様々な「ストレス」に晒されることが当たり前な世の中になってしまった。
将来不安、人種差別、仕事の緊張、社会的支援の欠如、家庭内暴力 etc …
こういったストレス要因に対する生理的反応は、ヒトのホメオスタシスを維持することを目的としているが、脅威が個人の対応能力を圧倒すると心身に悪影響が生じる。
ストレスは急性ストレスと慢性ストレスに分けらる。
急性ストレスは短時間で、多くの場合「反応」が成功する。逆に慢性ストレスは長期間持続し、多くの場合脅威や要求が解決されずらい。
慢性的にストレスに晒されると身体に累積的な影響を及ぼし、ストレス系が慢性的に活性化すると食事関連の内臓脂肪に対する脆弱性が高まって除脂肪体重が減少し、インスリン抵抗性が誘発される。
制御不能なストレスは、メランコリックなうつ病、睡眠障害、生活の質の低下につながる。
周産期は、女性にとって肉体的・精神的要求の高まりに直面するストレスフルな周期である。
特にうつ病に関連する精神的要求は、母親と乳児の必須機能に影響を及ぼす可能性がある。妊娠中のストレスは栄養不良、妊婦健診の遅れ、医療勧告の遵守、アルコールやタバコの使用など、出生に悪影響を及ぼす行動や健康習慣と関連する。
慢性的ストレスが胎児の発育制限や低出生体重に関連することが過去の研究で示されており
、ストレスと出生時の転帰不良は関連することがわかっている。
子宮内発育制限と低出生体重児は、新生児や乳児の呼吸器系、神経系、消化器系、免疫関連の問題罹患率および神経発達障害の主な原因として指摘されている。
周産期の健康に対する慢性的ストレスの役割をより深く理解するためには、その特徴を効果的に調査・測定することが重要だろう。
リンクのメタ解析は、母親への慢性的ストレスが正期産児の出生体重に及ぼす影響を明らかにすることを目的としたもの。
107件の研究を、ロジスティック分析(N=22,342)と線形回帰分析(N=7431)の2種類の分析を適用。
結果
慢性ストレスは低出生体重児の統計的に有意なリスクと関連することが示された。
慢性ストレススコアが高い妊娠は低出生体重児と関連し、妊娠中のストレスホルモンとHPA軸のカスケード、ストレスを受けた女性の特徴である低体重の進行、早産がこの関係の重要要因の可能性があった。
Chronic Stress in Pregnancy Is Associated with Low Birth Weight: A Meta-Analysis
・ストレスが出生時体重に及ぼす影響は、遺伝的要素や個人固有のストレス反応やライフコースに左右されるが、慢性的ストレス因子は低出生体重児(出生時の体重が2500g未満)の乳児の強固な予測因子である。
・低出生体重児のかなりの割合が早産児であることが示された。心理社会的ストレスと低出生体重児の関係は、エネルギー摂取量と消費量の変動に関連している可能性がある。例えば、夫やパートナーなどの支援なしに家庭を切り盛りしている妊婦は栄養補給が不十分で仕事量も多くなり、母体や胎児の体重増加が減速する可能性がある。
・うつ病と慢性的緊張は、低出生体重児のより強い予測因子のようだ。ストレスや苦痛は胎児の発育に悪影響を及ぼすグルココルチコイド放出増加を引き起こす母親のHPA軸活性の上昇につながる。グルココルチコイドは胎児組織の増殖と分化に関与し、成長を抑制する。
・母体のストレスホルモンは胎盤通過および胎盤ホルモンのストレス誘発性放出によって胎児に移行し、胎児循環に入る可能性がある。母体のストレスはカテコールアミン放出につながり、子宮灌流を低下させて胎児に送られる基質の量を制限する可能性がある。カテコールアミンに長期間さらされることは胎児の発育低下の一因となる可能性がある。
・妊娠中のストレスは、食欲、食事回数パターン、体重増加のタイミングに影響を及ぼす可能性があり、これらはすべて胎児の成長に重要な影響を及ぼす。
・ストレスは妊娠中の内因性コルチゾール濃度を上昇させる可能性があり、これも胎児の成長を阻害する可能性がある。胎盤酵素である11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型(11β-HSD-2)は、母体のコルチゾールの約80~90%を不活性化する。
・母体に対する急性ストレス状況下では、胎児が母体から放出されたコルチゾールにさらされる機会が多くなることで胎盤バリアが心理社会的ストレスに圧倒され、胎児が母体血漿コルチゾールの不釣り合いに高い変動にさらされる可能性がある。
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