ワインに含まれるレスベラトロールに関して調べていたら、ワインの摂取と心血管系疾患(CVD)に関する興味深いデータが出てきた。
以前から軽度から中等度のアルコール使用は虚血性心疾患の有病率を低下させ、心筋梗塞につながる冠動脈イベント患者の予後を改善する(アルコール摂取と心血管イベントはUカーブまたはJカーブを示す)ことがわかっているが、どの酒類がCVDに害を与えないかについては論争が続いている。
アルコール飲料摂取量で層別化すると、ワインと非致死的冠状動脈性心疾患(CHD)との間にポジティブ効果が観察され、一方でビールを飲むと非致死的脳卒中リスクが高くなることが分かっている。
ワインに焦点を当てた過去の研究では、ワインに含まれるレスベラトロールやフェノール酸を含むポリフェノールのCHDに対するポジティブ効果が観察されされ、癌などの疾患における抗変異原性、抗炎症作用、抗酸化作用、LDL酸化抑制、内皮弛緩促進、血小板凝集抑制、抗動脈硬化機能など(すなわち心血管系の健康に多くの恩恵をもたらす)多くの健康上の利点が報告されている。
一方で、過度のアルコール摂取は、CHD死亡率、食道がんや口腔がんなどの癌、脳血管系疾患のリスクを高めるという矛盾する説もある。
リンクのデータはワイン消費と心血管死亡率、CVD、CHDとの関連を分析したもの。
25件の研究のうちメタアナリシスには22件の研究が含まれた。
結果
ワインの摂取が心血管死亡率、CVD、CHDと逆相関することが明らかになった。
年齢、サンプルに占める女性の割合、追跡調査期間はこの関連に影響を与えなかった。
年齢、薬物療法、疾病によりアルコールに弱い人には、ワイン摂取量の増加は有害である可能性があるため慎重に解釈する必要がある。
・ワイン消費量とCHD、CVD、心血管死亡リスクとの間に逆相関があった。
参加者の平均年齢、女性の割合、追跡期間、現在喫煙しているかどうかはこの関連に影響を与えなかった。
・ワインが心血管系死亡率に及ぼすプラスの効果は1979年に初めて報告され、適度なワイン摂取が様々な病態に対して保護効果を発揮することが示された。この効果はワイン成分によるものと考えられるが、ワイン成分の中にはエタノールがないと効果がなくなるものがあることが報告されている。
・ビールは飲酒量、飲酒分布、飲酒中に摂取する食品によって影響が異なる、適度な摂酒はCVDおよび全死因による死亡リスクを最小化すると考えられている。
・蒸留酒の消費はより孤立していることが多く、週のうち数日、特に週末に限られるが、1回の機会に過剰に消費される傾向がある。このような過剰で散発的消費にCVDに対するプラスの効果は無く、虚血性心疾患などの特定の疾患の発症リスクを高める。
・軽度から中等度の飲酒は全死因死亡や糖尿病や腎炎による死亡のリスクを低減することが示されているが、大量飲酒者は全死因死亡や事故のリスクが高く、また、がん発症や死亡リスクが著しく高くなることに留意する必要がある。
・現在得られているエビデンスによると、ワインは他のアルコール飲料よりもCVDに対してより強い有益な効果があるようだ。
・ブドウの皮の成分が没食子酸や高分子アントシアニン、ケルセチン、ミリセチン、カテキン、エピカテキン(フラボノール)などの様々な種類のポリフェノールで構成されていることが、ワインに抗酸化性を与えている。フェノール化合物がLDL酸化、血栓症リスク、血漿および過酸化脂質を低減することや、ワインのアルコール成分が血栓症リスクおよびフィブリノーゲン値を低減し、コラーゲンおよび血小板凝集を誘導することなどがメカニズムとして提唱されている。