心血管疾患(CVD)と脳卒中、がんは世界的に主要な死因であり、食生活の悪化が最大の危険因子のひとつとなっている。
WHOは成人の食物繊維摂取量を1日25g以上になるよう推奨しているが、我が国を含む多くの国では食物繊維摂取量は依然として低い(米国18.3g/日、英国14.8g/日、フランス16.9g/日、日本15.0g/日)。
発展途上国では脂質摂取量が増加し、全粒穀物や食物繊維の摂取量が減少するという大きな栄養シフトが起こっている。
食物繊維が肥満、糖尿病、高血圧、CVD、がんなどの慢性疾患リスクを低下させる可能性を示すエビデンスが蓄積されているが、食物繊維が死亡率に及ぼす影響を検討した先行研究では結果は一貫していない。92,924人の日本人を対象とした研究では、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方の摂取は全死亡リスクの低下と関連していたと報告された一方、いくつかの観察研究は、水溶性または不溶性食物繊維の摂取と全死因死亡率との間に有意な関連は認められないとするなど結果は一致しない。
れていない。
リンクの研究は、食物繊維の総摂取量、野菜摂取量、果物摂取量、穀類摂取量、水溶性食物繊維摂取量、不溶性食物繊維摂取量と全死因、心血管疾患(CVD)、がん死亡リスクとの関連を検討するために、前向きコホート研究の系統的レビューとメタ解析を行い、用量反応関係を定量的に評価したもの。
結果
食物繊維の全死因死亡率、CVD死亡率、がん死亡率のRRは、それぞれ0.90、0.87、0.91だった。
全死因死亡率とCVD死亡率は果物、野菜、穀類、水溶性食物繊維の摂取と、がん死亡率は穀類食物繊維の摂取と有意な相関が認められた。
不溶性食物繊維、野菜繊維、果物繊維の摂取とがん死亡率との有意な相関は認められなかった。
用量反応解析では、食物繊維摂取と全死亡との有意な非線型関係、その他では線形関係が示された。
様々な食物繊維の種類および食物繊維源の摂取を含め、食物繊維の摂取量の多さは死亡リスクの低下と関連した。
この知見は、食物繊維摂取と死亡率に関するより包括的なエビデンスを提供している。
・食物繊維摂取量は全死因死亡率、CVD死亡率、がん死亡率と逆相関した。逆相関は穀類食物繊維摂取でも認められた。食物繊維のすべてのカテゴリーがCVD死亡率と逆相関していた。
がん死亡率の逆相関は、穀類繊維と食物繊維でのみ検出された。
その他の食物繊維摂取と全死因死亡率についても、果物・野菜繊維摂取を除いて有意な相関が認められた。
・以前のメタ解析と比較して、この研究では近年発表された14の関連する研究調査が追加され、2,614,24人以上の参加者が含まれた。この研究では食物繊維と全死因死亡率の間に非線形関係があることを発見し、食物繊維の保護効果は1日の摂取量が15gを超えると比較的一定であることがわかった。
・5論文を含むメタ解析では、食物繊維の1日摂取量が25~29gの場合に全死亡リスク減少が最も大きく、用量反応データでは30g/日を超える量ではさらなる有益性をもたらすことが示唆されると結論。
・異なる食物源由来の食物繊維は異なる種類の化合物が特徴的に混在しており、全死因死亡率およびCVD死亡率に対する効果が異なる可能性がある。今回の系統的レビューおよびメタアナリシスでは、野菜および果物の食物繊維摂取とCVD死亡率との逆相関および穀物の食物繊維摂取と全死因死亡率、CVD死亡率およびがん死亡率との有意な逆相関が認められたが、野菜食物繊維とがん死亡率および全死因死亡率との関連は認められなかった。
他のメタアナリシスでも穀物繊維の摂取が全死因死亡率、CVD死亡率、がん死亡率と保護的に関連していることが明らかになっており、その対象は一般参加者と疾患患者だった。
穀類食物繊維は総死亡率の低下と有意に関連したが、果物食物繊維や野菜食物繊維は関連しなかった。
・推奨される食物繊維摂取量は成人女性で25g、成人男性で38gで、様々な植物性食品から十分な量の食物繊維を摂取すべきである。植物性食品による予防効果は食物繊維だけでなく、ビタミン、ミネラル、ファイトケミカルなど、他の化合物と関連している可能性がある。
・水溶性食物繊維はオート麦のふすま、大麦、豆類、レンズ豆、エンドウ豆、一部の果物や野菜に含まれ、不溶性食物繊維は小麦ふすま、全粒穀物、ナッツ類、種子類などの食品に豊富に含まれる。
・不溶性食物繊維または水溶性食物繊維の摂取量とがん死亡率との間に有意な関連は認められなかったが、これは対象とした研究数が限られていたためと考えられる。不溶性食物繊維は便を膨らませる特徴があり、がん死亡リスクを低下させる可能性がある。
・コレステロール、血圧、インスリン感受性、血糖値に対する食物繊維の保護効果、および抗炎症作用が、死亡率抑制を部分的に説明する可能性がある。
さらに、腸内細菌叢組成と機能の変化は食物繊維の潜在的な有益性の重要な理由である。
水溶性食物繊維の減少が、代謝、免疫、行動、神経生物学的転帰の制御に重要な微生物代謝産物の合成に影響を及ぼす可能性も示唆されている。
まとめ
食物繊維の摂取量が多いほど、全死因死亡、CVD、およびがん死亡リスクが低いことが明らかになった。
果物、野菜、穀物の食物繊維摂取は全死因死亡リスク低下と関連していたが、野菜や果物の食物繊維とがん死亡率との関連は認められず、食物繊維摂取と全死因死亡率との間には有意な非線形関係が、その他の食物繊維については線形関係が示された。