF-1α)があります。HIF-1αには神経保護作用があり、IGF-1や血管内皮細胞増殖因子のような神経栄養性作用も担っている重要な因子です。
脳の機能的な部分では、通常のトレーニングに比べ加圧トレーニングを行ったほうが脳の皮質部分が活性化し、皮質運動野で高レベルの酸化ヘモグロビンが観察されています。これらも認知機能の改善にポジティブに働きます。
今後超高齢化社会を迎えて認知症の問題が増加する中で、加圧トレーニングが再度注目されるのではないかと思います。
しかし加圧ベルトを巻いてやみくもにトレーニングしても効果はのほどは・・・?ではないでしょうか。
やはり名前の通りトレーニングですので、
・負荷の選択
・rep数
・セット数
・セット間インターバル
・種目間インターバル
・種目数
・伸張性刺激、収縮性刺激
・可動域
・フォーム
・トレーニング頻度
など基本的なトレーニングの知識が必要。
一般的なレジスタンストレーニングを理解していなくては最大効率でトレーニングを行うことは難しいのではないかと思います。